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国立感染症研究所「病原体把握していない」と公式回答、『インフルエンザ死亡数激増』でやはり新型コロナも?

イメージ画像/出典:happyjune

 国立感染症研究所(NIID)が発表している「21大都市インフルエンザ・肺炎死亡報告」の中に新型コロナウイルス感染による肺炎で死亡した人が含まれている可能性が明らかになった。

 筆者は、4月1日付の「国立感染症研究所が『東京のインフルエンザ死亡数が激増』と発表、新型コロナとの関連性で物議に」の記事(リンク:https://www.cyzo.com/2020/04/post_236119_entry.html)で、NIIDが3月31日に発表した「2019-2020年シーズンのインフルエンザ・肺炎死亡報告」で、49-9週の東京のインフルエンザ・肺炎死亡数のグラフが9週にかけて跳ね上がっている点について、新型コロナウイルスによる死亡が計上されている疑念があることを指摘した。

 その後、NIIDは4月6日、4月13日、4月21日と同データ

https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/2112-idsc/jinsoku/1852-flu-jinsoku-7.html

を更新しているのだが、例えば3月31日発表のグラフと4月13日発表のグラフでは、死亡者数の増加幅などに明らかな違いが出ている。読者からもこうした点について問い合わせがあり、改めて、NIIDに対して取材を申し入れた。

 数度のやり取りの後、NIIDからは結果的に「質問事項をメールで送付して欲しい」との要請があり、筆者が出した質問事項は以下のものだ。

①3月31日に実際の死亡数が跳ね上がっている原因は? 新型コロナウイルスの死亡者が入っているのでは?

②4月6日の図表では縦軸の最大が140人に変更され、死亡者数の跳ね上がりが小さくなっているのは何故でしょうか?

③4月13日の図表では縦軸の最大が再び120人に戻されているのに、3月31日よりも跳ね上がりが小さいのは何故でしょうか?

④死亡者数の跳ね上がり(増加)は、3月31日と4月6日の図表では9週に発生していますが、4月13日に図表では8週と9週にわたっているのは何故でしょうか?

⑤これら3回の図表を重ねると、死亡者数の折れ線グラフが明らかに違っています(ズレがあります)が、何故ズレが出るのでしょうか? 統計数字が変更になっているのでしょうか?

 この質問に対して、NIIDの当該研究部から以下の回答を受け取った。(原文のママ)

「東京の場合には23カ所の保健所から報告を受けることになっておりますが、実際には早く入力される保健所、少し遅れて入力される保健所があります。入力されている少数の保健所の数字だけでは明らかに低くなりますので、前週までと比較できるように拡大しております。また同じ保健所で同じ週でも遅れて入力される場合もあります。したがいまして経時的にみれば、上がったり、逆に下がったりします。例えばある週の死亡を1保健所のみが行えば、それもたまたまある程度件数が多ければ、高く出ます。その後、その週の死亡を別の複数の保健所が、それもたまたま少な目の件数であれば、グラフの上では下がります」

 つまり、23カ所ある保健所からの報告にバラつきがあり、報告件数によってグラフのズレが生じるということのようだ。しかし、グラフのズレは9週の死亡者数だけではなく、過去の死亡者数にも起きている。これは保健所からの報告のバラつきでは説明が付かない。また、肝心の①の3月31日に実際の死亡数が跳ね上がっている原因は? 新型コロナウイルスの死亡者が入っているのでは? との質問に対する回答はなかった。

 そこで再度、①の質問に対する回答を求めた。その結果、NIIDから以下の回答を受け取った。(原文のママ)

「肺炎に関しましては誤嚥性肺炎除く以外には特に病原体を制限しておりませんので、『新型コロナウイルス』および『肺炎』と死亡診断書に記載されればはいります。ただ肺炎の死亡者数のみが入力され病原体までは入力されませんので、こちらからは病原体は不明です。『新型コロナウイルス感染症』のみと記載されれば(『肺炎』の記載がなければ)入りません。ですので排除はされていませんが含まれているかどうかは不明です」

 つまり、「(保健所からの報告に対して)特に病原体を制限していないので、NIIDでは病原体を把握していない」ため、インフルエンザ・肺炎死亡者から新型コロナウイルスによる死亡者は排除されていないが、NIIDでは新型コロナウイルスによる死亡者が含まれているかどうかは不明ということだ。

 それとなれば、保健所段階で死因が新型コロナウイルスによるものか否かを把握する作業を行っていなければ、当然、インフルエンザ・肺炎死亡者に新型コロナウイルスによる死亡者が含まれている可能性は高くなる。

 筆者は、2月12日付の「国立感染症研究所の予算が大幅に削減されていた!? 予算配分でも新感染症を甘く見ていた安倍政権」の記事(リンク:https://www.cyzo.com/2020/02/post_231326_entry.html)で、NIIDが安倍政権になって予算や人員を削減され、その中で新型コロナウイルスに立ち向かっていることを指摘した。

 現在NIIDは繁忙を極めているだろうし、その苦労も想像に難くない。しかし、この「インフルエンザ・肺炎死亡報告」に関しては、状況説明やグラフの説明もなく、何よりも死亡者の実数すら発表されていない。少なくとも、NIIDは保健所から死因を正確に報告させるべきだろう。

 報告の主体が保健所にあり、NIIDがそれを取りまとめているだけかも知れないが、政府機関であるNIIDがホームページを使って公表する以上、国民がそのグラフやデータを見て、十分に理解できるような説明は必要だ。

 なお、厚生労働省は今季のインフルエンザの流行が終息したとして、週に1度の患者発生状況の公表を、例年よりも2カ月近く早い4月10日で終了した。昨季の総数と比べると約480万人減少した。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2020/04/23 21:00
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