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安室奈美恵とその母、そして元夫・SAMをめぐる運命の糸…稀代の歌姫を追い続けた芸能記者が語る引退報道の舞台裏

 安室奈美恵(40)の引退発表は地元、沖縄でのコンサートが終わった3日後の20日の夕方だった。40歳の誕生日を迎えた日に当たるこの日、彼女は「来年9月16日をもって引退する」とブログに綴った。所属のレコード会社の一部の幹部へも数時間前に報告したというように、安室自身が1人で数年前から抱いていた引退時期だったという。現場のスタッフも「聞いてないよ」と寝耳に水だったようだ。

「安室は所属のエイベックス内で個人事務所として独立して活動しており、直接的な上司はいない。仕事もすべて個人の判断。引退も自分の判断で発表を20日にしたとしても、誰も文句は言えない」(音楽関係者)

 突然の引退は決して不思議ではない。これまで安室はすべて自分自身で決断してきている。芸能界入りのきっかけになった「沖縄アクターズスクール」も友達と見に行ったところ、当時のマキノ雅弘校長に「レッスン料免除」でスカウトされ、金銭的な負担をかけないことを約束して母親を説得して入った。バス代もかかることから、歩いて1時間の距離を通ったことは有名な話。さらに沖縄空手の稽古も学び、今のキレのあるダンスの基礎となった。やがて東京の芸能プロの目に止まり芸能界入りを決意したのも自分の判断。母親には事後報告だった。スターを夢見て上京したが、2年間は鳴かず飛ばずの苦しい時代が続いた。

 時にはホームシックに陥ることもあったが、決して沖縄に戻ることなくスターになるという決意は変わらなかったという。やがてソロ歌手としてヒットを飛ばし、「アムラーブーム」を作った。人気の最中、今度はバックダンサーだったSAMと電撃結婚。「デキ婚」とはいえ、まだ二十歳。人気のピーク時の出産、育児による休養はマイナス。一説には「妊娠では反対のしようもない」と押し切る形で結婚を決めたという話も。ちなみに、芸能界のデキ婚ブームは安室から始まった。結婚も母親には事後報告だった。当時、母親はその時のことを著者にこう語っていた。

「私も中学卒業後に集団就職で当時は、船で上京しました。就職先が埼玉のSAMさんの実家の大きな病院だったので、相手を聞いたときは驚きました。なんという巡り合わせだろう、と。それも結婚を後押ししたかもしれません。それに、私も沖縄の人とデキ婚でした。別に打ち合わせしたわけではなく、私と奈美恵の運命みたいなものがすべて重なるようでした」

 育児休暇を挟んで復帰。「ハングリー精神の強い子」と言われるように、休養期間など関係なかった。歌も踊りもさらにパワーアップ。ダンスミュージックの第一人者となり、他の追随を許さない、ナンバー1の座に付き、今もその座は揺るぎない。

 それだけに引退には「なぜ?」の声も多いが、この時期の引退は歌手・安室奈美恵の美学だろう。安室の引退は元プロ野球選手の城島健司氏とかぶる。捕手として大リーグで活躍した実績のある城島氏の引退は阪神の二軍時代だった。人気も実績も十分の城島氏としては寂しいものだったが、「一塁手に転向か指名打者なら一軍のレギュラーとしてまだ活躍できるのに、彼は捕手にこだわった。捕手としてできないなら、引退する」という話を野球担当記者から聞いた。

 安室もダンスミュージックにこだわってきた。歌って踊るスタイルはアスリートでもある。すでに年齢的には限界に近い。かといってドレスでしっくり聴かせる歌手やタレントに転身の選択は安室にはない。そしてファンも望まない。あくまでもダンスミュージックの安室である。城島の捕手へのこだわりと同じように、アーティストとしてのパフォーマンスができなくなったら、引退するのが安室の美学だろう。「パワーが落ちた」と言われてまで続ける前に引退を決めた。世界のホームラン王・王さんが「30本を打てているのに辞めた」のとも同じである。

 加えて、私生活も微妙に影響している。仕事ではすでに頂点に立ったが、女性として幸せはまだ遠い。結婚後、不幸が襲った。母親が殺害される事件。その後、SAMとも離婚。長男の親権を巡り揉めたこともあった。

 今は溺愛する息子と2人暮らしが続く。すでに第二の故郷なのか、京都の一等地に3億円といわれるマンションの一室を購入。東京と京都で暮らしていると言われている。その息子も来年二十歳。そろそろ親離れする時期でもある。今度は女としての幸せを見つける時期になっている。業界の男性との恋愛話も取沙汰されており、「引退後に再婚を考えているのでは」という説もある。その時はすでに私人。メディアも騒ぐことはできない。かつて「普通の生活がしたい」と言って引退したキャンディーズのように、復帰はないだろう。山口百恵、ちあきなおみに続き、安室が3人目の「伝説の歌姫」として語り継がれていくことになる。

(敬称略)

二田一比古
1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。

最終更新:2017/09/30 20:00
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