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【おたぽる】

2017年は特撮にとってどんな年になる? ゾルダ復活&『スーパー大戦』に見るサブライダーの復権に注目!!

■パラレルワールドと正史の差

 まずはじめに、スーパー戦隊と仮面ライダーの両シリーズにおける作品ごとのつながりに対するスタンスを見ていきましょう。
 スーパー戦隊では『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11~12年)で「スーパー戦隊は連綿と地球を守ってきた存在」として、すべてのシリーズがひとつの次元でつながっていることを提示しています。仮面ライダー(平成シリーズ)では、『仮面ライダーディケイド』(09年)において「仮面ライダーが存在する9つの並行世界」を提示し、各世界を違う次元の出来事にしています。あくまで広義での分類とご理解いただければ。

2017年は特撮にとってどんな年になる? ゾルダ復活&『スーパー大戦』に見るサブライダーの復権に注目!!の画像3 『仮面ライダー龍騎 Blu-rayBOX』ジャケット

 ゴーカイジャー、ディケイド共に「他のヒーローに多段変身できる」ことは共通していますが、その扱い方には明確な差別化が図られており、この違いによりスーパー戦隊シリーズは他のヒーローがたくさん集まる系の作品では「本人」もしくは「ゴーカイジャーの大いなる力」なくしては登場できない制約が生まれています。それに対し、仮面ライダー自体の力、言い換えるとデータを用いて他のライダーを立体化させたディケイドの方法論は、フレキシブルに多くのライダー含め、他のヒーローを登場させることへの理由と説得力を獲得し、この制約を突破しているのです。

 ヒーローのデータを用いる点はゲームをモチーフにしている『仮面ライダーエグゼイド』でも受け継がれ、『超スーパーヒーロー大戦』において過去のヒーローが登場する理由を「ゲームの登場キャラクターにする」という部分に見られます。その上、ディケイドによって並行世界に対する理解力、読解力が私たちの中にもあるので、「あー、龍騎は周年だからファンサービスね」ということだけではなく、あくまで物語と世界観に準拠した形での再登場は、劇中で北岡先生が亡くなっていてもゾルダの登場に納得できるし、もしかすると北岡先生だけではなく並行世界にいるであろう由良吾郎も登場するんじゃないか、という期待も膨らむという訳です。

 もう少しゾルダへの期待という部分で掘り下げると、『仮面ライダー電王』との絡みも注目したいところ。電王でのサブライダー的立ち位置には仮面ライダーゼロノスがいます。ゼロノスとゾルダの共通点(緑色、モチーフなど)が多いので、何かしらの絡みがあるのではと予想。このようなメタ的なネタもサブライダーだからできるものではないでしょうか。

■世界観を広げる、もうひとつのストーリー

2017年は特撮にとってどんな年になる? ゾルダ復活&『スーパー大戦』に見るサブライダーの復権に注目!!の画像4 「東映ファンクラブ」作品紹介ページより

『仮面ライダー龍騎』勢で言えば、もうひとり忘れてはならないのが、仮面ライダー王蛇(おうじゃ)。こちらは劇場版ではなく、東映特撮ファンクラブ初のオリジナル映像作品『仮面ライダーブレイブ~Surviveせよ!復活のビーストライダー・スクワッド~』(17年)で登場しています。野獣タイプのライダーが集まった「ビーストライダー・スクワッド」というのも、新団体を旗揚げしたヒールレスラー集団にも近いものを感じ胸が熱くなります。時を超えて主役級の登場を果たした仮面ライダー王蛇はじめとする「ビーストライダー・スクワッド」は、もはや「サブ」という言葉がふさわしくないほどの存在感を持ち、もうひとりの仮面ライダーであることを声高に宣言しています。

 平成仮面ライダーシリーズでは複数のライダーを便宜上「1号と2号」や「メインとサブ」と呼称していますが、そもそも両者の関係性は「仮面ライダーと仮面ライダー」であって、おしなべて全員が主役です。

 しかし、本編ではどうしても中央の仮面ライダーがフォーカスされるので、もうひとり(もしくは二人目、三人目)の仮面ライダーは一歩引いた立ち位置になります。テレビでは必然のことであり、そこで描ききれない要素を特にVシネマで補完するのが定石とされていましたが、ここ数年でもうひとつのアウトプット「ネット配信」が生まれ、テレビ本編では描けない物語(高年齢層や一歩引いた立ち位置だったもうひとりの仮面ライダーについてなど)を紡ぐことが可能になったのです。Vシネマはいわゆる読み切り的な物語でしたが、テレビとほぼ同じ連続モノとして物語を追うことができます。直近の作品で言えば、テレビでは放送できない(後に修正した編集版が放送されるが)一歩踏み込んだ表現でより高い年齢層を狙った『仮面ライダーアマゾンズ』(16年)が当てはまります。

『仮面ライダーアマゾンズと仮面ライダーブレイブ~Surviveせよ!復活のビーストライダー・スクワッド~』は、ネット配信という形でこれまで読み切りの番外編にすぎなかったもうひとりの(もしくはそれに準ずる)仮面ライダーの物語などを、細部まで、深部まで描く可能性を示しています。ネット配信の登場によって豊富になったプラットフォームは、作品の世界観をより重層的な構造にするのです。これは仮面ライダーに限らず当てはまることですが、登場人物の多くが複雑な関係性になる仮面ライダーにとっては殊更相性が良く、今後のスタンダードになり得るものだと思います。

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