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また、あいつらが“仕掛けて”きた! 気持ちよく振り回されたい『山田孝之のカンヌ映画祭』

 後日、横浜元町のビルにすでに合同会社「カンヌ」の事務所を設立し待ち構える山田。山下監督は今回も振り回されつつ食らいついてゆく。

『赤羽』から続く、このシリーズの面白さの一因に、山下監督の「芝居」のうまさがあると思う。実に自然に、山田に驚かされ、山田を問い詰め、山田に振り回される。今回もその名コンビは健在だ。

 壁には漫☆画太郎による馬鹿でかい山田の肖像画がかけられ、まるで悪夢のような部屋。

 漫☆画太郎の単行本の他に、『軍鶏』や『クリームソーダシティ』1、2巻が積まれている。『赤羽』では山田の部屋のDVDに『ゆきゆきて、神軍』や『A』などのドキュメンタリーに混ざってフェイクドキュメンタリーの『容疑者、ホアキン・フェニックス』があり、これらがテレビ版『赤羽』の「手法」や「元ネタ」を匂わす、かすかな布石となっていたのだが、今回はいかに?

 さて、今回山田がカンヌを目指すために作りたい映画の題材は『エド・ケンパー』。

 エドモンド・エミール・ケンパー三世。身長206センチ。15歳で祖父母を銃殺し、ヒッチハイクした女性ら6人を殺害、その死体を犯して、のちに実の母親をハンマーで殴り殺した、いわゆる猟奇殺人犯だ。

 前回の『赤羽』で山田が悩んだきっかけが、(架空の?)映画『己斬り』での自害のシーン。そして今回が、親殺しの殺人犯のそこにいたる心理を描きたいらしい。純粋な山田ファンが心配になるほどの症状だ。

「日本の人たち、逆輸入好きじゃないですか?」と、おそらく山田の中にたまったものの一部がこぼれ出す瞬間も、この「ドラマ」の一つの見所だと思う。

 山田はプロデューサーとしてカンヌの最高賞「パルムドール」を狙いたいらしく、出演はしないと明言する。

 すでに主演候補には個人的に話をして、相手事務所にもほぼ許可も取っているらしい。

「誰かは楽しみにしてて下さい」と煙に巻く山田。

『赤羽』でも、ふと思い立って詩を書き、ふらっと作曲者を紹介すると連れて行かれた先にいたのが、イエローモンキーの吉井和哉だった。

 今回も油断できない。どんな大物俳優なのか。

 日比谷公園のオープンテラスへ。主演俳優との待ち合わせ場所だ。

 テラス席でカンヌ談義をする山田と山下。

 ひとしきり話した後で、山田が席を立ち、待ち合わせ相手を連れて公園の遠くの方から歩いてくる。禿げた中年男性と歩いている。誰だろうか。

 その男性の横にランドセルを背負った小さな児童が。

 どこか芦田愛菜に似てる。

 近づいてくる。

 芦田愛菜によく似ている。

 たしか芦田愛菜も小学生だったはずだ。

 異様に芦田愛菜に似てる児童が、席に着く。

 おもわず、山下が、「芦田愛菜ちゃん?」と尋ねる。

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