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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.412

矢口史靖監督流“楽しい”ディザスタームービー!『サバイバルファミリー』が描く電気のない世界

矢口史靖監督流楽しいディザスタームービー!『サバイバルファミリー』が描く電気のない世界の画像2お父さん(小日向文世)をはじめとする鈴木家の人々は空腹のあまり、野ブタを捕まえようとするが……。

『ウォーターボーイズ』では妻夫木聡、玉木宏たちがシンクロナイズドスイミングの特訓に明け暮れ、『スウィングガールズ』(04)では上野樹里、貫地谷しほり、本仮屋ユイカたちがジャズ演奏に励み、そんなアナログな世界で若者たちが成長していく過程をドキュメンタリータッチで描いてきた矢口監督。今回もCGに頼らない、ドキュメンタリー的手法が大いに活かされている。自転車を漕ぎ続け、汗まみれになっていく鈴木家の人々。空腹のあまり野ブタを捕獲しようとするが、お父さん役の小日向文世は慣れないアクションシーンにあばらを強打。橋のない川を渡るシーンでは、身を切るような冷たい川の中へと全身浸かり、ガチで顔の表情が歪んでいく。2カ月半に及ぶ地方ロケは、かなりしんどいものだったらしい。だが、主演俳優たちが悲惨な目に遭えば遭うほど、矢口作品は俄然面白みを増していく。

 大震災がきっかけでGOサインが出たディザスタームービーながら、矢口監督が撮ると明るくユーモラスなものになっていく。電気が使えなくなり、首都として機能しなくなった東京だが、パソコンもテレビも動かないことから暇を持て余した鈴木家の人々がマンションのベランダに出ると、夜空には今まで見たことのない大きな天の川が広がっている。息子や娘は初めて見る天の川の美しさに思わず感激する。車が走らなくなった高速道路を自転車で疾走するのは、なかなか気持ちがいい。サバイバルツアー中に出逢うアウトドア志向の夫婦(時任三郎、藤原紀香)は電気のない生活を喜び、とても生き生きとしている。スマホやパソコンが使えなくなったことで、逆に鈴木家の人々は自分たちの肉体を通していろんなことに気づくようになる。バッテリー補充液(精製水)は飲料水代わりになる、ネコ缶は生臭さを我慢すれば食べることができる、食料よりも体温保持や水の確保のほうが重要……そんなサバイバルライフに関するハウツーも散りばめられ、さいとう・たかをの人気コミック『サバイバル』を読んで育った世代には懐かしく感じられる。

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