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 >   > 性被害者だけど、私はエロゲが大好き!
【wezzy】

性被害者だけど、私はエロゲが大好き! 性的コンテンツを楽しむ女性に向けられる、誤解に満ちたまなざしを考える

 性被害からの回復が早かったこと、人前に出て発言していること、スカートや身体のラインを出す服が好きなこと……私自身のパーソナリティにおいて社会で思われている“性被害害者のドレスコード”にふさわしくないものは多くありますが、その最たるものは私が“男性向け二次元コンテンツのオタク”であり、アニメや漫画だけでなく「エロゲ(18禁美少女ゲーム・ビジュアルノベル)が好き」というところではないでしょうか。

 私は、幼少期からアニメや漫画が大好きでした。子どものころには「SDガンダム」や父の大好きな「銀河英雄伝説」のアニメを見て育ち、小学生になると知人の影響でいわゆるギャルゲー(美少女ゲーム)やエロゲのコンシューマー版(レーティングをなくし、性表現や反社会的な表現をなくした家庭用ゲーム機への移植版)をプレイしていました。家には小説や図鑑など本もたくさんありましたが、「ジャンプ」「マガジン」「スピリッツ」など漫画雑誌から漫画の単行本、歴史や学習漫画までが文字どおりあふれていて、本棚に収まりきりませんでした。

 男きょうだいの末っ子で近所に女の子も少なく、男の子とばかり遊んでいた私は、実際の女性に触れるよりも二次元の女性に触れる機会のほうが多かったのです。

死にたい日々から、救ってくれた

 高校受験をきっかけに忙しくなり、漫画は読んでいたものの、アニメやゲームに触れる機会は一旦減りました。けれど、大学在学中に被害に遭って引きこもりになり、毎日寝込んで絶望しているときに、人からおすすめのエロゲを貸してもらう機会がありました。そして私はまたオタクに舞い戻りました。

 動けない日々がつづき、失いそうな希望を必死に留めてもがいていた私の心を、アニメやエロゲや漫画は確かに救ってくれました。動けなくても寝ながらアニメを見て、小説を読むようにエロゲをプレイし、漫画を読み、それらに感動して、励まされ、生きる力をもらっていました。作品の世界に入ることで混乱した頭がすっと静かになっていく、そんな感覚がありました。

 その後、徐々に回復し元気になって、一度は忙しく動き回れていたのですが、フラッシュバックが再発し再び体調を崩して寝込む日々が長く続きました。仕事をなくし、結婚で悩み、人に悩みを相談できず、自分をあきらめてしまいそうになり、追い詰められていました。

 当時、私は卜沢彩子であることを隠して匿名で、好きな作品のファンのコミュニティにつながっていました。追い詰められてもう死のうと計画していたとき、思いとどまったのはそうしたコミュニティで出会った人々とのつながりのおかげでした。彼らの影響で他の趣味も広がり、地方に暮らす人など、普段出会うことのない人と接してさまざまな価値観に触れました。

 その一方で、「性的コンテンツに親しむ女性が誤解されやすいこと」「被害に遭って性表現への接触自体を苦しく思う人も多くいること」「性表現やアダルトコンテンツに問題があると考える人が多いこと」から、性犯罪の被害者が「エロゲをやっている」と公表すれば所属しているNPOやほかの当事者に迷惑がかかるんじゃないか? と悩みました。

 性的コンテンツに親しんだり、性の話をしたりする女性は、性に奔放であり、誰とでもセックスをすると誤解されやすいです。「性は隠すもの」「性について語る女性は、はしたない」「性にオープンな人は異性にだらしがない」といわれているからです。そのためセックスワーカーのように性に関わるお仕事をする人や、性的なものを楽しむ女性は「被害に遭っても自己責任」もしくは「それは性暴力ではなく自分から誘ったんだろう」とされやすい風潮があります。

 性に関わる仕事をしても、性の話を積極的にしても、性に奔放とはかぎりませんし、性に奔放だからといって、誰とでもセックスOKではありません。

 またひとりの女性が“性被害者”であり、同時に“娯楽の性を楽しむ人物”でもあるーー両者は本来ならまったく矛盾しません。“性暴力を嫌うこと”と、“エンタテイメントとしての性表現を楽しんだり、コンテンツに関わったりすること”はまったく別の話だからです。

 そして「フィクションとして楽しむぶんにはOKだけど、現実にされたら嫌」も矛盾しませんし、そう思う女性は少なくないと思います。また、たとえ創作でも触れたくない表現は人それぞれです。私自身はレイプシーンが詳細に描かれるエロゲはどうしても気持ち悪くなってしまうので、出てきたらプレイを止めて情報を入れないようにします。そのラインは人によって異なり、誰かから決めつけられるものではないはずです。

 では、そうした誤解をなくすためには性表現を規制すればいいのでしょうか。エロゲや二次元の性表現において、問題のある部分や社会への影響はたしかにあると私も思います。エロゲが好きで女性経験の少ない男性から恋愛相談を受け、彼らが作品内での知識を3次元にも適応させていることに驚愕した……という経験が何度もあります。「同人誌ではこうだから、こうしたら喜ぶと思った」「ゴムしていないほうが愛を感じる」と本気で話す人もいました。

エロゲを知らない、だからすれ違う。

 しかし、ここで問題なのは“性的に正しくない娯楽コンテンツの存在”ではなく、“性に関する情報を得る場がほかにほとんどない”こと、そして彼らが“性や女性について無知であると自覚していないこと”です。創作物には人に影響を与えるだけの力があります。

 この問題において「創作物は三次元には影響はない」と主張する人もいますが、それはかえって創作物への軽視に繋がります。同時に「女性を尊重しない表現や間違った知識に慣れて当たり前だと思ってしまう可能性がある」という批判の論点や背景を理解せずに、問題や主張をすり替えて曲解している現状も見られます。

 二次元が好きならなおさら批判は批判として受け止めて、伝わり方を意識し、娯楽コンテンツから多く情報を得ていることを自覚し、影響を受けても人を傷つけることなく娯楽コンテンツを楽しむにはどうすべきかを検討する姿勢が大事なのではないでしょうか。

 とはいえ、私は性的娯楽コンテンツは教科書ではないので必ずしも正しくなくていいと考えています。いきなり表現の規制をするのではなく、どうしたら間違った影響を受けない状態にできるのか、そのコンテンツ自体が何を表現し伝えようとしているのかを知ろうとする姿勢も大事です。

 そもそもね……みんなエロゲがどんなものだか知らないでしょ? 私はエロを目的にエロゲをプレイしているわけではないのです。

 エロゲにもいろいろな種類があります、いわゆる性的に楽しむことを目的とした抜きゲーや、ゲーム要素の強い作品、キャラの可愛さ重視の萌ゲー、感動を呼び起こされる泣きゲーをはじめとしたシナリオ重視の作品などなど。完全に分類できるわけでなくさまざまな要素が合わさっています。

 みなさんがイメージするのは萌ゲーや抜きゲーだと思いますが、エロゲ好きにはシナリオ重視のゲームを好む人も多く、エロシーンを飛ばすのも“あるある”です。コンシューマー版が発売されたり、アニメ化して人気になるものもたくさんあります。

 私はやりませんが、抜きゲーにも良さがあるはずです。エロゲを批判する人はその実態を知らず、また知ろうとしないまま「たぶんこういうものだろう」というイメージで話しているなと思うんです。

 私はエロゲを総合芸術作品だと思っています。あんなに贅沢な体験ができるコンテンツをほかに知りません。エロシーンが入ることで18禁としてレーティングが設けられるので、表現に幅が生まれます。声優さんの演技、シナリオライターの文章、BGM、立ち絵(会話パートなどに使われるキャラの絵。表情が数パターンあり台詞によって変化する)・背景・CG、ムービーなどの演出、OP・ED主題歌etc……。「あ、これエロゲにするために無理やりセックスシーン入れたな」と思うものもありますが、エロシーンが入ることでより物語に深みが出る作品もあります。

 私の場合はエロゲですが、性的娯楽や二次元のコンテンツに対しては誤解が多いまま話が進んでいると感じます。

エロゲが好きな性被害者がいてもいい

 エロゲを楽しむ匿名の自分と、性被害者として活動する実名の自分とのあいだで、私は引き裂かれていました。前者のコミュニティでは性被害者として表に出ていることを隠し、後者の活動では自分が魅力を感じているものを隠している。そんな自分に違和感と罪悪感を抱えていました。

「自分の好きなものを隠したくない」「知らずに誤解されたくない」そう思って「エロゲを楽しむ会」という、プレイしたことのない人にもわかるように紹介するイベントを開催し、それをきっかけにエロゲが好きだと公にしはじめました。

 正直今はエロゲをプレイする時間をほとんど持てていないのですが、私という人間が形作られるうえで“エロゲ”や“オタク”は外せない要素で、そこで得たオタク同士の人間関係も含め、今でも大切に思っているのです。

 エロゲが好きな性被害者がいてもいいはず。必要なのは知ろうとすること、相手の意見を一度受け止め、現状や問題点を把握したうえで会話や議論をすることだと思います。私自身も自分の枠を人に押し付けてしまって失敗したと思うときもあります。人間は間違えます。間違えたことは反省するべきですし、それによって起きた責任は持つ必要があります。しかし、間違いは繰り返し丁寧にその都度修正していくしかないのだと思います。周囲が糾弾して排除してしまえばその機会を失わせてしまいます。

 私は今でも、自分で自分に枠を押し付け、社会に定着しているドレスコードにとらわれてしまうことがよくあります。そんなときは「好きなものを好きだという気持ち」や「自分がどういう自分でいたいのか」を思い出し、そこに立ち戻り、枠を意識することで外していくーーそんなメンテナンスを何度でも繰り返しつづけることが大事なのではないでしょうか。


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