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“生涯ドルヲタ”ライターの「アイドル深夜徘徊」vol.17

6年間の活動に幕! ベイビーレイズJAPANの終わらない物語~伝説の最高雷舞レポート~

ベイビーレイズJAPAN オフィシャルファンクラブ「吾輩は虎である」より

 始まりは、ネット上で見つけた不思議な広告だった。

「『ベイビーレイズ』というアイドルユニットをデビューさせる。そのプロモーションをしてくれる人を募集。報酬5万円。」

「怪しい……」それが最初の印象だった。とはいえ、何か面白そうなニオイを感じた私はそれに応募、メールでの審査を通り、ポニーキャニオン本社で行われた面接に向かった。2012年7月のことだ。

 残念ながら採用とはならなかったものの、面接をしたプロデューサーらしき人物から、「結果はどうあれ、このグループをぜひ応援してください」と言われたのを覚えている。

 その後、そのアイドルユニット「ベイビーレイズ(以下、ベビレ)」はポニーキャニオン本社において、毎週、「虎ノ門道場」というイベントを行うこととなり、私はそれに通い続けた。

 正直、歌もトークもまだまだだという感じではあった。事務所はレプロ、レーベルはポニーキャニオン。どちらもアイドル界では大手だし、サポートもしっかりしていることだろう。十分にレッスンを積んだ上で売り出していくというシナリオもあったと思う。しかし、あえて「メンバーたちの成長を見せる」という作戦をとり、彼女たちもそれに応えていった。事実、さまざまな企画を通し、少しずつ各人のキャラクターが見えた頃から、イベント自体がとても面白くなっていった。

 そしてもう一つ、彼女たちが他のアイドルと違っていたことがある。

 後にベビレは「乗り込み! 乗っ取り!! アイドル」として、有名なアイドルのライブに乗り込みに行くことになるが、結成された当初、名乗っていたのは「負け犬アイドル」だった。

 アイドリング!!!のオーディションに落ちた大矢梨華子と高見奈央、貧しい家計を助けたいという林愛夏、男子にいじめられたという渡邊璃生、アイドルになる気はないという傳谷英里香。なんだか、人生が思い通りにいっていない女の子たちが作り出す空気は、いわゆる「アイドルのエリート」たちとは全く異なり、それが新鮮でもあった。もちろん、それまでもコンプレックスを克服しようとしてアイドルになった人もいるとは思うが、最初からそれを前面に出してきたのはあまりないパターンだ。

 その後、ベイビーレイズは次々と戦略を打ち出していく。「2年以内に武道館ライブができなければ解散」という公約、NHKの朝ドラ『あまちゃん』の劇中歌「暦の上ではディセンバー」のリリース、「『ベイビーレイズJAPAN』への改名」など。

 この手のやり方は、大きなリスクを伴う。失敗すれば、解散や人気の低下へとつながるし、成功しても「出来レース」的な見方をされがちなのだ。

 それを乗り越える方法、それは、メンバーの覚悟にほかならない。次々と繰り出される難題に、メンバーは全力で取り組み、おそらくは運営側やファンが想像した以上の結果を出してきた。それが、多くのファンを獲得する力になったことは間違いないだろう。そして、その根底には、各人が抱えていた迷いやコンプレックスがあったことも想像に難くない。

 こうして、ベビレは着実にアイドル界でその名前を広めていったのである。

 15年、後に彼女らを大いに飛躍させる一曲、「夜明けBrand New Days」がリリースされる。元々この曲は表題曲ではなく、9thシングル「栄光サンライズ」のカップリングであった。ライブで歌い続ける中で、「沸く曲」として人気を集め、彼女たちの代表曲となっていったのだ。

 曲の魅力は、客席との掛け合いにある。出だしからの手拍子、Bメロからサビへのコール、サビ最後のジャンプ、落ちサビで掲げるピースサイン、そして、最後のサビ前の「イエッタイガー!」のコール。実際に体験してみないとわからないだろうが、とにかく、聴いて、コールを入れていると、実に気持ちのいい曲なのだ。

 この曲は、盛り上がるがゆえに、騒ぎになったこともある。16年の『TIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)』の野外ステージ。曲の途中で、多くのサイリウムが投げられ、会場はかなり混乱した状態になった。私も現場にいたのだが、それは激しいものだった。それからしばらくの間、フェスでこの曲を歌うのを封印したほどだ。

 しかし、この騒ぎと曲によって、彼女たちの知名度はまた上がった。「ライブアイドル」としての地位を確立したのだ。

 そして、今年の9月24日、山中湖交流プラザきららでの『ベイビーレイズJAPAN LAST LIVE「全虎が啼いた!伝説の最高雷舞(クライマックス)」』をもって、ベイビーレイズJAPANは解散した。もちろん、私もそのラストライブに参戦した。

パンフレット

 迎えた当日、JTBの企画したオフィシャルバスツアーで新宿を出発。行きの車内では、メンバーの大矢と高見がパーソナリティーを務める『大矢・高見のしゃべりスタ!』(ラジオ日本)の特別編が流される。他のメンバーもゲストに招き、思い出話などを聞くという構成だ。聴いていて、いやがうえにも気持ちが高まっていく。

 10時すぎに会場着。まずは、山中湖畔の広場に行く。残念ながら、雲があって富士山は見えないが、気候がちょうどよく気持ちがいい。そこには、グッズの物販や、地元の名物の屋台などが立ち並んでいる。大矢がレギュラー出演しているネット番組『浅草女子飲み46』(FRESH!)とのコラボドリンクの販売もあり、人気を集めていた。

コラボドリンク看板

  12時前になって、番号順に入場が始まる。今回の客席は、ステージに近いところから、「一富士」「二鷹」「三茄子」と分かれており、1000番代だった私は、一富士のエリアに入れた。広々とした客席は気持ちがいい。ステージは後ろの壁がなく、吹き抜けになっており、雲がなければ富士山が見えるらしい。

 定刻の13時、メンバー全員でのアナウンスがあり、おなじみのSEが流れ出す。会場のボルテージが上がっていく。ステージにメンバーが揃い、一曲目は「ゲート・オブ・ザ・タイガー」。2ndシングル「ベイビーレボリューション」のカップリングでもあり、古くからのファンには思い出深い曲だ。気持ちが一気に6年前に戻っていく。あの頃の、何かが始まっていくようなワクワクした感覚を思い出す。

 終わらないものなんてないし、事実今日が終わりのライブだというのに、いつまでも続いていくような感覚に陥る。いつまでも終わらずにいるように錯覚させるのものまた、アイドルの重要な要素なのだ。

「Pretty Little Baby」「恋はパニック」とシングル曲が続き、ヒャダインこと前山田健一作の曲「Ride On IDOROCK」から始まるメドレーへ。ここでそれぞれのメンバーがフィーチャーされた曲を披露する。「Baby Kiss」では、傳谷の萌えゼリフ「6年間好きでいてくれてありがとう!」も飛び出し、会場を沸かせる。

「今日の日を本当に楽しみにしていた。6年間の感謝を届けます!」というMCに続いて、メンバー自作の扇子を取り出し、「ニッポンChu!Chu!Chu!」。この曲が終わると、大矢がステージ袖に消える。おや? この流れは……?

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