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池袋暴走事故、反省の色が見えない法廷戦術 被告が「アクセルペダルが床に張り付いた」と言い張る“真の意図”

「池袋暴走事故」反省の色が見えない法廷戦術 被告が「アクセルペダルが床に張り付いた」と言い張る真の意図の画像1
写真はイメージ(Getty Imagesより)

 周囲の忠告を聞かずに車の運転を続け、その結果、母娘の命を奪った飯塚幸三被告(89)。

 急いでいた理由を問われ、「予約していたフレンチに遅れそうだったから」と、説明した男は、法廷で「アクセルペダルが床に張り付いていた」と主張した。もしそれが事実なら、飯塚被告が乗っていたプリウスを作ったトヨタは全車を回収して検査する必要があるが、なぜ男は荒唐無稽な主張を繰り返すのか。

 4月27日に行われた被告人質問の後、遺族はこう語った。

「今日、一番、絶望を感じた。悲しいとか苦しいとか、超越して呆れた。あまりにひどい」

 事故の瞬間について問われた飯塚被告は、

「思ったよりスピードが出てしまい、アクセルも踏んでいないのに不思議に思った」
「アクセルペダルを踏んでいないのに加速し、車が制御できないのかと恐ろしく感じた」
「アクセルペダルが床に張り付いていた」

 と、車が異常な動きをしたと説明。自らに責任が無いと主張した。飯塚被告が主張するようなことは起こり得るのか?

「被告は、『ブレーキを踏んだが加速した』と主張していますが、プリウスでアクセルとブレーキを同時に踏めば、止まらなくても減速はします。ブレーキを踏み、なおかつアクセルを踏まずに加速したのなら、アクセルとブレーキが同時に壊れたということです。また、被告の車はブレーキランプが点灯していなかったことが明らかになっています。ブレーキランプも同時に故障したということです。さらに、運転データを記録する『EDR(イベントデータレコーダー)』でも“アクセルは全開だった”と記録されています。EDRも故障していたようです」(自動車雑誌ライター)

 この主張が通るなら、車で事故を起こした人間は皆、「ブレーキを踏んだのに……」と言うだろう。この他、パニック状態になったのにアクセルペダルを確認する余裕があったり、本人の主張とドライブレコーダーの記録に複数の食い違いがあったりと、矛盾点は多々あるが、法廷取材を長年続けるジャーナリストは、こういった主張をすべて“法廷戦術”だと切り捨てる。

「2人を死亡させた上に9人に重軽傷を負わせた挙げ句、裁判では『車が悪い』との主張を繰り返しており、まったく反省していません。示談も成立していませんし、通常なら間違いなく実刑です。

 ただ問題となるのは飯塚被告の年齢です。飯塚被告は現在89才で、今年6月には90才になります。今後、さらに高裁、最高裁と争えば、被告の年齢はさらに上がる。過去に90才以上で収監された例はありません。年齢が上がれば上がるほど、収監される可能性はどんどん下がります。そうなれば刑務所にも行かず、損害賠償はすべて保険会社の支払いになり、何のペナルティも受けないという寸法です」(ジャーナリスト)

 来たるべき超高齢化社会ではこういった事態が頻発することになるのか、はたまた自動運転の普及が先か。“上級国民”と揶揄された男は、身を持って問題提起しているのだろうか……。

藤井利男(ライター)

1973年生まれ、東京都出身。大学卒業後に週刊誌編集、ネットニュース編集に携わった後、独立。フリーランスのジャーナリストとして、殺人、未解決事件、死刑囚、刑務所、少年院、自殺、貧困、差別、依存症といったテーマに取り組み続けてきた。趣味はダークツーリズム。

ふじいとしお

最終更新:2021/04/30 08:30
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