実証!!“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士に取材を申し込んで、記者が「遅刻」したらどうなる……?

――面白い、というのはどういう意味で?

純士 滑稽であると同時に、共感できるんですよ。火事になりかけたシーンなんかは、結構グッときました。あんな小さなライフスタイルだけど、この生活を壊されてたまるかとばかりに飛び起きて、必死で消火するところの奮闘ぶりがよかった。ああいう子たちほど、自分の生活をすごく大切にしてるんだという、生への執着が微笑ましかったですね。

麗子 あの子はあの子で不幸を演じてても、それをすごく楽しんでるんやろうなと思ったわ。

純士 10年間思い続けてたというわりに、おまえの好きってその程度のもんなの? と思えるシーンもあったじゃないですか。現実のショックのほうが、相手を思う気持ちよりもデカかった。つまりあの子は、自分のほうが可愛いんですよ。思い通りにならないことには首を突っ込まないようにしてるだけで、すべて思い通りにいくことだけに手を出す。それが、こじらせた奴の法則なんです。

麗子 ニと一緒やねんな。

純士 そうそう。似た者同士なんです。相手のことを考えずに勝手に変なプレゼントを贈ったり。だいたいやってることは一緒です。それを客観的に描けてる作品だから面白かった。

――そういうタイプの人々を、瓜田さんは毛嫌いするかと思ったのですが。

麗子 確かに。純士が私以上にケラケラ笑ってるから、ビックリしたわ。こういう映画、一番苦手なはずやったのに。

純士 こじらせ女子とか腐女子とかオタクのことを、これまでさんざんバカにしてきたけど、今はそういう気にはなれないですね。ああいう子たちは自分を基準に生きてるから、自分の基準値を上回る面倒な出来事や人に対しては、生理的に受け付けないような態度を取る。「ああ、やだやだ」とか言って。たとえば、このクソ寒い時期に、街頭で上半身裸になって踊ってる外国人がいたら、ポジティブな人や普通の女子は「なんかのお祭りかな? 楽しそう!」となる。でも、こじらせ女子はそうならない。「え、マジないわ」と、いきなり否定するんですよ。その脳が、俺にはものすごくわかるんですよ。

――それはなぜですか?

純士 最近気付いたんだけど、俺も似たような人種だからです。俺は不良の世界で一等賞クラスで輝いてきたんだ、おまえらこじらせ女子や腐女子やオタクどもとは、まったく違うんだ、と自分に言い聞かせてきたけど、実はそいつらに限りなく近かったという(笑)。

――そうなんですか。

純士 身の丈を知って夢を早い段階で諦めてサラリーマンになったりする人が多い中、俺はずっと中2脳でここまできちゃってる。夢を諦めるなんてまっぴらご免だ、俺は結構いい線いってるじゃないか、と。この映画の主人公らはルックスが地味だから妄想だけでとどまってる人たちだったかもしれない。俺も同じ自己中妄想タイプだけど、俺の場合、現実世界でも結構いい線いけちゃったりするから、より分別がつかなくなってるというか、より一層こじれてるんですよ。

麗子 純士はルックスがええから、アウトローのカリスマとか呼ばれるようになったしな。

純士 そういうことなんですよ(笑)。子どもの頃はヤクザを見て憧れてるだけだったのに、俺はルックスがよくてハッタリも効くもんだから、気付いたら街を歩いてる人たちから「そっちの人だよね?」と思われるようになっちゃった。でも元を辿れば単なるアウトローに憧れた子どもでしかなく、ただのアウトローオタクだったんです。俺も奴らも似たような脳内なんですよ。

麗子 純士はオタクっぽい上、人との距離感を測るのが苦手で、すぐ人を拒絶するとこもあるもんな。

純士 そういうこじらせ脳の奴らってのは「初恋の相手を振り向かせたい」とかいう、めちゃくちゃ自分勝手で図々しい願い事を平気で脳内に持ってたりする。しかも、何事も自分の思い通りに行くと思ってるフシがあるんですよ。ジャニオタがジャニーズのメンバーと付き合えるかもしれないとうっすら思ってるようにね。卑下してるようでいて、案外イケてると思ってる。その優越感で生きてるんですよ。だから自分らの考えに反するものたちを、この映画の主人公のように「え、ないでしょ。マジで無理無理!」と平気で排除しようとする。俺もそうだけど、擦れてるんですね。素直じゃないんです。

――なるほど。

純士 だけど映画の最後のシーンで、ヨシカがとうとう人間としての本能的な行動に出たじゃないですか。途中でも何度かそういうシーンがあったかな。「付き合おうか」と言ってみたり、屋上で抱きついてみたり。計3回ぐらい、本能的な行動に出た。こじらせ女子ぶってても、あれが絶対、人間の最終的な行動というか、本音の行動なんですよ。その「普段は自信がないから妄想の世界に逃げ込んでるけど、たまに本音が出てしまう」ところに人間臭さを感じ、同時にシンパシーも感じました。

麗子 こないだ一緒にDVDで見た『モテキ』には全然ハマらへんかった純士が、ここまでこの作品にハマるとはなぁ。どっちも似たような作品やと思うけど。

純士 いや、まったく別物のクオリティーでしょ。『モテキ』は幼稚臭くて耳が痛くなった。でも今日のは、釣り人とか駅員とか隣人とか、ヨシカの周辺人物の描写も出てくるじゃないですか。それが劇団ひとり原作の映画『陰日向に咲く』にちょっと近いタッチだと思った。劇団ひとりは文学的な人だから、周辺人物を上手く描けるんでしょう。ただ、映画の『陰日向に咲く』は面白いか面白くないかで言えば、面白くなかったんですよ。原作はどうだか知らないし、監督の意図も知らないけど、映画の『陰日向に咲く』に関しては、一人称の物語という印象を受けて物足りなさを感じた。「僕は、私は」の世界ね。でも映画の『勝手にふるえてろ』に関しては、登場人物の心を神視点で捉えてるような雰囲気を個人的には感じた。そこが面白くてハマりました。

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