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お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第59回

出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由

degawa1216.jpg『毎日どっきりvs出川』エイベックス・マーケティング

 出川哲朗が座長を務めていた劇団SHA.LA.LA.が、12年ぶりに活動を再開することが分かった。1998年以降、同劇団は長らく活動を休止していたが、この度、入江雅人の脚本・演出で2010年6月に東京で公演を行うことが発表された。ウッチャンナンチャンの2人を含むオリジナルメンバーたちが、久々の復活でどんなステージを見せてくれるのか、期待が高まるところだ。

 出川哲朗は、ダチョウ倶楽部の上島竜兵と並んで、体を張った笑いを得意とする「リアクション芸人」の第一人者として知られている。熱いおでんを食べたり、熱湯風呂に入ったり、バンジージャンプに挑んだりして、情けない姿をさらして笑いを取るのが彼らの仕事だ。

 だが、本来、芸人と名乗る人間ならば誰でも、状況に応じてリアクションで笑いを取ることは必要になってくるはずだ。それを本業にしている「リアクション芸人」とはいったい何者なのか? それは、他の芸人とはどういう部分で違っていて、どういう資質が必要とされるものなのだろうか? リアクション芸人の代名詞とも言える出川哲朗をサンプルにして、これらの疑問について考えてみたい。

 リアクション芸とは、他人から何かを仕掛けられたときの反応で笑いを取る手法のことである。そのため、漫才やコントのようなお笑いネタとは違って、自分たちだけでは完結せず、必ず相手を必要とする。だから、リアクションで笑いを取るためには、人間関係が重要になるのだ。共演者にかわいがられ、愛されるような人間でなければ、その役目は務まらない。

 また、リアクション芸は、非人道的な「いじめ」や「体罰」とも紙一重の関係にある。たとえ痛そうなことをやっていても、本当に痛々しく見えてはいけない。少しでも「かわいそう」と思ってしまったら、見る側は気楽に笑えなくなってしまう。あくまでも、笑える範囲で行動することを心がける必要がある。いわば、彼らは共演者だけではなく、受け手にも愛されなくてはいけないのだ。

 そこで、リアクション芸人には、2つの資質が求められることになる。1つは、「身体的特徴」である。ひどく痛めつけられたりしても、それが笑いになるような、かわいげのある外見を持っていなくてはいけないのだ。

 その点、出川はまさに天性の才能を持っていたと言えるだろう。老け顔、短足、小太り、甲高い声。あらゆる身体的特徴がナメられやすく、それでいてどこか憎めないところがある。それがリアクション芸人としては最適だったのだ。

 もう1つは、「ある程度の計算ができること」である。リアクション芸は、かなりの部分まで技術論で片付けられるものだ。熱くなくても熱いふりをしたり、痛いときにより痛く見えるような反応をしたりするためには、それなりの演技力が求められるのだ。

 この点に関しても、出川には恵まれた才能があった。彼は、もともと役者出身ということもあり、早い段階でリアクション芸の本質を客観的に見抜くことができていた。初めからお笑い志望ではなかったからこそ、リアクションで笑いを取るための仕組みを冷静な目で学ぶことができたのだろう。

 ただ、リアクション芸人は、計算しすぎてもいけない。ある程度は準備をして意図的に動きながらも、どこかで計算を超えた奇跡を起こさなくてはいけないのだ。計算をしながら、計算を超えた奇跡を呼び込む。それができる人間だけが、一流のリアクション芸人と呼ばれるようになるのだ。

 出川は、さまざまな危ない企画に果敢に挑み、その度に数々の奇跡を巻き起こしてきた。彼にはその種のツキが備わっていたのだ。また、それでいて、計算が計算に見えないキャラクターの魅力もある。それらの要素が、リアクション芸人としてはこの上なく適格だったのである。

 かつて、リアクション芸とは、『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』『スーパージョッキー』(共に日本テレビ系)などの番組で披露されるものであり、それは、絶対的なリーダーシップを誇る、ビートたけし率いるたけし軍団の独占市場だった。

 だが、出川哲朗やダチョウ倶楽部の活躍によって、この構造が少しずつ変わっていった。天賦の才能にも恵まれた彼らは、努力と試行錯誤の末に、お笑い界のどの派閥にも属さないフリーランスのリアクション芸人として、確固たる地位を確立した。

 出川は、「やばいよ、やばいよ」のかけ声と共に、その身一つでリアクション芸市場の自由化を成し遂げた、お笑い界の革命児なのである。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)

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●「この芸人を見よ!」書籍化のお知らせ

日刊サイゾーで連載されている、お笑い評論家・ラリー遠田の「この芸人を見よ!」が書籍化、11月30日に発売されました。ビートたけし、明石家さんま、タモリら大御所から、オードリー、はんにゃ、ジャルジャルなどの超若手まで、鋭い批評眼と深すぎる”お笑い愛”で綴られたコラムを全編加筆修正。さらに、「ゼロ年代のお笑い史」を総決算や「M-1グランプリ」の進化を徹底分析など、盛りだくさんの内容です。手元に置いておくだけで、お笑いを見るのがもっと楽しくなる。そして、お笑い芸人を通して現代が見えてくる。そんな新時代の”お笑い批評”をお楽しみください。

●らりー・とおだ
1979年生まれ。おわライター/お笑い評論家。テレビ番組制作会社勤務を経てフリーライターに。在野のお笑い評論家として、お笑いに関する分析・評論活動、インタビュー取材、コメント提供、マスメディア出演など活動は多岐にわたる。現在、お笑いについて熱く語るトークイベント「お笑いトークラリー」を主催している。WEBマガジン「日刊サイゾー」、ケータイ版「imidas」、お笑い動画サイト「owarai.tv」にてコラムを連載中。著書に『松本人志はなぜ人に媚びず自信満々に成功し続けるのか』(遠田誠名義、あっぷる出版社刊)がある。公式HPは「おわライター疾走」<http://owa-writer.com/>。

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【出演】ラリー遠田 / 業務用菩薩
【会場】ネイキッドロフト
【日時】12/19(土)OPEN11:30/START12:00
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11/24からNaked Loft店頭にて電話予約を受け付けます。ローソンチケットでも11/24から販売します(Lコード:32677)。詳細は以下より。
http://owa-writer.com/2009/11/1219m1.html

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●連載「この芸人を見よ!」INDEX
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【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」
【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」
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【第05回】伊集院光 ラジオキングが磨き上げた「空気を形にする力」
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【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」
【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」
【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

最終更新:2013/02/07 12:49
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