日刊サイゾー トップ > その他  > 宮司も期待! 神田明神の「明神カフェ」
【おたぽる】

信仰だけではない“楽しめる場”としての神社へ──宮司も期待を寄せる神田明神の新スポット「明神カフェ」

■地域の人々との連携をどう生み出していくか

 そんな新しい「きっかけ」で、参拝に訪れる人たちが立ち寄るスポットになるであろう、明神カフェ。でも、和田は、そうした参拝客を相手とする客商売だけを考えているのではない。

 カフェには、VIPルームも設置されている。これは、上客を相手にしようというわけではなく、氏子をはじめ広く地域の人たちにも使ってもらいたいという想いからできたものだ。

「ぜひ、地域の人々にも使っていただき、一緒に街を盛り上げていきたいと考えているのです」

 その和田の展望は、決して楽なものではないと思う。

 幾度か地域の氏子らから聞いたことがある和田に対する認識は「神田明神が使ってる業者さん」である。和田のオフィスは、これまでも神田明神の氏子地域にあるにもかかわらず、である。もともと、神田明神の氏子地域の人たちは、自分たちが先祖代々住む土地のことを、こう表現する。

「ここは、東京の田舎なんですよ」

 都会を離れて全国各地の「田舎」へと移住を決意する人は増えている。そうした人々に取材をする機会もあるが、中にはさまざまな軋轢から移住を断念する人もいる。そうしたエピソードは、だいたいが閉鎖的で後進的な地域を批判する論調で語られがちである。でも、それは間違っている。すでに連綿と長い生活史を育んできた地域に、新しいものがやってきたときに、待ってましたとばかりに、歓迎して賞讃する人がどれだけいるだろうか。

「最初の1年は、まず人間関係をつくるのを頑張ったほうがいいですね」

 と、ある地方都市の役所で聞いた。まさにその通りだろう。

 だから、明神カフェに求められているのは、単に参拝客を増やす要素となるとかではなく、それが地域にどのように馴染んで、一緒に神輿を担いだりもできる仲間として溶け込んでいくかである。それは、いくら神田明神が期待を寄せても近道できるものではない。和田だけでなく、店のスタッフたちもすべて、神社の信仰と地域があってこその店という意識を共有した上での、たゆまぬ努力が求められている。

 それは、茨の道ではないだろう。何しろ、店があるのは鳥居の真横である。そこで、日々神社にやってくる参拝客や地域の人々を見て、何も「気づき」を得ないなんてことは、想像しがたい。店で働く声優や、これからのコラボイベントなどに参加するクリエイターも、どこかで神田明神のネームバリューを利用しようと考えているやも知れない。けれども、日々、見ることになる神社に参拝することになる人々の姿は、そうした我欲を押し流していくはずだ。

 戦後70余年。西洋的な価値基準によって支配される中で、唯一オタク文化は世界を席巻し、抗している。それは、決してクールジャパンなどという下品な言葉で、一括りにして賛美していてよいものではない。

 そうした中で現れたオタク文化と神社とのコラボレーション。それは、新たな形で日本が誕生して以来、悠久の歴史の中で育んできた精神性に気づく機会を与えている。説教するでもなく支配するでもなく、包み込むように気づかせる。そこに神道のすごさを感じずにはいられない。

 グランドオープン以来、1週間あまり。既に店を訪れた人々の口から語られる明神カフェの評判は、極めて好評だ。まもなくゴールデンウィークである。「ご祝儀」の時期を終え、単なる一個の店舗としての評判を超えて、その先に向かうことができるのか。時折、訪問しながら見ていくことにしたいと思った。
(文=昼間たかし)

最終更新:2017/04/27 07:15
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