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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.310

イーストウッド監督が描く“イスラム国”誕生前夜 悪魔と呼ばれた男の正体『アメリカン・スナイパー』

americansniper01.jpg38歳の生涯を閉じたクリス・カイルの自伝『ネイビー・シールズ最強の狙撃手』の映画化。リアルな戦場シーンはモロッコで撮影された。

 映画というメディアの特性のひとつに、複眼的な視野を内包していることが挙げられるだろう。小説のほとんどはひとりの作家によって書かれるが、映画は監督だけでなく、脚本家、プロデューサー、カメラマン、キャスト……様々な視点が盛り込まれることによって、作品の世界観に立体感と奥行きを持たせることができる。監督にそれらの視点を束ねる力量がなければ、単なる駄作で終わってしまうわけだが。現在84歳となるクリント・イーストウッド監督による『アメリカン・スナイパー』は、その点での心配はない。なにせ、イーストウッド監督は映画界の現人神である。『アメリカン・スナイパー』の原作本『ネイビー・シールズ最強の狙撃手』(原書房)は4度にわたってイラク戦争に従軍したクリス・カイルの一人称で語られる回顧録(要所で妻タヤの証言が入る)であり、スナイパーライフルのスコープから覗いた戦場の生々しさが描かれているのに対し、イーストウッド監督は戦場シーンは臨場感たっぷりに、だがスコープだけでは見えない世界を俯瞰した立場から厳粛さを持って見つめている。

 テキサス州生まれの主人公クリスは、ずっとカウボーイになることに憧れていた。幼い頃に父親に連れられて狩猟に出掛け、一発でシカを倒してみせたことから、「お前には射撃の才能がある」と褒められた。弟が学校でケンカに巻き込まれた際には、父親からこう教えられた。「人間には3つのタイプがある。羊と狼と番犬だ。お前は邪悪な狼から大勢の羊たちを守る番犬になるんだ」と。クリスは父親の教えを生涯守り抜くことになる。誰からも愛された熱血漢クリスは、やがて“伝説”と“悪魔”という2つのニックネームで呼ばれることになる。伝説と悪魔、クリスの正体は一体どちらだったのか? イーストウッド監督はその答えを、本作を見た観客ひとりひとりに委ねる。

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