日刊サイゾー トップ > カルチャー  > 『嫌パン本』40原の“パンツ愛”
西原理恵子の生き様が人生の分岐に──

『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい本』40原が語る“パンツ愛”そして、これから

 40原が、西原の人生に感動をしていた、その頃。すなわち12年頃、急激に市場を拡大させていたのがソーシャルゲーム業界であった。この年の1月に矢野経済研究所が発表した資料では、11年の市場規模は、前年度比1.8倍の2,570億円。さらに、この年には3,429億円まで拡大すると試算されていた。しかも、この金額は広告収入を除いた金額である。拡大する、新興の開拓地であるソーシャルゲーム業界には、次々と資本が投じられ、新しいゲームが開発されていた。一部のゲームでの射幸心を煽るシステムは批判され「廃課金」などといった言葉がネットで見られるようになっていた。批判が殺到するのは、市場が急激に拡大し、誰もが無視できない存在になっていることとコインの裏表だった。

 そんなゲームに欠かせないのが、キャラクターの描かれたカード。その描き手がまったく足りず、常に「誰かいないか」という状態。ちょとでも可愛い女のコが描けるならば、瞬く間に引っ張りだこになることができる、まさに「バブル」。そして、このバブルは、企業・エンジニア・イラストレーターなどなど、さまざまな人々が、雲を掴み駆け上がることのできる、またとない機会を与えていた。

「ソーシャルゲームでは、可愛い女のコの絵が足りていない。だったら、それをやろうと思ったんです」

 もちろん、自分が可愛い女のコを描くことができるという自信などなかった。むしろ、さまざまなイラストを見ると、自分よりも可愛い女のコを描くことができる人は山のようにいた。でも……。

「この人たちよりも、自分は背景を上手く描くことができるじゃないか」

 だから、全体のクオリティでは、可愛い女のコを描くことができる。それを、自分の売りにしよう。

 2年余りの間、水面を漂っていた浮き草が、少しずつ根を下ろしていった。

(C)40原

 数時間続いたインタビューの中で、40原はずっと楽しそうだった。

 自分も大好きなパンツをきっかけに、世界が無限に広がっていっている。大勢の人から寄せられる感想。それをきっかけに、自分では気づかなかった視点を知ることができる。そんな日が続くのが、楽しくて仕方がないようだった。もちろん、普通に絵を楽しんでくれるのもよい。でも、読者一人一人が、違った楽しみ方をしてくれることに、俄然、興味が沸いてくるのだ。

 本来、作品はドM向きにつくったつもりである。ところが、ある自分はドSだという人は「女のコは、脅されて嫌々見せているという想像をして楽しんでいる」という感想をくれた。そういう、自分の気づかない楽しみ方をしてくれているのが、とにかくうれしかった。

「いろんな楽しみ方ができるじゃないですか、そういうので妄想して楽しんで欲しい。<今回は、こういう妄想で楽しみました>とか感想がくると、すごくうれしいんです」

 自身の作品であるイラストを超えて、フィギュアや、エロライトノベル、写真集と世界は膨張を止めない。自分の作品をあれこれと、他人に使われることに嫌な気持ちなどない。それは、とてもうれしいこと。そして、もしも自分よりも優れた作品「原作よりもよかった」と感想が舞う作品になっても、嫉妬は微塵もない。

「そのほうがコラボした甲斐があるじゃないですか。1+1が2になるんじゃなくて、どんどん大きくしていきたいんです。ラノベは、パラレルワールドと考えて、元ネタにして自由にやってもらいました。こんなコラボを、もっとやりたい」

 自分がパイオニアとして、頂点に立とうという欲望などは微塵もない。その世界で、大勢の人が自由に遊んでくれる未来が、40原の目には映っているのだ。やりたいことは、無限に広がる。さまざまな描き手による「嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい」をテーマにしたイラストやマンガ。このテーマだけの同人誌即売会など、アイデアの泉は枯れることを知らない。

「冬コミでは、いろんな作家さんとコラボして合同本を出す予定です」

 その目的は、このテーマの「布教」だけではない。「嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい」をきっかけに、さまざまな描き手がいることを知って欲しいのだ。

「ボクの同人誌を買った人は、初めて同人誌を買ったという人もたくさんいます。その中には、普段、同人誌を買わない人が、SNSで知って買っているのも多いんです。同人誌ショップには行くけど、普段は同人誌は買わないという人も買ってるから7万部までいってるのだと思う。そういう人たちに対して、ボクの同人誌だけで満足しないで欲しいんです。いろんな作家さんがいていろんな世界がある。で、同人沼にハマって欲しいと思っています」

 さまざま、人生に紆余曲折はあったけれども、自分の原点は、偶然手に取った『機動警察パトレイバー』。少年の頃の自分のように「嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい」を、手に取った人が、それをきっかけに、どんなに面白い作品を生み出してくれるのだろう。未来への期待が、40原に更なる創作へとかき立てている。7万部を超えた同人誌の売上は、もっと大勢の人に楽しいものを伝える機会を提供してくれている。

 もちろん、一度は「挫折」した、アニメーションへの意欲も、決して忘れてはいない。

 40原は、この上なく瞳を輝かせて言う。

「アニメも、やりたくて仕方がないんです……」
(取材・文=昼間たかし)

 

最終更新:2017/11/27 14:26
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