プロ野球開幕! プロ野球といえば“球場メシ”!! メシ情報とウンチク満載の球場食漫画『球場三食』 作者・渡辺保裕 インタビュー
■球場の出会いがまた面白い
── 球場での取材で、ほかに面白い出会いなどはありましたか?
渡辺 漫画に描いたものだと、アマチュアのカメラマンと、ビールを回してくれないおじさんについては実話です。
── ZOZOマリンスタジアムの回のエピソードですね。
渡辺 真ん中あたりの座席に座っていたら、隣のカメラマンは身を乗り出しているうえに望遠レンズをニューっと出しているので視界に入ってくるんですよ。そして、ビール買ったら、今度は一番端っこのおじさんが受け取ってくれない。通路から売り子の女の子が「すいません! ビールを回していただけけますか?」と言うと、「え、なんで私が?」という反応なんです。カメラマンのレンズがでかくて動けないし、まいりましたね。
── 逆に仲良くなるケースは?
渡辺 札幌ドームで大谷翔平がホームランを打ったときは、隣の人と「大谷はやっぱいいなぁ」とか語り合ったりしました。それと、福岡ドームに取材にいったら、手首につける腕時計みたいなアクセサリーを配っていて、それが試合中にときどき光るんですよ。隣にいた2人組の女性に「これってどうやって光らせてるんですか?」って聞いたら、「勝手に光るんですよ。ホームラン打ったりしたら光るんです」と教えてくれました。盛り上がるところで球団側が情報を送って光るらしく、「そうなの!?」と驚きました。
── さすがIT企業が親会社ですね。
渡辺 そういう、小さな出会いややりとりは行った先々であるので、楽しいですね。
■最終ページのチャートは辛辣な評価も
── 先ほどのビールの注ぎ方もそうですが、紹介するものすべてをベタ褒めというわけではないのもひとつの特徴かと。ときには、日本ハムの本拠地移転問題について、日下と一緒に観戦した旧友が熱い語り口で疑問を呈するシーンもあります。
渡辺 悪いことばかりは描けないですけど、かといって褒めちぎっても仕方がない。そこら辺のさじ加減が難しいですね。
── 漫画本編ではさしさわりのない評価をしていながら、最後のページに毎回登場する評価チャートでは「あれ? 厳しい採点」ということがあります。それが渡辺先生ご自身の本音かなと感じます。
渡辺 ある球場について、「殺風景」ということをネームで厳し目に描いたことがあったんですけど、編集から指摘されて柔らかい表現に変えたんです。そしたら、掲載後にその球場の職員から編集部に連絡が来たんですよ。「取り上げていただいてありがとうございました。至らぬ点もあると思いますが……」みたいな感じで。「ああ、良かった~」と(笑)。
他にも、「来てくださると知っていたらご案内したものの、ぜひ次回お越しの際は……」という連絡が別の球場から来たことがありました。でも、このような作品の取材で、事前に連絡して丁寧に案内をされちゃ駄目でしょう? という思いはありますね。
── フラットな目線で空気を実感し、称えるなかにも、さりげなくチクっといく。
渡辺 取材のときには、すべて自分でお金を払っていますから。球場メシって、ひとつネックなのはどこも値段が高い。平均で一品1,000円くらいしてしまう。それを、編集と分担してもひとりにつき5品くらいは食べますし、おまけにビールも飲みますから結構な金額になります。だからこそ、すべて手放しで褒めてばかりではなく、球場に訪れた人が感じるだろうことについては、柔らかい表現にするにしても入れていきたいと思っています。
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