日刊サイゾー トップ  > 「性具+催眠音声」の可能性の追求
快楽の求道者の終わらない旅路

「アダルトグッズ+催眠音声」の可能性を追求するトランスイノベーションへの誘い

「そうですね。私自身、好奇心がすべてで、いろんなものに手を出してきました。一応、エネマグラとかの経験もしています。自分の経験から、アナニーでドライするには、イメージ的な部分が重要だと思ったのです。だから、催眠と相性がよいに違いないと思って世に送り出したのが<催眠アナニー>なんです」

「アネロス(エネマグラ)が気持ちいいと、ご自身でもわかってやってるんですね」

「そうですね、理解がないと依頼できないし、よいものが生まれないと思っています」

 その控えめな言葉から、T氏が相当の快楽への探求を重ねた上で作品を世に送り出すに至っていることは自ずと理解ができた。誰よりも探求を重ねた経験がなければ「一応」なんて前置きをできるはずがないと思った。その探究心は、決して大っぴらに自慢できるものでもない。世間から広く賞讃を浴びるものではない。

 そう、世間の多くの人は、こうした「性情ではない」快楽に興味があっても、表向きは忌避してしまう。「ちょっとそこまでは……」と、躊躇したり。まったく興味のないフリをする。あるいは、興味がある自分を認めたくなくて過剰に変態扱いしたりするものだ。だからこそ、探究心の赴くままにルビコン川を超えるT氏のような人物は、もっと評価されてしかるべきだと、私は思った。

 そして、そこで知った快楽を、受け入れ安い形で躊躇している人たちへ勧めようとして、作品を世に送り出す態度。それは尊敬に値するものではないかと。

 今回リリースした、ボールギャクとオナホもまた、お仕着せのものではない。優れた催眠音声とセットになっているのだから、少々手を抜いてもよかったかも知れない。けれども、T氏はまったく妥協をしていない。幾つものボールギャグを取り寄せ、作品に相応しい物を選ぼうと努力を重ねたのだ。

「ボールギャクもあそこにたどり着くまでは、十数個を咥えました。実際にくわえて見て、はじめてわかることがあります。大きさは38ミリの物を選んだのですが、もっとも一般的な大きさは42ミリです。ですので、まずさまざまな大きさのボールギャグを探すのが大変でした。咥えてみると素材の違いもわかります。プラスチックではなくシリコン製でなくてはいけないと……。シリコンは少し値段が高くなってしまうのですが、最良のものは、これだと決断したんです」

 そのT氏の熱意に応えるべく、キャンドルマンも催眠音声を制作するにあたり、すべてを咥えて、一ずつレビューを書いたのだという。

■技術力の限界まで気持ち悪いオナホを求めて工場を訪ねる

 オナホにも、また知られざる探求がある。

 こちらは、商品名の通り「気持ち悪い」デザインを目指して、まったくゼロから生み出したものである。

「まず、原型師さんと一緒に、国内某所にあるオナホ工場を見学させてもらいました。オナホをいうものが、どうやって製造されるのかを学び、できることできないことを確かめたのです」

 その結果生み出されたのが、今回のアイテムである。当初、もっと違うものも考えていたが、それでは形が崩れてしまい製造することができなかったという。色も同様である。

 ある種の妥協といってしまえばそれまでである。でも、それはさらに未来を感じさせてくれるエピソードなのではないか。マンガやアニメがリリースにあわせて、さまざまなグッズを展開するようになってから長い。そこでは、これまで思いもよらなかった新手のグッズが次々とリリースされている。

 例えば、お色気系グッズの定番といえる抱き枕カバーや、おっぱいマウスパッド。実際に見たり触れたりしたことのある人ならわかるだろうが、登場した頃に比べると進化は著しい。

 素材は触っているだけで気持ちよいものとなり、着色などさまざまな面で、より満足度の高いものとなっている。これもまた「こういうものをつくることはできないか」というアイデアに応え、さまざまな技術が試行錯誤された結果である。

 近年、オナホは当たり前のように使われるものとなり、さまざまなグッズが生まれている。ふわとろの柔らかさを追求したものもあれば、締め付けを追求したものもある、かと思えば、付属するローションなど肌に触れた時の感覚や匂いに工夫を施したものも。

 でも、造形自体を「気持ち悪い」レベルまで、尖ったデザインにするなんて、思いも寄らなかったのではなかろうか。この挑戦によって、オナホの外側のデザインを工夫すれば、また新たな快楽の世界が広がっていくことを、世間は初めて知ったのではないか。

 まさに情熱のままに、新たな快楽を求めて突っ走る。それを半ば呆れられた目で見られることもあるとT氏はいう。

「そこまでやって、儲かってますか?」

「いや、実はあまり……。ボールギャグも、赤字にならないようには作ってます。でも、今は制作者さんにちゃんとお支払いした上で、面白いものをつくりたいという意識のほうが強いのです。知り合いのアダルトグッズメーカーには<アホだろ>といわれましたけど……それでも、面白いことをやりたい。やりたいだけなのかもしれない」

 趣味ならいざ知らず、トランスイノベーションは法人である。T氏のほかにもスタッフは複数名いる。ゆえに、ビジネスとしての成功もなくては危うい。ましてや、同人と違って商業で販売する場合、ネットでも実店舗でも「卸値」というものが存在する。それを見越して、ある程度高めに価格を設定しなければならないはずなのに、T氏は赤字にならないギリギリに価格を抑えている。それが「アホだろ」といわれるのは、当然だろう。それでも、T氏には目指すべき地平があるのではないか。

「やはり、大勢の人に気持ちよくなって欲しいんですよね」

「もちろん。商業ベースでやることによって、これまで知らなかった層に広がっていってるのは有り難いなあとは思っています。儲けが少なくてもやってるのは、情熱だけですよね、完全に」

 やはりそうなのだ。そうでなくては、まず今回のようなグッズを思いついても自社の商品として、世に送り出すことはしないだろう。ビジネスとしての面を優先させるなら、もっと妥協したり、さまざまな方法でコストカットを図るだろう。そうした面を無視した二つのグッズは、完成までも時間を要した。

 もともと、2つを同時にリリースする計画ではあったが、オナホには半年。ボールギャグには1年半の歳月を要したのだ。オナホの音声を担当したB-bishopは界隈では驚異的な執筆速度だといわれているが、それでも半年を費やしている。

 さらに、2つの催眠音声が本当に購入してくれた人を満足させるかを確認するために、T氏は何度も何度も聞いた。自分が納得する音になるまでリテイクを繰り返しながら。

■「無駄な努力」が作品力を高めるという真理

 傍から見れば「無駄な努力」などといわれるかも知れない。なにせ、じっと聞いているのである。しかも、聞きながら考えることは多い。本当にちゃんと催眠状態になることができるのか。音量。さらには、コンマ何秒での音のタイミング……。

「自分がちゃんと聞いていないと、説明もできませんから、何回も聞きますね。ホントに何回も何回も聞いて、よしって納得できる仕上がりになってからプレスに回してます」

 そして、そうしたチェックができるのも、これまで無数の催眠音声を聞くことに時間を費やしてきた経験があるからだ。

「催眠音声の知識では負けていませんよ。それだけ試していますし。聞いてないと、合う人を選べない。最初は自分で書けないかなと思ったのですが、お願いしたほうがいいものができます。それも、聞いているからこそお願いができるわけですから。催眠音声についての理解は人に負けない自負はあります」

 むしろ、自分が制作の側に回っているからこそ、さまざまな作品が聞きたくなるのだとT氏はいう。

「自分の携わっている作品でかかるのは難しいですよね。あらを探すために聞いてしまうんです。ですから、さまざまな催眠音声を買って楽しんでいるんです」

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