日刊サイゾー トップ > 連載・コラム > 連載終了  > とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」
お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第55回

とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」

tonnels.jpg『とんねるず』ビクターエンタテイメント

 とんねるずの木梨憲武が、11月17日からTBS系で放送される新番組『お茶の水ハカセ』にレギュラー出演することが明らかになった。これは、ロケ企画でさまざまな実験を行っていく知的バラエティ番組。木梨が初めてTBSのゴールデンタイムに出演するということでも注目を集めている。

 とんねるずの2人は、高校を卒業して間もなく、『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ系)で勝ち抜き、芸能界デビューを飾った。師匠を持たない芸人がほとんどいなかった時代に、彼らは高校の部室で仲間内に披露していたような一発芸やモノマネネタをテレビの世界に持ち込んで、視聴者に強烈なインパクトを与えた。その後、下積みを経ることなく一気に売れっ子になった彼らの芸風は、基本的には「学生ノリ」の延長だといわれても仕方がないような部分がある。

 また、とんねるずは、自分たちの番組にスタッフを出演させたり、彼らをトークやコントの題材にするような「楽屋オチ」を多用することでも知られている。自分たちが業界の内部の人間であることを誇示して、身内のスタッフにしか伝わらないような内輪ウケのネタを頻繁に用いていたのだ。

「学生ノリ」で「楽屋オチ」。この2つが、とんねるずに対する世間一般のイメージの中でも代表的なものだろう。

 だが、ここでひとつ気になることがある。学生気分で勢いまかせの芸をするのも、多くの人に伝わりづらい楽屋オチを多用するのも、テレビで大多数の人を相手にして笑いを取るには、必ずしも有効なやり方とはいえないはずだ。それなのになぜ、そんな彼らがデビュー以来30年近くも第一線で活躍を続け、いまだにゴールデンタイムに看板番組を持っていられるのだろうか?

 その謎を解くためには、彼らの学生ノリと楽屋オチが、同じコインの裏表の関係にあるということを押さえておかなければならない。すなわち、とんねるずの2人は、学生時代の部室のノリを無理矢理テレビに持ち込んだのではなく、業界そのものを自分たちにとって居心地のいい「部室」にしてしまったのだ。

 彼らがデビューした1980年当時、芸能界におけるお笑い芸人の地位はきわめて低かった。とんねるずの2人は、そんなみすぼらしい”お笑い”という枠の中で、ちまちました覇権争いをするつもりはなかった。彼らはただ、スターになりたかった。

 彼らは、自分たちが立場の弱い芸人であるということを逆手に取って、芸能界そのものに対してテロを敢行したのだ。共演者や観客に素朴な感情をむき出しにして、好き放題に暴れ回る。そして、身のまわりにいるスタッフをさんざんネタにして、視聴率やギャラに関する芸能界の生々しいタブーを公然と口にする。

 そんな彼らは、テレビを見ていた普通の若者たちを味方に付けた。友達同士、部室でふざける感覚で、歌番組に出てはしゃぎ回る。学校の先生の悪口を言う感覚で、テレビ局員やマネジャーに対する不平不満をぶつける。芸を見せるのではなく、生き様を見せていったことで、とんねるずは同世代の視聴者の熱狂的な支持を得て、お笑いの枠を超えた稀代のエンターテイナーとなったのだ。

 ただ、彼らは決して、単なる口先だけの世渡り上手ではない。今でも、テレビの中でチラリと覗かせる芸人としての身体能力や反射神経は紛れもなく本物だ。

 石橋貴明にとって憧れのスターの1人に、元・ボクシングヘビー級チャンピオンのモハメド・アリが挙げられる。アリは、天才的なボクサーでありながら、ことさらに自分の力を誇示して、相手を突き放すようなビッグマウスでも知られていた。彼は、過激なことを言って人々を楽しませるのも、ボクサーの務めだと信じていたのだ。

 アリが真剣勝負をするのはリングの上だけ。石橋も、テレビの世界で同じような信念を抱いている。タレントにとっての真剣勝負とは、ゴールデンタイムの看板番組でいかに視聴率を取り続けるか、ということしかない。有言実行が信条のお笑い界の覇者は、今日もリングの上で挑戦者を待ち受けている。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)

●「この芸人を見よ!」書籍化のお知らせ

日刊サイゾーで連載されている、お笑い評論家・ラリー遠田の「この芸人を見よ!」が本になります。ビートたけし、明石家さんま、タモリら大御所から、オリエンタル・ラジオ、はんにゃ、ジャルジャルなどの超若手まで、鋭い批評眼と深すぎる”お笑い愛”で綴られたコラムを全編加筆修正。さらに、「ゼロ年代のお笑い史」を総決算したり、今年で9回目を迎える「M-1グランプリ」の進化を徹底的に分析したりと、盛りだくさんの内容になります。発売は11月下旬予定。ご期待ください。

この芸人を見よ!

イラストはホセ・フランキー氏の描き下ろしが45点!なんてぜいたくな!

amazon_associate_logo.jpg

とんねるず

いまも昔も怖いもの知らず

amazon_associate_logo.jpg

●連載「この芸人を見よ!」INDEX
【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」
【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」
【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」
【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由
【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」
【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」
【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化
【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」
【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」
【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける
【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感
【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる
【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ
【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末
【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」
【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心
【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは
【第37回】島田紳助 “永遠の二番手”を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」
【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは
【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」
【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」
【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由
【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」
【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」
【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」
【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か
【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは
【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が”竜兵会”で体現する「新たなリーダー像」
【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」
【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 既存イメージと「タモリ的なるもの」
【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由
【第23回】カンニング竹山 「理由なき怒りの刃」を収めた先に見る未来
【第22回】ナイツ 「星を継ぐ者」古臭さを武器に変えた浅草最強の新世代
【第21回】立川談志 孤高の家元が歩み続ける「死にぞこないの夢」の中
【第20回】バカリズム 業界内も絶賛する「フォーマット」としての革新性
【第19回】劇団ひとり 結婚会見に垣間見た芸人の「フェイクとリアル」
【第18回】オードリー 挫折の末に磨き上げた「春日」その比類なき存在
【第17回】千原兄弟 東京進出13年目 「真のブレイク」とは
【第16回】狩野英孝 「レッドカーペットの申し子」の進化するスベリキャラ
【第15回】サンドウィッチマン 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者
【第14回】小島よしお 「キング・オブ・一発屋」のキャラクター戦略
【第13回】U字工事 M-1決勝出場「北関東の星」が急成長を遂げた理由
【第12回】江頭2:50 空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」
【第11回】バナナマン 実力派を変革に導いた「ブサイク顔面芸」の衝撃
【第10回】山本高広 「偶像は死んだ」ものまね芸人の破壊力
【第09回】東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」
【第08回】ジャルジャル 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児
【第07回】爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」
【第06回】世界のナベアツ 「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ
【第05回】伊集院光 ラジオキングが磨き上げた「空気を形にする力」
【第04回】鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」
【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」
【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」
【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

最終更新:2013/02/07 11:03

とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」のページです。日刊サイゾー芸能最新情報のほか、ジャニーズ/AKB48/アイドル/タレント/お笑い芸人のゴシップや芸能界の裏話・噂をお届けします。その他スポーツニュース、サブカルチャーネタ、連載コラムドラマレビューインタビュー中韓など社会系の話題も充実。芸能人のニュースまとめなら日刊サイゾーへ!

ページ上部へ戻る

絶対的満足度の至宝店すべて見る

人気連載すべて見る

元木昌彦の『週刊誌スクープ大賞』

「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"元木昌彦による週刊誌レビュー

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、かく語りき

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士の最新情報をお届け! 嫁・麗子も時々登場。

テレビウォッチャー・飲用てれびの『テレビ日記』

テレビの気になる発言から、世相を斬る!

じゃまおくんのWEB漫クエスト

マンガレビューブログ管理人じゃまおくんが、インターネットに埋もれる一押しマンガを発掘!

腹筋王子カツオ『サイゾー筋トレ部』

“腹筋インストラクター”腹筋王子カツオさんが、自宅でも簡単にできるエクササイズを紹介!

イチオシ企画

【PR】DYM・水谷佑毅社長の野望とは?

医師免許を持つ、ベンチャー経営者の異色の半生!
写真
特集

タッキー革命新章突入!? ジャニーズはどうなる?

不祥事タレントを容赦なく切り捨て、Jr.の年齢制限まで勃発…ジャニーズはどうなる!?
写真
人気連載

小岩が「夜ふかし」の悪イメージから生まれ変わる!?

 東京都江戸川区に位置する小岩は、今でも下町風...…
写真
インタビュー

『鬼滅の刃』のプロデュースワークの巧みさ

『劇場版ソードアート・オンライン~オーディナル・スケール~』『富豪刑事 Balanc...
写真