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強姦疑惑に助成金詐欺――高齢“お友達官僚”と長き安倍政権のよどみ

政治的無風の18年、安倍総裁は3選か

森友学園騒動、加計学園騒動をものともせず、10月の衆院選もしっかり大勝してみせた安倍晋三首相。18年は9月に自民党総裁選を控えるも、これまた勝ちは確実視されている。しかし、5年の長きに渡るこの長期政権のよどみは、各所に垣間見られるようで……。そうした安倍政権の舞台裏を、現役新聞記者らが語り合う!

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『安倍三代』(朝日新聞出版)

A:全国紙ベテラン記者
B:全国紙中堅記者
C:全国紙中堅記者

A 2017年は、森友学園や加計学園をめぐる問題で安倍政権のもろさが見えた1年だったね。希望の党の自滅で衆院選は乗り切ったけど、今年も新たな疑惑が出たら支持率がまた急落しかねない。そんな中で野党が注目しているのが、「もり」「かけ」に続く「スパ」だ。

B スーパーコンピューターの開発を手がけるベンチャー企業「ぺジーコンピューティング」による助成金詐欺事件ですね。東京地検特捜部が逮捕・起訴した同社の齊藤元章社長は、安倍晋三首相と昵懇といわれる元TBSワシントン支局長の山口敬之氏と財団法人を立ち上げた仲。山口氏は同社の顧問のような存在で、彼が永田町の高級ホテルに事務所を構えるための月100万円以上の家賃を、同社が負担していたともいわれています。

C ぺジー社のスパコンについては、麻生太郎財務相も国会で先進例として持ち上げていた。問題発覚後、麻生氏は番記者たちに、ぺジー社のスパコンを「見に行ったくらい」と癒着を否定していますが、齊藤社長が山口氏を通して安倍首相や麻生氏の「ご威光」をちらつかせ国の外郭団体から助成金や融資金を引き出していた可能性は否定できず、次の通常国会で野党からの追及は必至です。

MEMO<>『強姦疑惑』
元TBS記者の山口敬之氏による、ジャーナリストの伊藤詩織さんへの性的暴行疑惑のこと。山口氏は安倍首相と親しく、当時の警視庁幹部による“もみ消し”がささやかれている。

A 検察サイドは担当記者たちに「政治案件ではない」と言って、官邸関与の打ち消しに必死なようだ。ただ、山口氏が助成金詐取の現場にいたら共犯に問われる可能性はあるし、脱税などほかの容疑が引っかかる可能性もある。立件されなかったらされなかったで、ジャーナリストの伊藤詩織さんへの性的暴行疑惑のときと同じく、「官邸から捜査当局への圧力」を疑う声は出るだろうし、尾を引きそうな案件だよね。

B 特捜部の案件としては、年末に大騒ぎになったリニア談合事件も、同じく検察による「安倍おろし」の一環ではないかとささやかれています。リニア新幹線の発注者であるJR東海の葛西敬之名誉会長は、富士フイルムホールディングスの古森重隆会長と並ぶ経済界の保守派の重鎮であり、安倍首相の後見人ともいわれるほど仲が良い。リニア事件で真っ先に家宅捜索された大林組の4代目、大林剛郎会長と安倍首相の関係の近さを指摘する声もあります。17年7月には安倍首相が、リニア新幹線の東京~大阪間の開業を8年前倒しする経済対策を発表し、国からの財政投融資として3兆円を投入することも決まりましたしね。

C ただ担当記者に聞くと、検察の捜査線上には政治家の名前は出てきていないようです。検察による安倍政権への揺さぶりという「陰謀論」的な見方がネットで広がっていますが、現状では「そういう見方もできなくはない」という程度では。

A 確かに、10年の大阪地検特捜部による証拠改ざん事件以来、特捜部はすっかり落ち目。ロッキード事件やリクルート事件などで現職閣僚たちの疑惑に切り込んでいった頃の元気などない。大手メディア側も、かつては特捜部担当に社会部のエース級を4~5人送り込み、わずか40人ほどの特捜部検事を集中的に回らせ、取材競争をなんとか勝ち抜こうとしていたけど……いまでは特捜部による事件の少なさに、担当記者の数を減らす新聞も出るほど。実際、紙面に記事を書ける機会も減っていて、若手がなかなかやりたがらないとも聞く。

B そういう意味で今回のリニア事件は、東京地検特捜部にとって久々の大型案件。12月8日に大林組に最初の家宅捜索に入る際には、気づいていないメディアの記者にわざわざ検察幹部がガサ入れを匂わせ、係官が捜索に入るところの絵を撮らせたようです。特捜部の存在をPRしたかったんでしょうね。でも現状では、民間企業同士の工事契約に関する不正事件にすぎない。政治部や経済部に影響を与えるところまでいかない、いわゆる「社会部マター」として終わりそうで、いまの政権を揺さぶる案件にまでは発展しそうな気がしませんねえ。

C 結局、検察当局も首相官邸に首根っこをつかまれている感じがします。安倍政権になってから内閣人事局ができて、法務省の検察幹部の人事にも官邸の意向が働くようになった。例えば、16年夏に林真琴刑事局長を事務次官に昇格させようとした法務省の人事案。これは官邸の注文でひっくり返り、どこかの高検検事長に転出予定だった黒川弘務官房長が事務次官に昇格したともっぱらです。黒川氏は米軍普天間飛行場の辺野古移設に関する訴訟や共謀罪の成立などを担当した人物で、菅義偉官房長官の覚えが非常にめでたかった。

A いまの首相官邸は結局、“お友達人事”なんだよね。信頼できるコワモテ官僚たちを引き留めて、政権運営の基軸にする。ただ、第2次安倍政権も5年を越える中で、主要官僚たちの高齢化【1】も目立つ。今年9月の自民党総裁選で安倍首相が3選されたら、戦前の桂太郎元首相を抜いて憲政史上最長の総理大臣となる見込みだけど、側近たちの刷新がうまくいかないと、足元をすくわれることにもなりかねないだろう。

B その総裁選は、岸田文雄政調会長や石破茂元幹事長らが対抗馬とされていますが、「安倍一強」を揺るがすだけの勢力は作りきれておらず、首相の3選は間違いなさそう。18年は国政選挙もないし、政治的には「無風」の年になるかもしれない。

C だからこそマスコミ的には、新元号のスクープ合戦【2】が見どころです。平成の元号は毎日新聞が唯一、発表当日の夕刊早版にねじ込んでスクープしたとされています。ただ、実際は30分ほど早かっただけで、特ダネと認めてない社もあるみたい(笑)。

A 大手メディアの間ではすでに、「新元号だけは抜かれるな」と編集幹部から号令が飛んでいるみたいだね。各社とも宮内庁担当の記者を増強して、19年4月末の天皇陛下の退位に備えているようだ。ただ今回の新元号については、過去の安倍政権の重要事項の決定時と同じく、首相のお気に入りとされるNHK政治部の岩田明子記者が、発表直前にドヤ顔でスクープするのではとささやく記者が多いね。

B 安倍政権長期化の下で、いろんなところに“オリ”がたまっている気がしますね。メディアに潜む“お友達記者”もそうですし、大学もリニアもスパコンも利権のあるところにはすべて首相と仲のいい人物が居座っていて、それがペジー社の齊藤社長のように、その威を借りようとする人物がたまにひょっこり顔を出してメディアに叩かれはするけれど……という感じ。現職官僚と酒を飲むと、トップダウンで物事を決めようとするいまの官邸のやり方に辟易しているという声を本当によく聞きます。第2の前川喜平・前文科次官のような内部告発者が出てきて、加計学園問題のような騒動が再び起きないとも限りませんよね。

(構成/編集部)

【1】主要官僚たちの高齢化
安倍晋三首相が御年63歳なのに対し、元外務次官で国家安全保障局長の谷内正太郎氏は74歳。また、警察官僚出身で官房副長官の杉田和博氏も76歳と、70代も珍しくない。安倍首相と仲の良いことで知られる、自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長に至っては、定年をすでに2回も延長しているのである。

【2】新元号のスクープ合戦
「平成」ではスクープをもぎ取った毎日新聞だが、逆に昭和に変わる際は、その毎日新聞の前身である東京日日新聞が、「光文」が新元号だとスクープ、したのだが……一部の社も追いかけたこの「光文」、結局ふたを開けてみたら「昭和」の間違いで、「光文事件」とも語り継がれる世紀の大誤報となってしまった。ちなみに「大正」は、当時朝日新聞の政治部記者であり、のちに政界入りする緒方竹虎が見事に抜いたと語り継がれている。

最終更新:2018/02/11 20:00
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