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小説『凹凸』出版インタビュー

「魂を削る思いで書きました」唯一無二の小説家・紗倉まなが向き合った、自身の“闇”と“病み”の正体

「魂を削る思いで書きました」唯一無二の小説家・紗倉まなが向き合った、自身の闇と病みの正体の画像3

■家族の死と、堕胎された命の“重み”とは

──その辰夫が亡くなったあとの妻・孝子(栞の祖母)もそうですし、栞の父・正幸もそうですが、登場人物たちが家族が亡くなったことをきっかけに大きく変化するというか、狂ってしまいます。この物語の中では、人が変化する瞬間が、常に家族が死ぬことによって訪れますね。

紗倉 今、私それを聞いて、発見というか、家族が死ぬことで変わるって、確かにそうだったって。自分で書いていたんですけど、無意識だったかもしれないです。赤ちゃんもそうですよね。

──栞の堕胎を恋人・智嗣が見つけることで、関係が進展していきます。逆にいうと、家族が死なないと人は変わっていけないという意識が、紗倉さんの中にあるんでしょうか? 「家族に死んでほしい」というほどじゃないですが、家族が死んだら自分が大きく変化するのかな、みたいな思いが。

紗倉 それはすごいあります。すっごいあります。私は母子家庭で一人っ子で、母親のことは大好きだし愛してるし、いなかったらすっごい苦しいけど、その方が気が楽だなと思うことも多くて。今後、介護していかなきゃいけないとか、老いておかしくなっていく瞬間にも立ち会わなきゃいけないじゃないですか。それはもう自分の宿命というか、背負わされてる感じは間違いなくあって。家族って大事だけど大事じゃないみたいな、切り離し方がすごく残酷だなって、ずっと思ってて。

──一方で栞は、堕胎を繰り返して、人の親になることを拒み続けています。この堕胎されていく命というのを、例えばお母さんの命と比べて、どういう風に見ているのか教えてください。

紗倉 私は出産って経験したことがないですけど、世の中ってクルマの運転をする人が当たり前にたくさんいるじゃないですか。私、出産と似ているなと思っていて、私たちが生まれたときから世の中の人はみんな運転しているけれど、自分が運転しようとしたときに免許を取るのはすごく大変だし、でも当然自分もできるでしょ、みたいな感じで試験を受けていたんです。出産も、もちろん価値の大きさは違いますけど、みんなが産んでいるし、自分も産まれてきているんだから、自分も産めるでしょ、母親になれるでしょって思われている気がするんですね。でも、私にとってはすごく違和感があって、子どもをおろすことより産むことの方が信じられない行為なんです。なんでできるんだろう、なんで為し得てしまうんだろうって、ずっと思っていて。

──それは、「なんでこんな難しいことができるの?」というのと、「なんでそんな無責任なことができるの?」というのも。

紗倉 うんうんうん、ありますね確かに。両方、どっちもありますよね。出産も堕胎も、どっちも「何、無責任なことしてるの?」だし、「なんでそんな難しいことができるの?」だし。「おろすのなんて絶対無理」って言う人もいれば、「おろさざるを得ないからおろすね」って言う人もいる。向き不向きっていうのは絶対あるし、そこについて「命は尊いんだ」みたいなことを言うのは、そういうことじゃないんじゃないかなと思います。自分の身体の中から肉の塊を出すことが、どれくらい怖くて大変なことなのかっていうのは、きっと他人に言われる筋合いのないことなんじゃないかなって思います。

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