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『山田孝之のカンヌ映画祭』第6話 “カンヌの申し子”河瀬直美監督が山田孝之をフルボッコに……

 さらに、同じデザインのマグカップと熊のぬいぐるみまで渡すも、値札を剥がし忘れており、「人にあげるときは値段を外すように」と、河瀬に言われる始末。火に油、河瀬にカンヌグッズ。この時点で早くも完全に河瀬がペースを掌握する。

 ここで初めて、河瀬にパルムドールを狙って作品を作ろうとしてるのでアドバイスをいただきたいという訪問の趣旨が、山下の口から伝えられる。

 山田がプロデューサーを務めることへの思いや、出資先が飲食業の個人(ガールズバー経営)であること、に対し、

「その人(社長)が『カンヌ』狙いたいって言ってるってこと?」

「そもそもなんで俳優やのに、映画のプロデュースしようと思ってんの?」

「それやったらカンヌとか目指さなくても、どうでもいいんじゃない?」

 逐一、見事に核心を突いてくる。

 初回から見ている我々ですら、わかったようでわかっていない、思わず「その通り!」と叫んでしまいそうになる置き去りにしてきた疑問を、的確にぶつけてくる河瀬。

 さらに、河瀬は攻撃の手を緩めない。

 自身がでデビュー作『萌の朱雀』でカンヌで新人賞をとった際には「カンヌ」なぞ知らなかったと言い、

「自分が作りたいものを作った先に、それが付いてきた」

「どうやったら賞獲れるかなんかは、正直何にも言われへん」

 しかし狂ってるこの3人、いや主に大人2人はさらに、あのパイロットフィルムをボスキャラに見せようとする。

 ちょっと似ちゃったんですけど……と『穢の森』というタイトルを伝える山田に、半笑いながらも、「『森』とか付ければ賞獲れると思ってるんちゃうよな?」と問う河瀬。目は笑っていない。当たり前だが、やはり気付かれた。

「いやいや、そんな……ことではないです……」と目を合わせずに答える山田。言い返せないとは、まさにこのこと。ここまでキレが悪い山田を見るのは、シリーズ初だ。「確信犯」でないフリで逃げられる相手ではないと感じているのだろう。

 河瀬がパソコンでパイロットフィルムを観ている最中に、顔の角度を変えず、視線のみで、こっそり河瀬の顔色を伺う芦田の表情は「怯え」そのもの。見られているPFには、ほぼ自分のみが映っているのだ。断頭台に登った心境だろう。

 つい先日、名門有名中学に合格したとの報道のあった芦田は、報道の通りなら「昨年の夏以降、仕事をセーブして1日12時間勉強をしていた」らしい。まさにこの番組は夏に撮られたのだから、実を言えば一刻も早く帰って勉強したかったことだろう。合格したからよかったようなものの、この時期(昨年の夏)の日々を、どんな気持ちでこいつら(失礼)に同行していたのか。

 観終わってすぐ感想なりを言わず、「山崎(裕)さん、撮ってもらったの?」とか、芦田に「お母さん殺すとか言うてるけど大丈夫?」等、「泳がす」ように質問をしてくる河瀬の威圧感。

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