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男の娘の妊娠は、始まりにすぎなかったのか……?

新作『女装千年王国』も大好評! 西田一が語る、ただひとつの“愛の物語”

新作『女装千年王国』も大好評! 西田一が語る、ただひとつの愛の物語の画像1『女装千年王国』(の~すとらいく)

 その晩、私はひとりの男と酒を飲んでいた。

「明日上京するので、お会いできませんか?」

 ゲームブランド・の~すとらいくを主宰する西田一から、そんな連絡をもらったのは、前日の夕方だった。ヒロインが全員男の娘ということで注目された『女装山脈』を出発点に、ひたむきに男の娘をテーマにしたアダルトゲームをつくり続ける男。

 ともすれば「変態」と謗(そし)られるテーマに人生を賭けた男と初めて会ったのは、昨年制作した『女装学園(孕)』が発売された直後のことだった。

 共通の知人がいたことがあったからか、それとも、私自身が「男の娘が最高である」とか、「三次元で男の娘になっている人たちは羨ましい」という本音を隠す必要もないと思って話をしたためか、いずれにしても、話は弾んだ。

 私の想いに応えるかのように、西田もまた作品への情熱を、とめどもなく語ってくれた。

 中でも、彼が熱く語ったのは『女装山脈』から通底する、男の娘の<妊娠>を描くことへの使命感であった。

「妊娠して子どもが生まれるというのは、エロゲーの中では最大のハッピーエンドだと思っています。ゆえに、男の娘でも妊娠することができたら、すべての問題は、その場で解決するんです。ハッピーエンドに持っていくためには、男の娘を妊娠させなくてはいけない……」

 愛を育んだ結果としてのセックス。その結果としての妊娠。そこには「エロゲー」を超えた崇高な思いと、幸福に包まれた興奮があるような気がした。

 事実、ネットで作品名で検索してみても、批判的な意見はほとんど見られない。購入した無数の人たちが、西田と同じように幸福を感じているように見えた。

 西田の作品は、決して大きく宣伝が打たれるものではない。有り体にいえば、熱心に取り上げるメディアも少ない。いわゆる「大手」に比べれば、市井のユーザーに言及されることは多くはない。けれども、そんな市場の片隅にそっと置かれた作品を通じて、西田は新しい常識を創造している。男の娘が妊娠することが、当然であるという常識を……。

「それが、ボクのシナリオとしての仕事だと思ってるんです」

 その一点の曇りもないまなざしは、ずっと記憶に残っていた。だからである。年末に「週刊SPA!」(扶桑社)から「今年のエロゲーの十大ニュース」をテーマに取材を受けた時、私の口からは迷うことなく『女装学園(孕)』が最初に飛び出した。

 * * *

 それから約1年。新作『女装千年王国』の告知が始まったのは、春のことだった。ライトノベルの定番である「異世界転生もの」をモチーフに描かれる、男の娘物語。異世界に召喚された主人公は、勇者として魔王を打ち倒す。

 そして、平和が訪れた世界を舞台に、女装姫騎士、女装サキュバス、女装聖女との物語は綴られる。なんでも「女装」と付ければよいのか。そんな取って付けたようなキャラクター設定。その緩さが、逆に、より硬質な芯のある物語世界を構築しているように思えた。

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