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お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第65回

キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」

udo.JPG『Sweet 10 キャイ~ン』ポニーキャニオン

 5月7日から9日の3日間にわたって、キャイ~ンの2人が紀伊國屋サザンシアターにて単独ライブ「キャイ~ンLIVE2010『キャイニングイレブン』」を開催することになった。いつまでも初々しいイメージのある彼らだが、今年はついに結成20周年。記念すべき節目の年に、キャイ~ンの2人がどんなステージを見せてくれるのか気になるところだ。

 椿鬼奴、いとうあさこといったアラフォー女性芸人がバラエティーを席巻している昨今、お笑い業界では別の意味でも年配の女性たちに注目が集まっている。それは、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「熟女大好き芸人」という企画から始まった、男性芸人たちの熟女愛ブームである。ロバート秋山、オードリー春日、ナイツ塙といった面々が、「男はみんな若い女性が好き」という一般論を覆して、熟女ならではの魅力を熱く語ってみせたのである。

 そんな「熟女芸人」の中でもひときわ生き生きとしていたのが、キャイ~ンのウド鈴木だった。彼の場合、他の熟女芸人たちよりもさらにターゲットの年齢層が幅広く、「おばあさん」と呼ばれるような年代の女性にまで心をときめかせていた。ウドは、「(自分の)女性のストライクゾーンは、18歳から灰になるまで」という名言まで残している。彼の熟女愛は、熟女の外見や内面を純粋に愛でるというものであり、その愛情を率直かつ情熱的に表現するということにかけては彼の右に出る者はいない。興奮のあまり話の途中で自分が何を言っているのか分からなくなったりすることもあり、この企画はほとんどウドの独壇場という感じだった。

 ウド鈴木という芸人の最大の魅力は、この全方位的な愛情にある。彼は、異性だけではなく、身のまわりの人に対しても常に惜しみなく尊敬と愛着を持って接しているのだ。中でも最も有名なのは、相方の天野ひろゆきに対する偏愛だろう。コンビ結成20年を迎えた今も、彼のことを「天野くん」と「くん付け」で呼び、ネタ作りを担当する天野への敬意を隠そうともしない。彼らのこの露骨なコンビ愛は、とんねるずやダウンタウンのような「プライベートでは一切付き合いがない」というコンビ像が一般的だった中で、かなりの異彩を放っていた。

 ウドは、動物のように素直に周りの人に愛情を注ぎ、それをまっすぐに表現する。あのルックスとキャラクターのせいで、ウドに対しては誰もが警戒心を抱かない。むしろ、一直線に懐に飛び込んでくる姿が、妙にかわいらしく見えてしまうのだ。その健気で一途な振る舞いによって、彼は内村光良をはじめとする多くの先輩芸人の心をつかんでいる。

 キャイ~ンは、デビュー当初から漫才ネタの完成度が高く、ウドの独特の言語感覚を生かしたボケと研究熱心な天野の技巧的なツッコミも光っていた。だが、彼らのブレイクの最も大きな要因となったのは、ウド鈴木という男の人間的な魅力だろう。これがあったからこそ、キャイ~ンは90年代半ばに一気に売れっ子になり、幅広い年代に支持される芸人になったのだ。見返りを求めない愛情が、大きな見返りを得て返ってきた。惜しみなく愛を振りまくウドは、惜しみなく周囲から愛される芸人像を確立したのだ。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)

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●「この芸人を見よ!」書籍化のお知らせ

日刊サイゾーで連載されている、お笑い評論家・ラリー遠田の「この芸人を見よ!」が書籍化されました。ビートたけし、明石家さんま、タモリら大御所から、オードリー、はんにゃ、ジャルジャルなどの超若手まで、鋭い批評眼と深すぎる”お笑い愛”で綴られたコラムを全編加筆修正。さらに、「ゼロ年代のお笑い史」を総決算や「M-1グランプリ」の進化を徹底分析など、盛りだくさんの内容です。手元に置いておくだけで、お笑いを見るのがもっと楽しくなる。そして、お笑い芸人を通して現代が見えてくる。そんな新時代の”お笑い批評”をお楽しみください。
ラリー遠田×担当編集S「お笑いを楽しむための”ツールとしての批評”でありたい」

キャイ~ンLIVE2008 『Sweet 10 キャイ~ン』

愛です。愛。

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●連載「この芸人を見よ!」INDEX
【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」
【第63回】青木さやか 仕事も家庭も……不器用に体現する「現代女性の映し鏡」
【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」
【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する
【第60回】ハライチ “ツッコミ”を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは?
【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由
【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」
【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」
【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」
【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」
【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」
【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」
【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」
【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由
【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」
【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」
【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化
【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」
【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」
【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける
【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感
【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる
【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ
【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末
【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」
【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心
【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは
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【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは
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【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」
【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

最終更新:2013/02/07 12:46
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