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「ありがとう」と抱きしめあったまま二人は別れを選んだ――ドラマ『パーフェクトワールド』第5話

愛情と献身のはざまで――ドラマ『パーフェクトワールド』第4話の画像1
フジテレビ系『パーフェクトワールド』ドラマ公式サイトより

(これまでのレビューはこちらから)

 私が初めて松本に行ったのは、20年以上前のことだ。1996年に放送されたドラマ『白線流し』(フジテレビ系)が好きで、そのロケ地を訪ねて回ったのだ。

 当時の松本は、駅の周りこそそれなりに都会であったものの、モデルとなった学校の近くや、最終回で白線を流すシーンが撮影された川のあたりは、古くからの町や自然も残されており、その雰囲気に好感を抱いたものだった。

 ドラマ『パーフェクトワールド』(フジテレビ系)の登場人物の多くは、松本の高校に通っていたという設定だ。この作品を見る時、昔訪ねた松本を思い出しながら、「あの風景が彼女たちの性格を育んだのだろうな」と、なにか納得したような気持ちになる。『白線流し』に描かれた、渉(長瀬智也)と園子(酒井美紀)の拙くも純粋な恋のように、つぐみ(山本美月)や樹(松坂桃李)もまた恋をし、悩み、青春を過ごした、そんな気がするのだ。

つぐみの父の思い

 駅のホームでバランスを崩し、線路に転落したつぐみ。樹は助けようと手を伸ばすが、彼女の手を掴むことはできなかった。

 幸い頭の傷は軽症だったが、足を骨折し、つぐみはしばらく松葉杖での生活を余儀なくされる。病院に駆けつけた樹は、つぐみの幼馴染み・是枝(瀬戸康史)から、彼女が樹のために介護セミナーに通っていたこと、かなり無理をして、疲れていたことを告げられ、ショックを受ける。

「すぐそばにいたのに、助けることができなかった」と、自分を責める樹。そして、「鮎川くんに手が届いていたら巻き添えにしていたかもしれない」と、同じように自分を責めるつぐみ。二人はどこか似た者同士なのかもしれない。それが、お互い惹かれ合う理由でもあり、同時に、苦しむ理由でもある。

 病院からの帰り、是枝は樹に言う。

「お前らは、純愛を絵に描いたようなカップルだ。キレイすぎる」

 もちろん、樹に対する嫉妬もあるだろうが、この是枝の気持ちは理解できる。

 どんな人でも、どんな事でも、全体を見ればキレイな部分も汚い部分もある。「清濁併せ呑む」という言葉があるが、私は、キレイなところだけしか見えない人が苦手だ。どんな人だって、心の中に闇や傷を抱えているものだし、それが見えない時、その人が抱えている醜い部分がどんなものかと恐怖を感じるのだ。だから、口が悪いとか、ちょっとクセがあるとか、そういう人との方が安心して付き合える。

 つぐみと樹に関して言えば、まず「障害を抱えていること」と、それに伴って制限されることが、負の部分だ。それが前提としてあるため、よりピュアな愛情を持つことができるのだろう。あとは、そのプラスの部分とマイナスの部分のバランスをどうとっていくかということになる。

 そのマイナスの部分が大きくなることを心配しているのが、他ならぬつぐみの父・元久(松重豊)である。樹と会った元久は、つぐみが子供の頃、体が弱く、よく背中に背負って病院に走ったという昔話をし、そして、「娘と別れてほしい」と頭を下げる。「娘は、私の代わりに背負って生きていける人に任せたい」、そう告げるのだ。

 しばらく仕事を休み、松本の病院で療養することになったつぐみ。松本の実家や、町中の風景が美しい。東京に比べて、ゆるやかな時間が流れているように感じる。しおりは、そこで、樹の元恋人・美姫(水沢エレナ)と再会する。そして、樹が体調を崩し、入院していることを知るのだ。

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