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「読モ」に憧れて上京した香川出身女子が「女優」として脱ぐ理由/上京女子・ケース5

友達と映画を見ていた時に、知っている顔が出てきて驚いたことがある。大きなスクリーンの中で叫んでいたのは、私が働いていた会社で受付をしていた女の子・星野麻耶(仮)だった。

今日の上京女子/星野麻耶(仮名) 28歳 女優

今年28才になる麻耶だが、その容姿は「女の子」と呼ぶのがふさわしいほど、華奢でちっちゃくて可愛らしく、黒髪のショートが似合っている。

スクリーンに映る彼女は、会社にいる時とは別人に見えた。彼女の台詞は一言だったけれど、とても印象的で、映画が終わってからすぐにメールをした。そして、私たちは久々に会うことになった。

読者モデルに憧れて上京

数カ月ぶりに合う麻耶は、会社の受付にいる時と同じく爽やかだった。聞けばまだ受付バイトは続けているという。

「最近は週5日でバイト入ってるから、社員にならないかって言われちゃった」

女優だけで生活していくのは難しく、バイトを掛け持ちしているという麻耶だが、まだまだ女優として生活していくことを諦めていないので、社員になる話は断ったという。

――すごいよね。女優って夢があって。

「そんなことないよ。今でこそ演技するのが楽しいって思ってるけど、もともと女優志望じゃなかったし」

麻耶は、22才の頃に当時ブームだった読者モデルに憧れて、mixiで募集していた大手芸能事務所のオーディションを受け、合格したことを機に上京した。

「でも、そのオーディションは事務所に入るオーディションじゃなくて、事務所の養成所のオーディションだったんだよね」

養成所はモデルコースと女優コースに分かれていて、モデル志望だった麻耶は迷わずモデルコースを選んだ。養成所では、写真でのポーズの取り方などを教わる他、即興芝居など演技の勉強も行った。

1年の養成期間を終えると、大手芸能事務所主催で、芸能事務所100社程度を集めた公開オーディションが行われた。そこで声がかかった人だけが事務所に所属できるというワケだ。麻耶には20社の声がかかり、その中から面談をして現在の事務所に所属することとなった。

「今の事務所の人に、身長的にもモデルは厳しいから女優を目指したらって薦められて……それで女優になることにしたの」

最初は演技がまったくできず、怒られることが多かったというが、次第に自分でも上達していくのを感じ、いつの間にか夢中になっていったという。

カメラの前で脱ぐ仕事。彼氏には言わない

最近の仕事について聞いてみると、麻耶は出演作品をいくつか教えてくれた。

最近撮り終えたという作品は、私でも知っているような有名な監督が撮った映画だった。その監督の最新作のため、かなり大がかりなオーディションが行われ、麻耶は準主役を勝ち取ったそう。

「嬉しかったけど……少しだけ迷いはあったかな」

聞くと、その映画は、脱いだり、俳優との絡みがある作品だという。

「全国公開の映画だし、私の出身地って田舎だから、家族に迷惑をかけるのは嫌だった。『映画には出たいけどどうしよう……』って思ってお母さんに電話したんだよね。でも、『ここまで頑張ってきたんだから、満足できるまでやりたい』って言ったらお母さんも応援してくれて。それで踏ん切りがついたかな」

しかし、元俳優の彼氏には言えないでいるそうだ。

「彼氏とはそういう話はタブーなんだよね。映画でキスしたりハグするだけでも嫌な人だから。私も彼氏がそういうことしてたら嫌だし」

二人は付き合ってもうすぐ3年。結婚も意識し始めているという。

今東京にいるのは、大事な人がここにいるから

彼氏と結婚するということは、ずっと東京に居続けるのだろうか。そもそも、女優の仕事を続けるのであれば、東京以外で仕事をするのは難しいだろう。

「それはわからないかな。今、私が東京にいるのは、彼氏とか親友、大切な人が東京にいるっていうのが一番の理由。仕事は二番だから」

彼女の親友は同じ駅に住んでおり、毎週どちらかの家で語り明かす仲らしい。

「もちろん女優の仕事だけで生活していけたらそれが一番理想だけど、最近はいつ仕事変わってもいいかなって気持ちもあるんだよね。女優に固執しなくなって、他の仕事でも可能性があるんじゃないかって」

最近、手伝う機会があり「物作り」にも惹かれ始めているという。

夢追い人が集い、お互いをさらけ出す場所

最後に、読者モデルという華やかな世界に憧れて上京し、期せずして女優という仕事に巡り合った麻耶に、今の自分の居場所について聞いてみた。

「居場所っていうと、彼氏とか親友とかといる時間、かな。私って自分をあまり出せないタイプだから、自分のことをすべてさらけ出して、このままでいいんだって思わせてくれる人たちの存在がとても大切。その人たちがいるから、東京でも私に居場所があるんだって思えるんだと思う」

彼女の親友も、女優になる夢を追って東京にきた上京女子のひとりだ。

夢を追って上京した人のうち、一体何人が最初に思い描いていた夢を叶えているのだろう。多くの人の夢は上京してから更新されていく。挫折して夢を諦めた人もいれば、新しいことに惹かれ、流されていくうちに、意図しない場所にたどり着く人もいるだろう。

それぞれの夢を追って東京に辿り着いた人たちは、お互いに頼り合いながら夢の形を変形させていく。他人の目には、「夢を諦めた」「上京した意味ないじゃん」と映るかもしれない。

しかし、上京したことで、夢を語り合える仲間や、すべてをさらけ出せる友達に出会えたのだとしたら、それだけで上京した価値はあったんじゃないかな、と思う。その上で、夢が叶ったり、新しい夢に出会えたら、最高だけど。

最終更新:2017/09/17 07:15
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