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『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』第4話 トーコの名言「夢にしがみつくと息苦しいんだよ」

 メガネ中年・マキノ(村杉蝉之介)との結婚を嫌って、実家から家出してきたトーコ。そんなトーコに「何か心配事があるなら……」と優しさを見せるMIGHTY。夕食前には自主的にラップの練習を始めるなど、劇場版第1作『SRサイタマノラッパー』(09)の脳みそ空っぽだった頃とは別人のようではないか。

 だが、MIGHTYから気遣われたことが、トーコは気に喰わない。

トーコ「いい年齢して、ラップなんて恥ずかしいんだよ。しがみつくものがねぇから、ラップにしがみついてるだけでしょ? そーゆーヤツがいると、しがみつくものがねぇヤツは苦しくなるんだよ、しがみつくものが見つかってねぇヤツを追い詰めるんだよ! 頼むから『負けました。夢諦めました』って、酒呑んで、愚痴って、泣いててよ、ずっと。マジでラップとか息苦しいんだよッ」

 夢を追いかけている人間が近くにいると、夢を持たない人間や棄てた人間はうっとおしくて仕方ない。北野武監督が青春時代の終焉を描いた『キッズ・リターン』(96)では新人王を目指してボクシングの特訓に励むシンジ(安藤政信)を、ロートルボクサー(モロ師岡)が酒や煙草を教えて、ぬるま湯地獄へと引きづり込んでいった。夢が眩しければ眩しいほど、周囲の人間や本人まで傷つけてしまう。大事な夢と才能は、日本刀のようにきちんとサヤに収めておきたい。

 逆ギレしたトーコに対して、MIGHTYが返す言葉がまた身に沁みる。

MIGHTY「おめーがやりてぇことは、おめーが見つけるしかねぇんだよ」

 以前のMIGHTYならトーコに対して逆ギレ返しをしていたところだが、すぐには素直になれないトーコの蹴りをMIGHTYは股間でがっちり受け止めてみせる。当然ながらMIGHTYは悶絶することになるが、彼が充分に大人に成長したことを感じさせるひと幕だった。

『SRサイタマノラッパー』の劇場公開から8年。IKKU役の駒木根隆介は大ヒット映画『愛の渦』(14)でメインキャストのひとりを演じ、TOMこと水澤紳吾はメジャーやインディーズを問わずに活躍し、秋葉原無差別殺傷事件を題材にした主演作『ぼっちゃん』(13)では素晴しい名演技を披露している。MIGHTYこと奥野瑛太はメジャー大作『3月のライオン』で主演の神木隆之介と将棋盤を挟んで熱いバトルを演じてみせた。6月に犯罪サスペンス『22年目の告白 私が殺人犯です』の公開が控えている入江悠監督だけでなく、「SHO-GUNG」を演じる3人の俳優たちもそれぞれ自分の生きる道を懸命に模索しているところだ。新生「SHO-GUNG」のライブステージがより楽しみに思えて仕方ない。
(文=長野辰次)

最終更新:2017/05/01 17:00
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