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「鳥貴族でも流れるポップスがやりたかった」菊地成孔の“アヴァター”によるFINAL SPANK HAPPYとは何か?

 菊地成孔のポップス・ユニットであるSPANK HAPPY。1994年にデビューし、第1期・第2期と進化を遂げ、2007年に活動終了となったこのプロジェクトは、音楽ファンから「15年早かった」と評価されているが、18年にFINAL SPANK HAPPY(最終スパンクハッピー)として再開した。そして、1stアルバム『mint exorcist』を19年10月にCDで、12月には配信でもリリース。ただし、菊地は参加せず、“アヴァター”のBOSS THE NKと“新人シンガー”のODによって本作は制作された。ODはCRCK/LCKSなどの活動で知られる東京藝術大学出身の才人・小田朋美と同一人物ほどに似ているが、まったくの別人だという。今回はそんな2人に、それぞれの関係、そしてアルバム制作の意図や経緯について、語ってもらった。


FINAL SPANK HAPPY『mint exorcist』(ビュロー菊地)
CD:3500円+税 https://www.bureaukikuchishop.net/spank-happy
配信:https://linkco.re/uYhyRy6U

ポップスはその時代に評価されないと意味がない

ーーFINAL SPANK HAPPYは菊地成孔さんによるユニットにもかかわらず、本人が参加していないのはなぜですか? 

BOSS THE NK(以下、BOSS) 菊地君は単純に、再開を宣言したものの、多忙につき難しくなった。彼もあと数年で還暦だし、ポップスを歌ったり踊ったりは無理だと踏んだんでしょう。私は過去、何度か彼のアヴァターとして仕事をしていますので、またオファーが来た、というだけです。全権を委譲されました。最初に困ったのは仕事の規模と責任ではありません。こいつ(OD)が、事もあろうに小田朋美さんとそっくりだった。僕はアヴァター前提だからまだいいけど、小田さんにはあずかり知らぬことですし。そして、そうなると「菊地成孔と小田朋美のグループ」というふうにリスナーは把握します。菊地君の多彩さと、小田さんの学歴(東京藝大作曲家卒=坂本龍一の後輩)を掛け合わせると、「どんだけアカデミックでハイクオリティな音楽かよ?」と警戒されます。これはやりながらなんとかするしかないと思いました。

OD ソックリではあるデスが、こうしてFINAL SPANK HAPPYは自分とBOSSのプロジェクトじゃないスか。ミトモさん(ODは小田をこう呼ぶ)とは仲良くさせていただいてるじゃないスか(笑)。

ーーそもそも、なぜSPANK HAPPYは復活したんですか?

BOSS 菊地君が再開を宣言しちゃったといっても、活動するに足る相方を見つけることは絶対条件でした。運良く天才であるコイツと出会ったからですね。菊地君は本当にポップスが大好きで、ほとんどマニアといっても差し支えないほど。いろんなポップスを聴いて、それぞれの時代のフロアで踊って、その歴史にも精通している。私もアヴァターとして、そこは抑えています。ただ、彼の症状だと思いますが、彼がひとりで好きなように音楽を作ると、「15年早い」みたいな音楽になってしまうんですよ。ポップスは、その時代に評価されないと意味がない。ジャストのタイミングで提供できないと。彼はその症状を克服する、ということもミッションにしていました。

OD そうだったんスか~? でも、なんで自分だったんスか?

BOSS 第一には、予定外にWアヴァターみたいになって、マーケットが混乱するということ、第二には、そうですね、小田朋美さんは、クラシカルな知識とスキルを持ったコンサバ寄りのコンポーザーで、バッハを神と崇めています。古典に対するリスペクトつスキルがハンパなく深い。ODも、奇しくも、ポップスのことを何も知らなかったり、クラシックピアノが弾けたり、作曲ができたりするという点で、小田さんとの類似がありますが、小田さんよりもっと暴れん坊で、ポップなんですね。なので、菊地君の近代主義的な、進歩進歩の悪癖を、ODに抑止してもらいたかったんです。そうしたら、作用と反作用みたいみたいな感じで、インジャストのポップスができると思いました。

OD 自分は川崎のパン工場で、工員さんたちに歌っていただけなんで、最初はボスをひとさらいと思っていたじゃないスか(笑)。でも、事情を聞いて、一緒にやるようになって、まず、「夏の天才」という曲を最初に作ってみて、確かに「これはちょうどいい」と思ったデス。ボスの作曲と自分の作曲はかなり違うデスね。「それは変じゃないスか?」「そんなことやっていいスか?」みたいなことばかりだったじゃないスか。でも、でき上がった曲はムチャクチャよかったじゃないスか(笑)。

BOSS ですね。菊地君も、自分でやっていた前期のSPANK HAPPYの頃とはまったく違う手ごたえを感じてゴーサインを出しました。我々は、欅坂46、Perfume、米津玄師さんとかを聴いているような人が聴いても「これ切なくてイイよね」と言っちゃうような、鳥貴族で流れていても違和感がない、そして同時にクラブでも流れるポップスがやりたかったんです。そりゃあ、現代の音楽産業やマーケットに文句を言おうと思えば言い放題です。でも、良い面は必ずあります。

OD 鳥貴で「エイリアンセックスフレンド」が流れたら、それはかなりアツいじゃないスか(笑)。

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