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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.421

伝説のプロデューサーと新鋭監督がガチゲンカ!! アウトロー映画『ろくでなし』に漂う不穏な熱気

伝説のプロデューサーと新鋭監督がガチゲンカ!! アウトロー映画『ろくでなし』に漂う不穏な熱気の画像2どうしようもなくダメ男を引き寄せてしまうオーラの持ち主・優子には、「シネマ☆インパクト」参加者の遠藤祐美が選ばれた。

 人気コミックの実写化が花盛りの日本映画界において、そんなブームなんて知ったこっちゃねぇと泥くさいオリジナルのアウトロー映画を撮り上げたのが奥田庸介監督だ。1986年生まれの奥田監督はこれが長編3本目となる。クラウドファンディングで資金を調達した前作『クズとブスとゲス』(16)は「この映画が撮れれば死んでもいい」という奥田監督の気迫がこもった規格外の逸品だった。『クズとブスのゲス』の酒場のシーンで、主演も兼ねていた奥田監督はスキンヘッド状態の頭で本物のビール瓶をカチ割るという狂気のアドリブ演技を見せた。そのシーンを撮り終えた後はもちろん病院行きとなっている。

 そんな奥田監督の変人ぶりを気に入ったのが山本政志プロデューサー。山本政志プロデューサーは実践型ワークショップ「シネマ☆インパクト」を主宰し、ワークショップ受講者たちをメインキャストにした大根仁監督の『恋の渦』(13)などのヒット作を生み出している。また、監督作『闇のカーニバル』(82)や『ロビンソンの庭』(87)といったインディーズ作品で海外にも名を馳せた伝説的な映画人である。新興宗教を題材にした『水の音を聞く』(14)でも監督としての健在ぶりを示した。強烈な個性を持つ2人がタッグを組んで企画がスタートしたのが『ろくでなし』だった。ところがボルテージの高い者同士の顔合わせは、あまりにも危険すぎた。脚本段階で両者は大ゲンカとなってしまう。2016年の夏、『クズとブスとゲス』の公開前に奥田監督を取材した際、奥田監督が携帯電話で激しい口論を始めたので驚いたが、その相手が山本政志プロデューサーだった。

 奥田監督と山本政志プロデューサーとの間に生じた軋轢は深刻で、クランクイン直前を控え、撮影中止にするかどうかという瀬戸際まで行っていた。映画が完成した今も2人は和解しておらず、そこで『公開大討論会!「おい、ろくでなし!今夜、決着つけようじゃないか」』(4月2日、渋谷ユーロライブ)が開かれた。両者が激昂してつかみ合いにならないよう、キックボクシングの元世界王者・小林さとし氏がステージ上で立ち会い、『ろくでなし』を上映するユーロスペースの支配人・北條誠人氏が司会進行を務めるというもの。このときの両者の殺伐としたやりとりを聞くと、奥田監督の書き上げた脚本の初稿に山本政志プロデューサーは納得できず、改稿したことがケンカの発端だった。自分の脚本に手を入れられたことが奥田監督は気に入らず、両者の間に溝が生じてしまった。山本政志プロデューサーにしてみれば、「街を舞台にし、情感は排したものにしようと打ち合わせていたのに、情感の部分が守られていなかった」ので修正した。また、奥田監督が撮影現場で初稿に戻そうとするのが許せなかったという。奥田監督いわく「現場で自由に撮れないのなら監督である意味がない」「プロデューサーという上からの立場で言われるので、打ち合わせになっていなかった」とのこと。山本政志プロデューサーがアウトローものとしてのリアリティーを高めるために、本職の方たちを現場に招いていたことも、奥田監督との距離を生む要因となったようだ。結局、山本政志プロデューサーはプロデューサーという肩書きではなく、アソシエイトプロデューサーとしてクレジットされている。

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