日刊サイゾー トップ > カルチャー > 本・マンガ  > 46品の“作りたくなる”海軍レシピ
歴史を知り、その時代を味わうことができる本

膨大な情熱と調査が生んだ、作りたくなるレシピ46品『海軍さんの料理帖』が誕生するまで

「この製法で7割から8割は、合っていると思います」

 新宿の高級喫茶店で、テーブルを挟んで座った取材相手は力強く話した。その背後には、彼の丹念な取材と実践に裏打ちされた自信が輝いていた。

 この8月に発売された有馬桓次郎・著『海軍さんの料理帖 明治~昭和まで 歴史で辿る日本海軍レシピ46品』(ホビージャパン)は、発売前から、ぜひ取材をしてみたいという期待を抱かせてくれた本であった。

 日本海軍の料理数十点のレシピと、その歴史を紹介する本が発売されるということを初めて知ったのは、7月はじめのことであった。幾人かの関係者がTwitterで、築地の料理スタジオで調理と撮影、試食の様子をツイートしているのを見つけたのである。3日間に及ぶ撮影。その写真だけで、これは絶対に読まなくてはならない本だと確信した。

『艦隊これくしょん-艦これ-』を機に、数十年ぶりに、私の軍艦熱が高まって数年。その中で漠然と興味を持っていたのは、軍艦の中での食事である。理由は様々だが、そうした料理を食べることで、同時代を味わうことができるのではないかと思ったからである。

 ネットで検索すると、当時の海軍料理のレシピを紹介している人は幾人かいる。それらを参考にしながら、メジャーどころの料理は、自分でも挑戦してみた。

 それだけでも発見は大きかった。例えば、肉じゃがである。ネットで見つけた、明治時代の日本海軍のレシピでは、玉ネギは最後に入れて短時間だけ火を通すと記されていた。料理をしたことがある人ならばわかるだろうが、通例、肉じゃがを作るときには、玉ネギもとろとろになるくらいに煮込むものである。それが、半生だとどうなるのだろうか。

 食べてみて、目を瞠った。

 シャキシャキした食感の玉ネギ。それが、薬味のようにジャガイモやニンジン、牛肉と絡み合って、新鮮なうまさを与えてくれたのだ。

 日本海軍は、こんなうまいものを作っていたのか。ならば、もっと様々な料理を作ってみたい。そんな思いはあったけれども、一筋縄にいくものではなかった。ネットで得られる当時のレシピは限られたものなのである。偶然、元海軍主計中佐の瀬間喬『日本海軍食生活史話』(海援舎)を手に入れたときには、大いに期待した。けれども、残念なことにレシピはほとんど掲載されていない。その上、資料の中に多くの料理名が掲載されていたものだから、余計にフラストレーションがたまってしまった。

 きっと、海軍料理に興味を持っている大勢の人が、もっと手軽にもっとたくさんのメニューに挑戦してみたい。そんな思いを抱いているのではないかと考えていた。

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