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ドラマ評論家・成馬零一の女優の花道

“女優”イモトアヤコが『下町ロケット』シリーズの転機に?

イモトアヤコInstagramより

 お笑いと演技は親和性が高く、最近でもバカリズムやサンドウィッチマンの富澤たけしなど、俳優としても高い評価を受けている芸人は多い。一方、渡辺直美、ブルゾンちえみなどの女芸人がドラマに出演する機会も増えている。

 しかし、彼女たちが演じる役は、コミカルな三枚目や、モテないことを卑屈に語るようなネガティブな女性像ばかりで、いまいち演技力を生かしきれているとは言い切れない。

 これは、そういう役柄しか与えることができない作り手の問題が大きいのだが、そんな中、面白かったのが『下町ロケット』(TBS系)におけるイモトアヤコの起用方法だ。

 2015年に放送された第1作の続編で、今回は無人走行技術を搭載したトラクターの開発をめぐる開発競争が描かれた。前作では佃製作所が衝突する相手は、帝国重工という大企業や悪徳弁護士といったわかりやすい権力者だったのだが、今回は、かつて帝国重工に被害を被った中小企業や会社から追い出された技術者たちが敵として現れる。佃製作所は帝国重工とともに、彼らにトラクターの技術競争を挑む展開となっていく

『下町ロケット ゴースト』『下町ロケット ヤタガラス』の2作が原作で、ゴーストというタイトルは、佃製作所が対立するベンチャー企業「ギアゴースト」が由来だが、大手企業に虐げられて潰されてきた弱小企業の幽霊(ゴースト)という意味もあるのだろう。物語中盤でギアゴーストの開発したトラクターが「下町トラクター」と呼ばれ、大企業に立ち向かう彼らの物語がマスコミで神格化されていく展開は、池井戸潤が書いてきた必勝パターンだが、それが敵役の物語となっているところが面白いところだ。

『半沢直樹』以降、池井戸原作ドラマが大ヒットしてきたのは、弱者が強者に一矢報いる姿が爽快感につながっていたからだ。しかし今回、中小企業が悪役として登場する姿を見ていると、このシリーズも転機を迎えているのかもしれないと感じた。

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