歴史は繰り返される? 「サラ金は駄目。でも銀行のカードローンはOK」なんてありえない!
こんにちは! ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。
GWの余韻に浸っている人も多いかもしれませんが、今日はシビアなテーマ「カードローン」について一緒に考えてみてほしいと思います。
先に結論をいうと、「カードローンには手を出すな!」という話です。すでにカードローンに手を出してしまっている人は、根本的に気持ちを引き締めなければなりませんし、そうでない方も他人事とスルーせずに、身近な人達が不幸にならないように私と一緒に伝えてほしいと思います。カードローンはもはや社会問題ではないかと考えています。
◎自己破産が13年ぶりに増加!
昨年2016年の個人の自己破産の申請数が13年ぶりに増加したというニュースをご存知ですか? この増加理由の1つは「銀行のカードローン事業の急拡大」です。
少し歴史を遡ってみたいと思います。1993年、消費者金融業者、いわゆる「サラ金」の「無人契約機」が登場しました。ポップで楽しい雰囲気のCMがどんどん流されていたのを覚えている方もいると思います。そして、2000年過ぎからは、サラ金のCMで、ウルウルの瞳のチワワが登場するようになります。本来は、なかなか日の当たらない業種であり企業だろうと思うのですが、何度もキャッチーなCMを目にするうちに、身近な会社のように感じたり、テレビでCMを打てるくらいちゃんとした大きな会社なんだ、という漠然としたプラスイメージに変わっていった部分もあるのではないでしょうか。
そんな効果も手伝ってか、借りることのハードルが下がったのでしょう。個人でお金を借りる人が急増。返済のために、また他社から借りる「多重債務者」も続出し、借金が原因の自殺者が後を絶たず大きな問題になったのです。2003年の自己破産者は過去最多となりました。この年からテレビCMにも規制がかかり、借入額の上限が厳しくなるなどの法律の改正も行われました。
以降、12年連続で自己破産の申請数は減っていたのですが、ここにきて13年ぶりの増加となりました。歴史は繰り返すといいますが……。嫌な予感がしませんか? 残念な歴史を繰り返したい人はいないはずです。
◎自己破産が増えた理由は、ズバリ「銀行カードローン」の急拡大
前述したような悲しい歴史があるにもかかわらず、個人向けにお金を貸す仕組みは「銀行のカードローン」にその姿を変えて、2005年頃からジリジリと拡大していきました。かつての手づくり感のある「サラ金」のCMから、ギャラの高そうな人気タレントを起用し、銀行や、銀行のグループ会社であることを強調するような風潮が見られるようになりました。
「あ、これは銀行のカードローンだから大丈夫!」と言われたら、世間知らずなコなら「そういうものなんだ……」と丸め込まれちゃうかもしれません。
言うまでもなく銀行のカードローンも「サラ金」と変わらない借金です。それでも「銀行」という信用度の高い名前のせいで、かつての無人契約機よりもお金を借りることのハードルがずっと下がってしまったのではないでしょうか。これでは、自己破産が増えるのも不思議ではありませんよね。
こんなふうに、カードローンを警告する私に賛同してくる大人達は山ほどいるはずです。だったら、各種メディアなど、あらゆる場面で、影響力のある人がどんどん啓蒙して、無駄な借金をこの国から無くしていくべきだと思うのです。
でもメディアでは、広告の中で「ご利用は計画的に」の機械的な決まり文句がさらっと出てくる程度でしか警鐘を鳴らしません。なぜなら、CMを打ってくれた会社のお金で番組が作られていて、出演者のギャラが払われているからです。たとえ芸能界のご意見番みたいな大御所でも、スポンサーの商品であるカードローンに対する苦言なんて言えませんよね。そして、本人がCMに出演していたりしますから、批判するはずが(できるはずが)ありません。
かなりズバッとモノを言う私だって、媒体やイベントのスポンサー企業によってはNGワードが存在します。それでもなんとか抵抗しようとしますが、限界はあります。まずは家族や身近なところでしっかり伝えていかないといけないですね。
◎賛同か逆ギレか
この手のテーマには、「その通り!」「もっと言え!」と賛同の声が多く挙がるものの、一方で、逆ギレや不安の感情を持つ人もいるでしょう。そして「たまにはいいんじゃない?」なんていう中間の人が絶対にいません。おそらく逆ギレする人は、カードローンを抱えている、またはカードローン予備軍の人です。逆ギレも不安も、正しく理解している証拠なので、傷が深くならないように、一度根本的に生活を改善しなくてはならないでしょう。生きるために必要のない買い物をしたり、自己投資やらご褒美という名の元でお金を使っているようでは改善にはなりません。また、純粋な生活苦でお金を借りているならば、転職、それまでの期間の生活保護、家族への相談、自己破産なども考えなくてはいけない可能性があります。これらの人が、ある日突然お金持ちになる可能性は極めて低いです。
いまだ無傷の人は、せっかくこうした記事に触れたわけですから、カードローンの世界に足を踏み入れ無いように今の状況を死守してください。そして、1人でも多くの人にこの事実を伝えてほしいと思います。
自己破産の増加などの理由を受け、今年から、カードローンの上限額が厳しくなることが決まりました。とても嬉しい規制ですが、こうした動きは、問題が大きくなった後でやってくるもの。自身や大切な人が巻き込まれてからでは遅いのです。
そして、カードローンや扱っている会社、そして社会が悪いような雰囲気で書いてしまった部分もありますが、最後に不安に襲われたり、苦しんだり、最悪な事態を受け入れなければならないのは、「自分」です。
読者の皆さんが繰り返される残念な歴史の犠牲者のひとりにならないように願っています。
■川部紀子
1973年北海道生まれ。ファイナンシャルプランナー(CFP® 1級FP技能士)・社会保険労務士。大手生命保険会社のセールスレディとして8年間勤務。その間、父ががんに罹り障害者の母を残し他界。親友3人といとこも他界。自身もがんの疑いで入院。母の介護認定を機に27歳にしてバリアフリーマンションを購入。生死とお金に翻弄される20代を過ごし、生きるためのお金と知識の必要性を痛感する。保険以外の知識も広めるべくFPとして30歳で起業。後に社労士資格も取得し、現在「FP・社労士事務所川部商店」代表。お金に関するキャリアは20年を超えた。セミナーに力を入れており講師依頼は年間約200回。受講者も3万人超。テレビ、ラジオ、新聞等メディア出演も多数。
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