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お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第53回

受け継がれゆく遺伝子 ウンナン内村光良の「終わらないコント愛」

yaruyara.jpg『ウッチャンナンチャンのやるやらフォーエバー
誰かがやらねば!やるならやらねば!』
ポニーキャニオン

 1990年代前半にフジテレビで放送されて人気を呼んでいたウッチャンナンチャンのコント番組『誰かがやらねば!』『やるならやらねば!』がDVD化されることになった。「ウッチャンナンチャンのやるやら!フォーエバー」という5枚組のDVD-BOXとして、12月25日に発売される。

 『やるやら』は、映画やドラマのパロディーを中心にした本格的なコントで構成されていた当時の人気番組。この番組から、ナン魔くん、マモー、満腹ふとる、トニー南原といった数々の人気キャラクターが生まれた。若くてエネルギッシュな頃のウンナン、出川哲朗、勝俣州和らの活躍ぶりが堪能できる内容になっている。

 そもそもウッチャンナンチャンとはどういう芸人なのか? この問いに答えるのは意外と難しい。ウンナンがどういう芸人に見えているかは、受け手の世代によっても大きく変わってくるからだ。

 若手芸人時代には『お笑いスター誕生!!』で活躍して、都会派ショートコントの先駆者となった。その後、『夢で逢えたら』でダウンタウンらと共演を果たし、『やるならやらねば!』が人気を呼んでお笑い第三世代の中心的存在になった。

 『やるやら』終了後にも、『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』『ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー』『ウンナンの気分は上々。』『ウンナンのホントコ!』などのヒット番組を連発。

 『ウリナリ』から生まれた音楽ユニット「ポケットビスケッツ」「ブラックビスケッツ」のリリースした楽曲はミリオンセラーとなり、『ホントコ』から生まれた企画「未来日記」は、社会現象になるほどの大ブームを巻き起こした。

 どの番組を好んで見ていたか、どの時期のウンナンに思い入れがあったかによって、人々が心に思い描く「ウンナン像」はそれぞれに異なる。

 さらに言えば、『やるやら』終了後の彼らは、自分たちのキャラクターを前面に押し出すよりも、番組の企画に自分たちを合わせていくような形で活動していたため、彼ら自身のイメージをつかむことはますます難しくなっているのだ。彼らは、時代ごとのニーズに対応しながら、キャリアを積み重ねてきたタイプの芸人なのである。

 だが、そんな彼らがたった一度だけ、時代の波に逆らって新しい番組を立ち上げたことがある。それが、1998年にスタートしたコント番組『笑う犬の生活』だ(当初は内村のみの出演だったが、後続番組『笑う犬の冒険』から南原も加わった)。

 当時のテレビお笑い界では、『電波少年』『ウリナリ』などの体を張ったドキュメンタリー系のバラエティ番組が主流で、本格的なコント番組はほとんど存在していなかった。前年の1997年には、ダウンタウンの『ごっつええ感じ』やとんねるずの『みなさんのおかげです』も終了しており、誰もがコントから手を引いている時期だった。

 そんな逆風の中で、内村はあえて自分が中心になってコント番組を立ち上げることにした。コントでデビューして、人一倍コントに対する強い思い入れを持つ彼が、コントの灯を絶やすまいという情熱を込めて、新番組をスタートさせたのである。

 彼が一か八かの勝負をかけた『笑う犬の生活』は、共演者のネプチューン、オセロの中島知子らの活躍もあって大きな評判を呼んだ。『笑う犬』シリーズは次々と続編が生まれ、ゴールデンに進出して一大コント番組に成長していった。

 そして、時代が変わった今も、内村のコント愛は変わらない。実力派の若手芸人8組を集めて2008年に始まったコント番組『ザ・スリーシアター』でも、司会として後輩芸人の育成に努めている。後続番組の『爆笑レッドシアター』は、いまやフジテレビを代表する看板番組の1つになった。

 内村は、今年8月にはピン芸人「ザ・テルヨシ」として、若手芸人たちに交ざって事務所のライブにも出演していた。『爆笑レッドシアター』でも、ときどきコントに乱入しては、はんにゃやジャルジャルのような若手と楽しそうに絡んでいる。こういうときの彼の無邪気な笑顔を見ていると、本当にこの人はコントが好きなんだなあ、と思わずにはいられない。

 テレビの世界を器用に渡り歩いてきたウンナンの、不器用でがむしゃらなコント愛。約10年前に内村が蒔いた小さな種は、何度かのお笑いブームを経て、今の時代に大きな花を咲かせている。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)

●「この芸人を見よ!」書籍化のお知らせ

日刊サイゾーで連載されている、お笑い評論家・ラリー遠田の「この芸人を見よ!」が本になります。ビートたけし、明石家さんま、タモリら大御所から、オリエンタル・ラジオ、はんにゃ、ジャルジャルなどの超若手まで、鋭い批評眼と深すぎる”お笑い愛”で綴られたコラムを全編加筆修正。さらに、「ゼロ年代のお笑い史」を総決算したり、今年で9回目を迎える「M-1グランプリ」の進化を徹底的に分析したりと、盛りだくさんの内容になります。発売は11月下旬予定。ご期待ください。

ウッチャンナンチャンのやるやらフォーエバー 誰かがやらねば!やるならやらねば!傑作選

12月25日発売

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●連載「この芸人を見よ!」INDEX
【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」
【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由
【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」
【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」
【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化
【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」
【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」
【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける
【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感
【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる
【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ
【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末
【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」
【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心
【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは
【第37回】島田紳助 “永遠の二番手”を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」
【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは
【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」
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【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」
【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」
【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

最終更新:2013/02/07 12:50
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