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「アートには本当に力があるのか?」アートセンターから避難所へ 被災地の劇場・いわきアリオスの挑戦

IMG_2691.JPGいわきアリオス

 福島県いわき市にある公共劇場「いわきアリオス」は2008年4月にオープンした公共劇場だ。4つのホールとともに16のリハーサル施設、キッズルーム、交流施設などを備えた総合的なアート施設として、常に市民に開かれた活動を行ってきた。2011年3月11日、開館からの延べ来館者数が200万人を突破するであろう記念すべきその日、アリオスは震度6弱の地震に見舞われた。『文化からの復興 市民と震災といわきアリオスと』(水曜社)は、開館から震災後までのいわきアリオスの活動をまとめた一冊だ。

 2008年の開館より、一貫して市民のための運営を行ってきたアリオス。公共劇場には珍しいマーケティング部を設置し、市民にとって何が必要なのかをリサーチしながら運営されてきた。世界的に有名なオーケストラや劇団のステージ、有名なアーティストのライブ、そして、市民参加型のアートプロジェクトなど、その活動は多方面に及ぶ。しかし、3月11日を境に、その活動は大きな変更を余儀なくされた。

 3月11日からアリオスに与えられたのは、被災者の避難所としての役割だ。もともと、避難所に指定されていたのはアリオスの前庭だけだったが、「屋根のある公園」というコンセプトのためか、自然と屋根のあるアリオス内部が避難所として使用されるようになった。間断なく強い余震が襲い、およそ50km離れた福島第一原発では水素爆発が発生する中、避難所の人々は人生で味わったことのないような不安に苛まれている。「アートには本当に力があるのか?」これまで、市民とともに活動を行い続けてきたアリオスは、アートの現実に直面した。

「いわきアリオスは『アートセンター』として、何も期待されていないことだけは明らかだった。(中略)そもそも、避難所暮らしをしていたスタッフたちすら、舞台芸術に触れようとする意欲が失せ、舞台芸術の持つ『力』が信じられなくなっていた」(本書より)

 アートに関わる人間だけでなく、日本中のほとんどの人々が「今、自分に何ができるか」を考えただろう。原発から50km、“被災地の劇場”として、アリオスはその最前線に立たされた。そんな混乱した状況の中、支配人の大石時雄はこのように語った。

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