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お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第51回

関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由

sekine_mosoryoku.jpg『関根勤の妄想力 南へ』ポニーキャニオン

 9月10日、脳科学者の茂木健一郎とお笑いタレントの関根勤の共著『妄想力』(宝島社新書)が出版された。この本は、学者と芸人という異色の組み合わせの2人による対談をまとめたもの。茂木が、脳科学の観点から関根勤の底知れぬ妄想力の秘密を解明しようとする刺激的な内容となっている。

 昨年から今年にかけて『脳格闘家 関根勤の妄想力』という全4巻のDVDシリーズが立て続けにリリースされるなど、近年になって関根勤の妄想力を再評価する動きが高まっている。独自の視点から繰り出される彼のとめどない妄想トークは、バラエティ番組などでもすっかりおなじみだ。

 妄想とは、「根拠のない誤った判断に基づいて作られた主観的な信念」のことである。いわば、個人が勝手に思い込んだり考えたりしていることを「妄想」と呼ぶのである。

 だが、関根勤の妄想芸は、決して独りよがりになっていない。一見バカバカしいことばかりをしゃべっているように見えても、結果的にそれが笑いを生み、多くの視聴者に支持されているのである。彼の妄想芸は、普通の人が日常的に頭に浮かべているような一般的な妄想とどこが違うのだろうか。それは、大きく分けて以下の2点である。

 1つは、関根の妄想はポジティブな感情から生まれる、ということだ。彼の妄想の原点にあるのは、決して嫉妬心や劣等感のような負の感情ではない。

 例えば、優香のことが好きで好きで仕方がない、という純粋な恋愛感情をベースにして、もしも優香と一緒に遊園地にデートに行ったら? という妄想を描く。どんな乗り物に乗ってどんな会話をするのか、どうやって自分が頼れる男であることをアピールしていくのか……。細かいところまでどんどん想像がふくらんでいく。

 このように、関根は必ず、かわいい女の子に対する好意、強い格闘家に対する憧れ、面白そうな人物に対する好奇心など、自分の中の前向きな気持ちを原動力として、想像力の翼をはためかせていく。だからこそ、彼の妄想は明るくさわやかな印象を与えるのである。

 もう1つは、関根の妄想はしっかりした現実を土台にしている、ということだ。彼はあくまでも、現実に起こりそうなことだけを思い浮かべて、妄想を一種のゲームとして楽しんでいるようなところがある。現実は現実として受け入れた上で、その枠の中で可能性をどこまでも発展させて妄想を生み出していくのだ。つまり、彼の妄想は現実からの逃避ではなく、あくまでも現実に根ざしているものなのである。関根の話になぜか独りよがりな感じがしないのも、恐らくはそのせいだろう。

 妄想とは、自意識の殻に閉じこもって遊ぶ究極のひとり遊びである。関根勤は、前向きな感情と揺るぎない現実感を原動力にして、それをテレビで通用するメジャーな芸にまで磨き上げてしまった。いつも光の差す方へ向かう関根の妄想芸は、テレビ空間に明るい彩りを添えてくれる。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)

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●連載「この芸人を見よ!」INDEX
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【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」
【第48回】ますだおかだ  「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化
【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」
【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」
【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける
【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感
【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる
【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ
【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末
【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」
【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心
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最終更新:2013/02/07 12:51
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