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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.469

これは金城哲夫が見た夢の世界の続きなのか? 人口問題を解決する理想郷綺譚『ダウンサイズ』

闇ビジネスで稼いでいるドゥシャン(クリストフ・ヴァルツ)とマリス(ウド・ギア)。新世界では、まだ法が整備されていなかった。

 一見すると、いいこと尽くめの理想郷のように思えるダウンサイズワールドだが、そこで暮らす人々は必ずしも聖人君子ばかりとは限らない。ポールの隣人となるドゥシャン(クリストフ・ヴァルツ)とその仲間マリス(ウド・ギア)は闇ビジネスで私腹を肥やしている。脚の不自由なアジア人のノク・ラン・トラン(ホン・チャウ)は母国で反政府活動に参加していたため、懲罰として強制的にダウンサイズ化させられていた。理想世界と思えたのは最初だけで、体がダウンサイズしたように、人間が内面に抱える悪意や悲しみもまたダウンサイズ化して新世界には蔓延していた。

 物語の後半、ポールはそれまで暮らしていた米国のダウンサイズ化された街「レジャーランド」を離れ、ドゥシャン、マリス、トランたちと北欧のコロニーへと旅立ち、思いがけない事態に遭遇する。ノルウェーにあるコロニーはダウンサイズ計画が始まって最初に誕生したコミュニティーであり、そこそこ歴史があり、そこで暮らす人々の意識も先進的だった。近い将来、人類が滅亡することを予測し、オリジナルコロニーの人々は「ノアの方舟」計画を準備していた。人間がダウンサイズされたことで、空間や物質のスケールが変わっただけでなく、ダウンサイズ人間は体内時計の進み方も速いらしい。オリジナルコロニーでは、人類はすでに幼年期の終わりを迎えようとしていた。

『ウルトラQ』の「1/8計画」は、ナレーターの石坂浩二が「古い文献によると巨石文化時代の人類は身の丈18mあったが、誰の手によって、どうして小さくなったのかは謎のままである」と最後に告げて幕を閉じる。もしかすると『ダウンサイズ』が描いている世界は、旧人類の物語なのかもしれないし、現人類が滅亡した後の新人類の物語なのかもしれない。ミニチュア化された世界の神話時代、そしてミニ人類の誕生とその終わりを時計を早回ししながら見ているような、奇妙な面白さが本作にはある。
(文=長野辰次)

『ダウンサイズ』
監督/アレクサンダー・ペイン 脚本/アレクサンダー・ペイン、ジム・テイラー 
出演/マット・デイモン、クリステン・ウィグ、クリストフ・ヴァルツ、ホン・チャウ、ウド・ギア、ジェイソン・サダイキス、ニール・パトリック・ハリス、ローラ・ダーン
配給/東和ピクチャーズ PG12 3月2日(金)より全国ロードショー
C)2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
http://downsize.jp

 

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最終更新:2018/03/06 13:47
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