日刊サイゾー トップ > 連載・コラム > 連載終了  > 我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する
お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第61回

我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する

wagayalivedvd.jpg『我が家単独ライブ「HOME PARTY2009」』
ジェネオン・ユニバーサル

 2009年12月23日、我が家のDVD『我が家単独ライブ HOME PARTY 2009』がリリースされた。これは、09年8月に行われた単独ライブの模様を収録したもの。即日完売で注目度も高かった公演で、漫才あり、コントありの盛りだくさんの内容になっている。

 我が家は、3人が次々に入れ替わって話を進めていく「ローテーション漫才」と呼ばれるスタイルを編み出したあたりから、少しずつ業界内で注目されるようになった。ローテーション漫才とは、ボケとツッコミの役柄を3人でどんどん入れ替わりながら演じていくというもの。漫才の中で、2人でボケとツッコミを入れ替えるのはたまにあるが、トリオでそれをやるという発想は斬新だったのだ。

 この名刺代わりの「ローテーション漫才」のおかげでテレビでの露出が増え始め、若手芸人のコント番組『ザ・スリーシアター』(フジテレビ系)のレギュラーにも抜擢された。その後は、後続番組『爆笑レッドシアター』(同)にも出演。コント芸人として、はんにゃ、フルーツポンチ、しずるといった若手芸人たちとしのぎを削っている。

 キャラ芸人全盛の時代の中で、我が家の3人は、いずれもそれほど強いキャラを持っているわけではない。3人ともどこかこぎれいで、ヨゴレ芸が似合わないところがある。若手と呼ぶほどのフレッシュさもなく、ベテランと呼ぶほどの風格もない。

 そんな彼らがなぜ今、人気を呼んでいるのだろうか? その理由は、それぞれのメンバーが、自らのキャラの薄さを逆手に取って、自分の中の相反する個性をうまく利用したというところにある。

 大仁田厚似の杉山裕之は、「言わせねえよ!」という決まり文句でおなじみの強力なツッコミの使い手だが、一方ではいじられ役としても際立った存在感を持っている。他の芸人にちょっかいを出されるのを少し本気で嫌がっているあたりが、いじられ役としての適性抜群の証である。

 中心的なボケ役で、我が家というトリオの頭脳でもある坪倉由幸は、イケメンを売りにしていて、プライベートでもかなりのナルシストだと言われている。だが、そんな彼も、ネタの中ではしょうもない下ネタやダジャレを連発している。チュートリアル徳井に代表されるように、イケメンの下ネタはお笑いでは大きな武器になる。どんなにくだらなくて下品なことでも、男前が言うと生々しく聞こえないのだ。

 また、谷田部俊は、3人の中では最も地味で存在感が薄く、天然キャラというイメージも定着している。だが、実はコントの中ではきちんと動いてしゃべれるしっかり者の一面も持っている。だからこそ、彼はボケ役に回るだけではなく、真剣な演技でネタを先導することもあるのだ。真面目にしていれば真面目に見えるし、とぼけていればとぼけたキャラに見える。どちらにも見える二面性が彼の持ち味だ。

 このように、我が家の3人は、それぞれが相反する2つのキャラを持ち、それらを使い分けることでさまざまなパターンのネタを演じることができているのだ。ローテーション漫才では、役割はそのつど入れ替わるが、大きく見れば谷田部と坪倉がボケで、杉山がツッコミだ。コントでは、谷田部・坪倉が杉山をいじることもあれば、杉山・谷田部が坪倉に振り回されることもある。また、3人が3人ともおかしな世界観を貫き通すというパターンもあり、表現の幅が実に多彩なのだ。

 芸人がトリオでネタを演じるときには、「大ボケ」「小ボケ」「ツッコミ」という役割分担をするのが一般的である。ツッコミ役を1人きっちり固定して、その人が常識を代弁する役回りを務めると、それだけでネタが見やすくなるのだ。

 だが、我が家の場合、ツッコミは必ずしも固定されてはいない。杉山は常識の代弁者としてのツッコミを務めるには少しクセが強すぎる。だが、それでいてボケを一手に引き受けるほどのバカキャラでもない。だからネタごとに微妙に異なるポジションをとっているのだ。

 我が家は、1人1人ではやや薄いキャラを持った3人が、その組み合わせの妙によって豊かな世界を作り上げているのだ。彼らは、自分たちの個性の薄さをデメリットとせずに、むしろメリットとして生かして、臨機応変にキャラを入れ替えることで、多彩なネタ作りを実現させている。我が家のコントの面白さの鍵は「変幻自在の三重奏」にあるのだ。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)

konogeininwomiyo.jpg
●「この芸人を見よ!」書籍化のお知らせ

日刊サイゾーで連載されている、お笑い評論家・ラリー遠田の「この芸人を見よ!」が書籍化、11月30日に発売されました。ビートたけし、明石家さんま、タモリら大御所から、オードリー、はんにゃ、ジャルジャルなどの超若手まで、鋭い批評眼と深すぎる”お笑い愛”で綴られたコラムを全編加筆修正。さらに、「ゼロ年代のお笑い史」を総決算や「M-1グランプリ」の進化を徹底分析など、盛りだくさんの内容です。手元に置いておくだけで、お笑いを見るのがもっと楽しくなる。そして、お笑い芸人を通して現代が見えてくる。そんな新時代の”お笑い批評”をお楽しみください。

●イベントのお知らせ
ラリー遠田presents
「第3回お笑いトークラリー」
【日時】1/13(水) OPEN18:30/START19:30
【会場】ロフトプラスワン
【出演】ラリー遠田、業務用菩薩
【Guest】大谷ノブ彦(ダイノジ)
前売¥1500/当日¥1800(共に飲食代別)
※前売券はローソンチケットにて発売中(Lコード:33462)。
≪会場・お問い合わせ≫
LOFT/PLUS ONE
新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 TEL03-3205-6864
http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/

我が家単独ライブ「HOME PARTY2009」

チケットは即完売でした。

amazon_associate_logo.jpg

●連載「この芸人を見よ!」INDEX
【第60回】ハライチ “ツッコミ”を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは?
【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由
【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」
【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」
【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」
【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」
【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」
【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」
【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」
【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由
【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」
【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」
【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化
【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」
【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」
【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける
【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感
【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる
【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ
【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末
【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」
【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心
【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは
【第37回】島田紳助 “永遠の二番手”を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」
【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは
【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」
【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」
【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由
【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」
【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」
【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」
【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か
【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは
【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が”竜兵会”で体現する「新たなリーダー像」
【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」
【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 既存イメージと「タモリ的なるもの」
【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由
【第23回】カンニング竹山 「理由なき怒りの刃」を収めた先に見る未来
【第22回】ナイツ 「星を継ぐ者」古臭さを武器に変えた浅草最強の新世代
【第21回】立川談志 孤高の家元が歩み続ける「死にぞこないの夢」の中
【第20回】バカリズム 業界内も絶賛する「フォーマット」としての革新性
【第19回】劇団ひとり 結婚会見に垣間見た芸人の「フェイクとリアル」
【第18回】オードリー 挫折の末に磨き上げた「春日」その比類なき存在
【第17回】千原兄弟 東京進出13年目 「真のブレイク」とは
【第16回】狩野英孝 「レッドカーペットの申し子」の進化するスベリキャラ
【第15回】サンドウィッチマン 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者
【第14回】小島よしお 「キング・オブ・一発屋」のキャラクター戦略
【第13回】U字工事 M-1決勝出場「北関東の星」が急成長を遂げた理由
【第12回】江頭2:50 空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」
【第11回】バナナマン 実力派を変革に導いた「ブサイク顔面芸」の衝撃
【第10回】山本高広 「偶像は死んだ」ものまね芸人の破壊力
【第09回】東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」
【第08回】ジャルジャル 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児
【第07回】爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」
【第06回】世界のナベアツ 「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ
【第05回】伊集院光 ラジオキングが磨き上げた「空気を形にする力」
【第04回】鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」
【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」
【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」
【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

最終更新:2013/02/07 12:48

我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化するのページです。日刊サイゾー芸能最新情報のほか、ジャニーズ/AKB48/アイドル/タレント/お笑い芸人のゴシップや芸能界の裏話・噂をお届けします。その他スポーツニュース、サブカルチャーネタ、連載コラムドラマレビューインタビュー中韓など社会系の話題も充実。芸能人のニュースまとめなら日刊サイゾーへ!

ページ上部へ戻る

絶対的満足度の至宝店すべて見る

人気連載すべて見る

元木昌彦の『週刊誌スクープ大賞』

「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"元木昌彦による週刊誌レビュー

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、かく語りき

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士の最新情報をお届け! 嫁・麗子も時々登場。

テレビウォッチャー・飲用てれびの『テレビ日記』

テレビの気になる発言から、世相を斬る!

じゃまおくんのWEB漫クエスト

マンガレビューブログ管理人じゃまおくんが、インターネットに埋もれる一押しマンガを発掘!

腹筋王子カツオ『サイゾー筋トレ部』

“腹筋インストラクター”腹筋王子カツオさんが、自宅でも簡単にできるエクササイズを紹介!

イチオシ企画

【PR】DYM・水谷佑毅社長の野望とは?

医師免許を持つ、ベンチャー経営者の異色の半生!
写真
特集

問題案件連発でジャニーズ帝国崩壊!?

マッチの不倫や山下智久の退所などが重なり、ジャニーズの根幹がゆらぎ始めている…。
写真
人気連載

小室圭さん母の元婚約者が最後の“賭け”?

今週の注目記事・第1位「後援者2500人パー...…
写真
インタビュー

離婚のうしろめたさとその解放

 離婚経験を持つ13人の男性に、その経緯や顛末を聞いたルポルタージュ「ぼくたちの離婚...
写真