日刊サイゾー トップ > カルチャー  > たつき監督はなぜツイートしたのか

9月25日午後8時、たつき監督はなぜツイートをしたのか──『けものフレンズ』わからなかったこと、そして、わかったこと。

9月25日午後8時、たつき監督はなぜツイートをしたのか──『けものフレンズ』わからなかったこと、そして、わかったこと。の画像1『けものフレンズ』プロジェクト公式サイト

 大勢の人がドリンクを手にしていた。すでに次の仕事を抱えて、忙しい中で駆けつけた者。まだ、次の仕事で組む相手を探している者。いずれにしても、一つの仕事が大成功に終わったことに、万感の思いはあった。単なる生活の糧を得るための作業だったはず。それが、空前のヒットとなったのは驚きだった。自分が関わったのが、わずかの部分に過ぎないとしても、ボクは、ワタシは、ヤツガレは「アレをやったんですよ」と言えるのは、自慢だった。世の中では注目され、尊敬されるかと思いきや、内実は決して陽の当たることのない職業。「儲かりもしないのに、よくやってるよ」「どうしてそんな仕事を?」口には出さなくても、家族や友人の目が、そんな言葉を語っていることがある。でも、今回ばかりは、そんな想いも吹き飛んだ。作業の最中だって、嫌なことは数え切れないほどあった。でも、作品はヒットした。別に、作品がヒットしたからといって、自分の名前がグンと大きくクレジットされるわけではない。給料だって増えるわけじゃない。でも、作品のヒットは、そうした俗な想いを吹き飛ばしてくれるのだと思った。これから先の人生はわからない。でも、ひとまずは今日は会場に集うみんなと、一つの仕事を終えた感動を共有しよう。誰もが、そんなことを考えていた。

 刹那、会場の雰囲気が変わったのは、ひとりの男が入ってきた時だった。その男……作品の立役者の一人であるアニメ制作会社・ヤオヨロズの福原慶匡。プロデューサーとして、箸にも棒にもかからない作品を、成功へと導いた中心的人物の一人。何より、そのきっかけとなった才能を見いだした人物。当然、誰もが駆け寄り、一言挨拶の言葉をかけたかったのは言うまでもない。むしろ、福原のほうが、時間の限りを尽して、スタッフ一人ひとりにねぎらいの言葉をかけて歩く立場だった。そのはずなのに、福原は、どこか声をかけづらい空気を身に纏っていた。それが、大勢の人が詰めかける会場の空気を変えているのだと、勘のよい者は気付いていた。

 幾人かが、その見えない壁を乗り越えて、声をかけようと勇気を振り絞った時だった。

 福原が、ポケットからスマートフォンを取り出した。着信音をオフにしていたけれども、誰かからの着信だとわかった。

 こんな時に電話をかけてくるなんて、間の悪いヤツもいるものだな。勇気を振り絞った者たちは、少し遠巻きに福原の様子を見た。

 でも、その見えない壁は、一瞬にして高くなったのもわかった。画面に表示される名前を見て、サッと福原の顔に沈痛の陰がかかったのである。

 誰にするとなく会釈して、電話の相手に応答しながら、福原は外に出て行った。そして、そのまま3時間の宴の最中、福原が帰って来ることはなかった。

「たつき監督は、ずっと福原さんに『打ち上げにいかないでくれ』と言っていたそうなんです。でも、プロデューサーが欠席するわけにはいかないと、福原さんが打ち上げの会場に駆けつけたら、たつき監督から電話が掛かってきて……結局、誰も一言も、福原さんと話をすることができなかったんだそうです……」

1234567
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

水原解雇に間に合わなかった週刊誌スクープ

今週の注目記事・1「水原一平“賭博解雇”『疑...…
写真
イチオシ記事

さや香、今年の『M-1』への出場を示唆

 21日、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「賞レース2本目やっちまった芸人」の完結編が放送された。この企画は、『M-1グランプリ』(同)、『キ...…
写真