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中国“ヤバい”漫画家・孫向文の「日本アニメ文化論」

ラブコメの元祖『きまぐれオレンジ☆ロード』で憧れた、ロングヘアーとセーラー服と

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

 昨年末、「高須クリニック」の高須克弥先生が主催する飲み会に参加しました。高須先生とはその日が初対面だったのですが、同席した漫画家の西原理恵子氏が、「孫さんが描く女の子はかわいいですよ」と紹介してくださいました。

■僕が女の子を描くきっかけになった作品

 僕の漫画には、ファンから「女の子がかわいい」という意見が多く寄せられます。その通り、少女キャラには特に力を入れているのですが、実は、昔は女性がまったく描けませんでした。少年時代、僕は『ドラゴンボール』や『聖闘士星矢』といったバトル系少年漫画に熱中しており、必然的に男性キャラばかり模写していました。しかし、1994年ごろ、香港のテレビを経由して『きまぐれオレンジ☆ロード』というアニメを見てから、女性を描くようになったのです。『きまぐれ~』は、1984~87年「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載された、超能力を持った少年が2人の美少女と三角関係に陥るというラブコメ漫画で、当時、一世を風靡しました。それまでバトル系漫画、もしくは『トランスフォーマー』のようなロボットアニメ一辺倒だった僕は、『きまぐれ~』がきっかけで『猫でごめん!』『めぞん一刻』『ハイスクール!奇面組』といった、ほかのラブコメ作品にハマりだしたのです。

 中国の学校には、基本「18歳以下は恋愛禁止」という校則が存在します。学生服が体育着のようなジャージであるのは、女子生徒のボディラインを隠すという意味もあります。日本人の知人は中高生時代、第二次性徴により女子生徒の体つきが変化する様子が楽しみだったと語っていましたが、中国の中高生は、そのような体験を味わうことができません。中国政府によるエロサイト遮断と同じく「性体験」を完全に封印するという行為は、共産主義教育の弊害です。

 僕が『きまぐれ~』のヒロイン・鮎川まどかに一目惚れした理由は、髪形にあります。まどかの髪形はロングのストレートヘアー。現在は指定が緩和されていますが、僕が通学していたころ、中国の学校では、「勉学に専念できない」という理由で、前髪を垂らすことが禁止されていました。そのため、女子卓球選手のような、額を露出したポニーテールが一般的でした。これではせっかくの美貌が台無しです。そのため、まどかのストレートヘアーが非常に魅力的に映りました。さらに、野暮ったいジャージである中国の制服に比べ、『きまぐれ~』に出てくる女子生徒の制服は、かわいらしいセーラー服です。日本のセーラー服が海軍服を改良したものであることは後で知りましたが、「外国のものを『魔改造』して、さらに良いものに仕上げる」という日本文化を体現していると思います。
 
 中高生の恋愛が禁止されている中国では、もちろん中高生が主人公の恋愛作品は存在しません。しかも『きまぐれ~』の恋愛描写は過剰なエロがない、いわゆる「ほのぼの系」で、そこも僕が好感を持った理由です。例えば『電影少女』は、『きまぐれ~』と同じく「ジャンプ」に連載された恋愛漫画ですが、強姦シーンなど過激な性描写が頻出するため、僕は若干敬遠しています。さらに『きまぐれ~』の主人公・春日恭介に対し、まどかは普段突き放すような態度を取っているのですが、もう一人のヒロイン・檜山ひかるは恋愛に積極的で、所構わず恭介に抱きつくほどです。また、恭介には2人のかわいい妹たちもおり、『きまぐれ~』は、昨今のアニメの「ツンデレ」「妹系」といったキャラ分類の元祖になった作品だと思います。

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