『クズの本懐』最終話 おもしろクズたちが、ただの「つまんねえ人」になっちゃった……その尊さに打たれました
第1話、「遂げてみせるよ、クズの本懐──」というセリフで始まった物語のラストで、花火に「本物を探してる、そのために生きていく」と言わせています。何かのために生きていくと自覚している人は、もうクズではありえません。
最終回で印象的なエピソードがありました。
名前も覚えていないクラスの男子にいきなり告白されそうになった花火が、「ご、ごめんなさい。でも、ありがとうございます」と、丁寧に断る場面です。
第1話でも花火は、知らない男子に告白されています。そして、「興味のない人から向けられる好意ほど、気持ちの悪いものってないでしょ」と言っています。
茜先生が鐘井先生にちょっかいを出したのは「花火の悔しがる顔が見たいから」というだけの理由でした。しかし最終回で茜先生は、結婚祝いの場でブーケから花を一輪抜いて、花火に「ブーケトス」だと言ってぐいぐい押しつけます。ほかの女を見下すことでしか自分を保てなかった大人の女が、ほかの女の幸せを心から願う人になっていました。
花火の寂しさにつけこみ、便利な性のはけ口として利用してきた麦は、最終回になっても自分にも花火にも、相手への執着が残っていることを感じています。望めば続けられるセフレ関係を、優しく断ち切るために「ごめん」と謝ってみせました。そして、もうキスもハグもしようとせず、花火といろいろな話をしました。
こうした対比が丁寧に描かれることで感じたのは、物語の「節度」というものです。『クズの本懐』は、キャラクターたちに対して、とても「節度」を持って作られた作品だったと思うんです。クズたちを誰ひとりとして、雑に扱わなかった。これだけ大量に未成年のセックスを描いておいて「節度」を感じさせるというのは、なかなかこれは凄まじいクリエイティビティだと思うし、満足度の高い全12話だったと思います。
本音をいえばね、天使のような鐘井先生が「実は20年来の制服泥棒でした」みたいなオチを期待してなかったといえば、それはまあウソになりますけど。
(文=新越谷ノリヲ)
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事