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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.438

腐敗警察24時!! 麻薬大国フィリピンの捜査内情を生々しく暴き出した『ローサは密告された』

 警察がヤクザよりもヤバい存在なら、弁護士を雇えない下流市民は誰を頼ればいいのか。結局は家族同士で助け合うしか方法は残されていない。それまで母親のローサに頼りっきりだった4人の子どもたちは、追加請求された5万ペソを集めるために夜のマニラを走り回る。イケメンの次男カーウィン(ジョマリ・アンヘレス)はオッサンを相手に性サービスに励み、いつもより多めのお小遣いをもらう。母親そっくりで気が強そうな長女ラケル(アンディ・アイゲンマン)は親戚を訪ねて回り、借金を申し込む。父方の叔母さんからは「私たちがマニラに越してきたとき、あんたの母親は何もしてくれなかった」と悪態を突かれまくる。うつむいた長女は唇を噛み締めて、じっと耐えるしかなかった。多分、母ローサはこれよりもっと辛い目に遭いながら、あの店を手に入れたに違いない。長男ジャクソン(フェリックス・エコ)は両親を警察に売ったヤツの正体を知り、怒りを爆発させる。それまで自分勝手に暮らしていた子どもたちだが、両親を助け出すために一致団結する。救いのない悲惨な物語の中で、唯一胸が熱くなるシーンだ。

 メンドーサ監督は、大統領選挙中からドゥテルテ支持を表明しており、ドゥテルテ大統領により麻薬戦争について、以下のように語っている。

「最善の策とは言えない。でも、今できることをやっている。麻薬撲滅戦争は犠牲者を数多く出しているけれど、その分だけ根底の悪人を処分できていることも事実なんです」

 刑務所にいる薬物中毒者たちをどう社会更生させるのか、また警察内部の腐敗構造はどう改善していくのかという重要問題はそのまま残されている。フィリピンが抱える闇はそうとうに深い。ローサが懸命に守ろうとしたスラム街のあの小さな店は、今は何を売っているのだろうか。
(文=長野辰次)

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『ローサは密告された』
監督/ブリランテ・メンドーサ 出演/ジャクリン・ホセ、フリオ・ディアス、フェッリックス・ロコ、アンディ・アイゲンマン、ジョマリ・アンヘレス、イナ・トゥアソン、クリストファ・キング、メルセデス・カブラル、マリア・イサベル・ロペス
配給/ビターズ・エンド 7月30日より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー中
(c)Sari-Sari Store 2016
http://www.bitters.co.jp/rosa

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最終更新:2017/08/04 22:30
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