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ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」番外編

「貧しさをエンターテインメントに」里咲りさは、いかにして“Zeppワンマン”にたどり着いたのか

 Zeppにはファンだけでなく、同業者のアイドルやアイドル関係の仕事をするマスコミ関係者も多数駆けつけていた。おそらく、彼女の動向に、地下アイドルに関わる者として希望を見いだしたいという人が多かったのだろう。

 筆者が彼女に注目したのは、アイドルの運営として「お金の話」をあけすけに語り「売れたい」と公言していたからだ。

 地下アイドルが儲からないという残酷物語自体は、メディアにあふれ返っていて珍しいものではない。ただ、里咲の話はなぜか聴いていて心地よく、むしろ応援したくなってしまう。

 里咲はZeppワンマンのチケット売上枚数を公表し、損益分岐点まであと何枚かをアナウンスしていた。こういった、地下アイドルとしての自分自身が売れるために試行錯誤していくプロセス自体を実況してイベント化していくのが抜群にうまい。

 インターネットの普及によってエンタメ業界の産業構造が大きく変化する中で、既存の売り方は通じなくなっている。真っ先にその影響を受けたのが音楽業界だ。そのため、今の時代のクリエイターは、ただ、表現をするだけではなく、AKBの握手会や選抜総選挙のように、表現を届けるための「手法」自体もデザインしなければならない。

 表現を届ける「売り方」自体がクリエイティブで面白かったことが、里咲が注目されている大きな理由だろう。

 しかし、これは諸刃の剣でもある。「売り方」ばかりに注目が集まると、肝心の表現自体が陰に隠れてしまうし、実力が伴っていなければ、やがて飽きられてしまう。

 里咲はその不安についてインタビューで繰り返し語っていたが、今回のワンマンライブは歌手・里咲りさの、圧倒的な表現力を証明するものとなっていた。

 会場は椅子席だったのだが、だからこそ曲を聴くことに集中できて、彼女の歌をじっくり堪能することができた。中でもよかったのは「カタルカストロ」や「TURE」といった暗い曲だ。

 筆者が里咲に惹かれるのは、時々あふれ出す圧倒的な影の部分だ。明るい曲も悪くはないが、作家性を感じるのは暗い曲であり、この路線にはまだまだ前人未到の可能性があると思った。

 ライブの最後で里咲はメジャーに行く(ただし、いい条件を提示するレコード会社を募集するという、FA宣言だが)と語っていたが、今後は、地下アイドルで自由奔放にやっていたことを、より大きな規模でできるかどうかが鍵となるだろう。

 だが、あのライブを見る限り、心配は無用だろう。大きな会場であればあるほど、彼女の表現力はより高まっていくはずだ。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

最終更新:2017/10/20 11:41
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