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【おたぽる】

【劇場アニメレビュー】“Project Itoh”最終作がようやく公開へ! ドライ&クールなアクションとキャストの熱演でシリーズの最高傑作に!?『虐殺器官』

 正直、文字で読み進めていくと「虐殺器官」「虐殺の文法」などなどと、難解な言葉が多々登場しては惑わされ(その惑いもまた原作の魅力ではあるのだが)、エンタテインメント性の高さはともかく、これが映画になるのかな? などと余計な不安を感じないでもなかったのだが、いざ完成した作品を見ると、意外なまでにシンプルな印象をもたらしているのに驚いた。

 要は特殊部隊の主人公による暗殺ミッションのお話で、実は『地獄の黙示録』(79)あたりの名作群を彷彿させるような普遍的なストーリーであったことを、本作は明快に提示してくれているのだ。

 作画も極めてシンプルで淡白な印象だが、それが徹底した情報管理システムに支配されているドラマの背景や世界観と巧みにマッチしており、非常に効果的でもある。

 観念的な表現がキモでもある作品ゆえに、説明台詞もかなりのものではあるが、意外にそれも気にならず、むしろ理屈ではなくスッと感性的にこちらの脳裏に響いてくる。

 これには各キャラクターが魅力的に構築されていることが大きな理由として挙げられるだろう。クラヴィス役の中村悠一とジョン役の櫻井孝宏、双方のクールで美しい声質がもたらすヴォイス・バトルとでもいった幻惑的な緊張感が、作品の資質とマッチしている。

 また、今回のヒロイン、ルツィアの峰不二子的なものとは微妙に異なるアダルトで、憂いある存在感と、それに即した小林沙苗の声の印象は、正直このところのキャピキャピ・アニメ声に慣らされていた側からすると、実に新鮮に映え響くものがあった。

 惨酷味も合わさった戦闘シーンのドライ&クールさも特筆もので、このテイストならばハリウッドで実写映画化も十分可能ではないかと思わずにはいられなかった。それほどまでに現代社会から剥離していない、地に足の着いたダーク・サスペンス・ファンタジーたりえているのである。

 テロの脅威に対抗すべく管理システムを徹底化させるアメリカなどの先進国と、紛争の絶えない後進国との対比からもたらされる文明批判のメッセージもまたシンプルに見る者の胸に届けられる。

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