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色眼鏡を取り除く“反原発抗議行動”ドキュメンタリー『首相官邸の前で』

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 9月2日、東日本大震災に端を発して始まった首相官邸前での一連の抗議行動がテーマのドキュメンタリー『首相官邸の前で』が、渋谷区にあるアップリンクで先行上映された。

 本作は、慶應義塾大学教授で歴史社会学者の小熊英二が初監督したドキュメンタリー作品。2012年の首相官邸前の脱原発抗議行動を中心に、当事者たちのインタビューと、市民が撮影したさまざまな映像で構成された作品だ。

 これまで筆者は、幾度も首相官邸前や国会前を取材で訪れてきた。しかし、大勢の人々が参加する一連のデモは、自分の周囲であった体験でしか語ることができない。

 ところが、この作品は、さまざまな人物のインタビューに市民が撮影した映像(ネット上に公開されていたものを許諾を得て使用)を加えることによって、首相官邸前で何が起こってきたのかを1時間50分あまりの中で体験することができるのだ。

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 これは、歴史社会学者の監督だからこそ作り得た映像であり、20年後、あるいは50年後といった後世に残す歴史資料になっているのである。

 今回の先行上映に駆けつけた大きな理由は、筆者の仕事仲間である石崎俊一が本作の撮影と編集を担当しているからにほかならない。『渋谷ブランニューデイズ』(監督/遠藤大輔)、『こどもこそミライ まだ見ぬ保育の世界』(監督/筒井勝彦)と、これまでもアップリンクで劇場公開され、話題を呼んだ異色のドキュメンタリー作品の撮影班に参加してきた石崎は、新人監督である小熊英二と2人で、この作品を完成させた。石崎は本作のほかにも、子どもの保育をテーマにした今秋公開の長編ドキュメンタリー映画『子どもは風をえがく』(監督/筒井勝彦)の撮影も担当している。

 小熊英二といえば、上下巻あわせて2,000ページ以上もある、角川財団学芸賞を受賞した主著『1968』(新曜社)をはじめ、多くの著書が名だたる賞を受賞してきただけに、それらの著書から受ける重厚なイメージや、近年の脱原発デモなどでのスピーチから感じた近寄りがたい印象もあり、少なからず距離感を感じていたのだが、それらはすべて杞憂に終わった。

 上映の1時間ほど前、アップリンクのカフェで石崎と合流した。小熊監督の所在を聞けば、この日は先行上映ということもあって分刻みの取材スケジュールをこなしているという。首相官邸前という話題のキーワードをタイトルに冠した作品の注目度に感嘆しつつ、まずは昨年の6月以来、1年以上にわたって小熊監督の下で共同作業をやってきた石崎に話を聞くことにした。

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