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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.424

恋も青春もすべて終わったときに値打ちがわかる。ウディ・アレン至高の境地『カフェ・ソサエティ』

恋も青春もすべて終わったときに値打ちがわかる。ウディ・アレン至高の境地『カフェ・ソサエティ』の画像2『ロスト・バケーション』(16)でサメと大格闘したブレイク・ライブラリーはバツイチのゴージャス美女に。

 子犬のように純朴なボビーからの真っすぐな求愛に、ヴォニーもまんざらではない。「誕生日にはシャレた店へ行こう」と誘うボビーに、「あなたの部屋は? 高級料理は無理だけど、ミートボール・スパゲティーなら作るわ」と約束。こんな台詞を言われたら、男は誰しも夢中になるでしょ! ところがヴォニーは年上の既婚者との道ならぬ恋に身を焦がしていた。ボビーは傷心を抱えて、夢の都ハリウッドを去ることになる。

 舞台はハリウッドから東海岸のニューヨークへ。禁酒法が廃止されたニューヨークでは新しくできたレストランや気の利いたバーに人気ミュージシャンやセレブたちが集まる“カフェ・ソサエティ”カルチャーの真っ盛り。裏社会を牛耳る兄ベン(コリー・ストール)が経営するナイトクラブでボビーは働き始め、これが大成功。気配り上手なボビーは有能なマネージャーだった。クラブを切り盛りするボビーは、お客のひとりだった金髪のゴージャス美女ヴェロニカ(ブレイク・ライブラリー)とラブラブに。ヴェロニカと結婚し、公私ともに順風満帆なボビー。だが、そんな自信満々なボビーの前に現われたのが、かつて彼が夢中になったもう一人のヴェロニカ、ヴォニーだった。不倫相手と結婚したヴォニーは以前よりも、ますます美しくなっていた。2人のヴェロニカの前で、ボビーの心は激しく揺さぶられる。

 ストーリー自体はチープなメロドラマである『カフェ・ソサエティ』。ウディ・アレンの脚本&監督でなければ、即シュレッダー送りとなっていた代物だろう。失恋からようやく立ち直った主人公が、自分を棄てた相手と再会してしまうというありふれた筋書きだ。ところが恋多き映画監督ウディ・アレンの手に掛かれば、2人のヴェロニカは正反対の魅力を持つ、甲乙つけがたい両極の女神として眩しい輝きを放ち始める。『ミッドナイト・イン・パリ』では1920年代と現代という2つの時代のそれぞれの美女の狭間で主人公は悩んだ。過去と現代を別の言葉に言い換えれば、それはロマンスと現実である。1930年代を舞台にした『カフェ・ソサエティ』では、青春期を過ごしたハリウッドと成功を手に入れた現代のニューヨークという2つの世界でボビーは悶え苦しむことになる。夢と現実、2つの果実の前でウディ・アレンのアパターたちはいつも悩み続ける。

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