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更科修一郎『テレビくん千年王国』第2回

ビートたけし、渡哲也、山城新伍…名優たちが演じたマンガの世界──テレビと銀幕の中のジョージ秋山(2)

文=更科修一郎(さらしな・しゅういちろう)

──コラムニスト・更科修一郎が記すテレビ今昔物語

 前回、数々の傑作・問題作を生み出したジョージ秋山の映像化作品から『銭ゲバ』を回顧したが、今回と次回は『銭ゲバ』以外の映像化作品を振り返ってみたい。

『浮浪雲』テレビドラマ(テレ朝、TBS)、劇場版アニメ(東映)
『ピンクのカーテン』日活ロマンポルノ
『うれしはずかし物語』日活ロッポニカ、Vシネマ
『恋子の毎日』映画(東映)、テレビドラマ(TBS)、OVA
『くどき屋ジョー』テレビドラマ(テレ朝)、Vシネマ
『銭ゲバ』映画(東宝)、テレビドラマ(日テレ)
『捨てがたき人々』映画(アークエンタテインメント)
『アシュラ』劇場版アニメ(東映)

 ……とはいえ、ざっと書き出しただけでもこれだけあるので、すべて語るのは不可能なのだが。

テレビドラマ版『浮浪雲』(テレビ朝日/1978年、TBS/1990年)

ビートたけし、渡哲也、山城新伍…名優たちが演じたマンガの世界──テレビと銀幕の中のジョージ秋山(2)の画像1
『浮浪雲』

 ジョージ秋山の代表作で、全112巻のライフワークであった『浮浪雲』は、1978年には渡哲也、1990年にはビートたけし主演で2度テレビドラマ化され、1982年には山城新伍が声優として主演で劇場アニメにもなっているが、まずは1978年のテレ朝版から触れていこう。

 1978年版を製作したのは先日、活動縮小が報じられた石原プロモーションだ。マンガの映像化は意外に思えるが、本作以前にも、さいとう・たかを『影狩り』と、新岡勲『ゴキブリ刑事』の映画化を行っている。

 浮浪雲を演じたのは渡哲也、かめが桃井かおり、脚本は倉本聰という強烈な布陣だった。渡と倉本は揃ってNHK大河ドラマ『勝海舟』を途中降板した盟友(?)で、『大都会 闘いの日々』(1976年/日本テレビ)からのスライドだが、作風は180度正反対である。平然と「このドラマはフィクションであり、時代考証その他、かなり大巾にでたらめです」というテロップが流れるのだ。

 渡哲也は本作の前が映画『やくざの墓場 くちなしの花』(東映/深作欣二監督)や『大都会』シリーズで、本作の後が言わずと知れた『西部警察』シリーズ(テレビ朝日)だったので、角刈りにナス型サングラスのバイオレンスヒーローというイメージが長く定着していた。なので、本作の軽妙でユーモラスな演技には多くのファンが面食らったことだろう。

 実際、長いキャリアの中でコメディ系作品への出演となると、他には古沢良太脚本のホームドラマ『おいしいごはん 鎌倉・春日井米店』(2007年/テレビ朝日)くらいしか思いつかないのだが、こっちで渡が演じていたのは強面な地元のボスであり、道行く女子をC調でナンパする妻子持ちのヘンなおじさんという役は、後にも先にも本作だけであろう。

 原作マンガは112巻の長期連載なので、途中で時間の流れが曖昧になり、いつまでたっても明治に辿り着かない『大菩薩峠』状態になったが、ドラマ開始時点ではまだ、既刊9巻。坂本龍馬や勝海舟、新選組などがゲストで登場する幕末ものの時代劇だった。

 なのに、桃井が1978年当時の流行歌を歌ったり、渡もギターで弾き語るなど、実験的なコメディ演出も行われていた。

 このあたりは早坂暁脚本の『天下御免』(1971年/NHK)や、久世光彦の『ムー』(1977年/TBS)を意識していたのかも知れない。実際、後者の続編である『ムー一族』は『浮浪雲』の放送時期と重なっており、『8時だョ!全員集合』の舞台セットを流用した公開生ドラマなど、極端にテレビバラエティ的なアプローチで話題となっていた。

 脚本の倉本聰のパブリックイメージは「シリアスで重厚な人間ドラマの巨匠」で「面倒くさい大御所」なのだろうが、『勝海舟』降板直後に書いた『6羽のかもめ』(1974年/フジテレビ)のような、風刺的なコメディ作品も得意としている。

 今春まで放送していた『やすらぎ』シリーズ(テレビ朝日)でも、真っ昼間からブラックユーモア全開でやりたい放題やらかして、テレビ中毒の好事家(筆者含む)を大喜びさせていたが、1978年の倉本聰はSF大作の皮をかぶったヘイトパニック映画『ブルークリスマス』(岡本喜八監督)の脚本も書いており、長いキャリアの中でも異色の年だった。『北の国から』(1981年/フジテレビ)のメガヒットで本格的に大御所と評されるようになる3年前のことだ。

 放送当時、まだ幼児だった筆者は父親が『浮浪雲』のファンで、単行本も50巻くらいまでは買っていたので、ギリギリでリアルタイム視聴組だったのだが、さすがに断片的にしか覚えておらず、後年、CSの再放送で補完した。

 しかし、筆者より上の世代には強烈な印象を残したらしく、90年代に描かれた田沼雄一郎の成人向けコミック『SEASON』(コアマガジン)では、主人公の少年が1978年版テレ朝版『浮浪雲』の渡哲也の形態模写をしていた。当時は「オレはギリギリ知っているけど、下の世代の読者にわかるのか?」と首をひねっていたが、読者の年齢層は当時20歳前後だった筆者よりずっと上で、何の問題もなかった。成人向けコミックなのだから、それで当たり前なのだが。

 1990年にはTBSが「ニューウェーブ時代劇」と銘打って再びテレビドラマ化し、こちらはリアルタイムでほとんど全話観ているのだが、とにかくひどかった記憶しかない。

 浮浪雲が時代劇初主演のビートたけしで、かめが大原麗子という時点で原作クラッシャーにもほどがあるのだが。プロデューサーの2人が『笑ってポン!』や『たけしのお笑いサドンデス』で悪名高い桂邦彦の筋で、偶然の『風雲!たけし城』大ヒットの余録として企画されたのが良くなかったのだろうか。演出担当の鴨下信一は『浮浪雲』という作品のコンセプトを理解していたと思うのだが。

 久世光彦のカノックスが企画した『刑事ヨロシク』(1982年/TBS)や、また『ビートたけしの学問ノススメ』(1984年/TBS)はパロディネタ中心のコメディだから仕方ないが、たけしは連続テレビドラマになるとコント風の演技「だけ」で手を抜く癖があり、『昭和四十六年 大久保清の犯罪』(1983年/TBS)や『金(キム)の戦争 ライフル魔殺人事件』(1991年/フジテレビ)などの実録犯罪史系のスペシャルドラマで見せていた、二面性のある性格俳優としての妙味が失せてしまう。飄々と軽薄は違うのだ。

 とはいえ、この失敗から2003年版『座頭市』(松竹)が作られたのだとしたら、それはそれで良かったのかも知れない。確かに千葉真一と松方弘樹を怒らせるほどの「ニューウェーブ時代劇」だったのだから。

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