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新幹線殺傷事件「発達障害と犯罪」は、本当に無関係なのか――賛否を呼んだドキュメンタリー番組が書籍化

 03年にあいち小児保健医療総合センターにて行われた杉山氏による調査では、ASDの治療を受けている265人のうち、行為障害と診断された者、犯罪で警察に逮捕されたことがある者は11人、およそ4.2%だった。16年の刑法犯検挙人員は10万人あたり347.1人、全体の0.35%となっている。単純に比較すれば、ASDの治療を受けている少年のほうが約12倍高い計算となる。また、京都の児童精神科医・崎浜盛三氏が、ある家庭裁判所が1年間に受理した少年犯罪のうち、無作為に抽出した63件の調査記録を詳しく分析したところ、実に14.2%もの少年が、ASDが疑われる結果となった。

 これらのデータは、犯罪者もしくは犯罪者予備軍の子どもの中には、発達障害を持っている者が少なからずいるということを示している。どうして、そのような傾向が出てしまうのだろうか?

 杉山氏によれば、そこに重大な影響を与えているのが、虐待やいじめなどの「迫害体験」だという。

「(親からの)過剰な叱責もそうですし、学校でのいじめもそうですね。そういう子ども虐待のような迫害体験が加算された時に、発達の凸凹を持った人っていうのは、非常に調子がおかしくなるんですね」

 虐待被害は、子どもの脳の機能に対して重篤な症状を引き起こす。恐怖、不安、悲しみ喜びといった情動に関わる扁桃体が虐待などによって萎縮すると、自制心をなくしたり、判断能力を鈍らせる。生まれつきの機能障害からくる発達障害を持つ子どもの悪い面だけを顕著化させ、負の症状を助長してしまうのだ。杉山氏の調査では、ASDを持つ子どものうち、ネグレクトを受けた子どもは3.7倍、身体的虐待がある場合は6.3倍も非行が増えることが明らかになっている。さらに、その背景には、発達障害に対する無理解から「手がかかる子」とみなされて虐待を受けてしまいやすい、あるいは集団になじめず、いじめの被害を受けやすいという傾向も無視できない。

 そんな杉山氏の言葉を受け、田淵氏はこう語る。

「このデータを総合的に分析すれば、次の事実が導き出せるだろう。発達障害にネグレクトや身体的虐待のような虐待が加われば、非行や触法行為に結びつく可能性が高くなるということだ。発達障害と少年犯罪を結ぶもの。その正体は虐待と考えて間違いない」

「発達障害が凶悪事件を引き起こす」といった言説は、絶対に慎むべき偏見である。田淵氏の取材は、我々が憎むべきは発達障害ではなく、虐待やいじめといった暴力であることを明らかにしている。

(文=萩原雄太)

最終更新:2018/06/22 21:00
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