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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.443

シュワルツェネッガーの鋼の筋肉が役に立たない!航空事故が生んだ哀しい復讐鬼『アフターマス』

 一方、建築家のローマン(アーノルド・シュワルツェネッガー)は旅客機の到着を心待ちにしていた。ロシアからの便には妻と娘、そして娘のお腹の中には新しい生命が宿っていた。家族との再会を楽しみに、ローマンはずっと仕事に励んできた。ところが空港でいつまで待っても旅客機は到着しない。航空会社の係員に問い合わせると、ローマンは個室へと通される。家族が乗った旅客機は永遠に到着することがないという事実を、ローマンはすぐには受け入れられなかった。なす術もなく、ローマンは衝突事故が起きた現場へ赴き、地上に散らばっている航空機の残骸を呆然と眺めるしかなかった。妻と娘の写真を見ては、泣き暮れるローマン。航空会社は賠償金の金額を説明するだけで、謝罪の言葉を口にしようとはしない。仕事も手につかなくなったローマンは、家族が眠る墓の前で1日中過ごすようになる。

 70歳になった今も、ボディビルで鍛え上げた鋼のような筋肉を鎧のように全身にまとっているシュワルツェネッガー。だがその自慢の筋肉は、不慮の事故で家族が失われるという精神的な打撃にはまるで役に立たない。カリフォルニア州知事を7年間にわたって務め、ハリウッド復帰後は『ラストスタンド』(13)で定年を間近に控えた老保安官、ゾンビ映画『マギー』(14)でゾンビウィルスに感染した娘を見守る父親役といった内面重視のドラマにも挑戦している。とはいえ、いかんせんマッチョなボディはアクション映画では見栄えがいいが、細かいナイーブな演技には向いていない。シュワルツェネッガーほど、演技派という言葉が似合わない俳優もいない。ところがだ。本作では家族を一瞬にして失ってしまった男の悲しみと苦しみを、デカい体を持て余しながら実に不器用に演じている。その不器用さ、不格好さが、むしろ主人公の報われなさをひしひしと伝えることに成功している。

シュワルツェネッガーの鋼の筋肉が役に立たない!航空事故が生んだ哀しい復讐鬼『アフターマス』の画像3航空機事故現場を再現。事故が起きたのはドイツだが、ボディビル大会の開催地として有名な米国コロンバスでロケ撮影が行なわれた。

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