日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 吉岡里帆、ヒロイン役は重すぎた?
ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

ハマるのは3番手? TBS『ごめん、愛してる』ヒロイン・吉岡里帆に、一抹の不安

 ライブレストランでウエイトレスとして働く元地下アイドルの有朱は、とにかくめちゃくちゃな女だった。小学生時代のあだ名は淀君で、彼女が原因で必ず学級崩壊が起きたという。目が笑っていない有朱は生粋のトラブルメイカーで、劇中では主人公の楽器を盗んでメルカリに売ろうとする。底の浅い行動を繰り返しては、周囲の人間関係をかき乱していくのだ。

 有朱は清純派の皮をかぶった魔性の女という、これまで吉岡が演じてきたキャラの総決算のような存在だった。計算高いが思慮の浅い、かわいいだけの中身が薄っぺらい女を演じさせたら、今の吉岡は完璧である。

 しかし『カルテット』での成功は、主演女優にシフトしようとする際には、マイナスに働いているように見える。『ごめん、愛してる』で、どれだけけなげでかわいいヒロインを演じても、「ウソつけ!」と思ってしまうのだ。

 気になったのは、吉岡の演技が『カルテット』の時と変わらないことだ。特に酔っ払って長瀬に絡むシーンのしゃべり方は有朱と同じなので、コイツ本当は腹黒い女なんじゃないかと、疑ってしまう。

 脇役の時は、とにかく爪痕を残そうとする過剰な演技はプラスに働いていたが、画面に出ずっぱりの主演となると、主張が強すぎてうるさく見える。

 凛果を演じるためには、今までとは違う主演の演技をしなければならない。今のところ1話よりは2話のほうが一歩引いた落ち着いたトーンになってきており、少しずつハマりつつあるが、それでもやっぱり隠しきれない過剰さがにじみ出てしまっているのだ。

 果たして吉岡は、主演級の女優にステップアップできるのだろうか?

 個人的には『カルテット』ぐらいのポジションで、脇でおいしいところを持っていく女優として定着するほうが彼女には合っていると思う。しかし、野心家の吉岡としては、そこにとどまるなんて我慢できないだろう。ドラマ自体の出来栄えもさることながら、吉岡の成り上がりストーリーの今後を占う上でも、見逃すことができない作品である。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

最終更新:2017/07/22 14:00
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