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佐藤天彦名人が“ボロ負け”……それでも将棋界が「人間対コンピュータ」に挑んだ理由

佐藤天彦名人がボロ負け……それでも将棋界が「人間対コンピュータ」に挑んだ理由の画像1公益社団法人「日本将棋連盟」公式サイトより

 ついに名人がコンピュータとの勝負の場に登場し、注目を集めた将棋の「電王戦」。2番勝負の第2局が5月20日に行われ、佐藤天彦名人が「PONANZA」に完敗した。これまでチェスや囲碁のトッププロがコンピュータソフトに敗れており、将棋界も今回の敗戦は想定の範囲内だったはずだが、わざわざ“負け戦”に挑んで何か得るものはあったのか?

「名人が2連敗」という屈辱的な結果に終わった電王戦。両者の力の差がどれほどあったのかは、

「精度の高い読みの前にリードを広げられて完敗した」(日刊スポーツ)
「ソフトが佐藤名人に圧勝」(時事通信)
「佐藤名人がソフトに完敗」(サンスポ)

といった見出しや寸評を見れば明らかだ。将棋に詳しい週刊誌記者が語る。

「今回の電王戦は、第1局、第2局とも佐藤名人の完敗としか言いようがない内容の将棋でした。そもそもプロ棋士レベルの将棋は、『良い手を指したほうが勝つ』よりも、『悪い手を指したほうが負ける』という勝負になるもの。しかし、今回のPONANZAとの対局で、佐藤名人はこれといった悪手を指したわけではありません。ということは、両者の力にかなりの差があったということです」

 名人という“ラスボス”が出動し、わざわざ引導を渡されに行った形の将棋界。その背景には将棋界の焦りがあったのではないかと、前出の記者は分析する。

「将棋が世間で最後に話題になったのは、羽生善治さんが七冠を取った“羽生フィーバー”の時で、それが1996年のこと。今、羽生さん以外の棋士の名前を答えられる人がどれだけいるでしょうか? 実際、将棋人口は激減しており、昨年には将棋界唯一の新聞だった『週刊将棋』(マイナビ出版)も休刊になりました。しかし、ソフトとの対局となれば、マスコミも大きく報じますし、将棋ファンでない層も興味を持ってくれます。実際、2013年から行われた電王戦はニコニコ動画で中継が行われて大変な視聴者数を記録し、将棋を指さずに観るだけの『見る将』という新たなファンを獲得しました。名を捨てて実を取ったというのは酷ですが、ソフトに敗れるのと引き換えに新たなファンを獲得できたのですから、悪くない試みだったのではないでしょうか」

 残念ながら名人は敗れてしまったが、それと前後して“スーパー中学生”の藤井聡太四段が登場。プロ棋士とコンピュータソフトが対決する電王戦は、「役割を終えた」として今回限りで終了したが、注目度が高まるタイミングでのニューヒーローの誕生は将棋界に福音をもたらすかもしれない。

最終更新:2017/05/23 22:30
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