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『海辺の金魚』公開直前インタビュー

小川紗良、映像作家で役者、彼女の願い「これからは『若い』『女性』の監督としてじゃなくて…」【インタビュー】

小川紗良、映像作家で役者、彼女の願い「これからは『若い』『女性』の監督としてじゃなくて…」【インタビュー】の画像1
小川紗良(撮影:二瓶彩)

 海の向こう、アメリカのメジャーリーグではエンゼルス・大谷翔平の二刀流が話題だが、日本の芸能界でもマルチに才能を発揮する若者が話題をさらっている。それが、小川紗良だ。

 まもなく25歳となる彼女は、2019年のNHK連続ドラマ小説『まんぷく』で主人公夫婦の娘役を熱演して注目を集めると、昨年11月、本広克之監督の映画『ビューティフルドリーマー』で主演に抜擢されるなど、役者としての知名度が赤マル急上昇中だ。

 彼女はもうひとつ、映像作家としての顔を持っている。早稲田大学文化構想学部在学中から映画サークルで自主製作の映画を撮り始め、メガホンを取った3本の短編インディーズ映画は各映画祭で上映、入選されるなど、国内外からすでに高い評価を得ているのだ。

 そんな小川監督の初の長編映画『海辺の金魚』が、6月25日、ついに封切りへ。ということで、公開を控える彼女を直撃! 作品に込めた思いと、小川紗良という新進気鋭のクリエイターの人となりに迫った。

女の子が自分の人生を歩みだす瞬間を描きたかった

小川紗良、映像作家で役者、彼女の願い「これからは『若い』『女性』の監督としてじゃなくて…」【インタビュー】の画像2
(撮影:二瓶彩)

――本作『海辺の金魚』は、身寄りのない子供たちにスポットを当てた作品ですね。なぜこの設定にしようと思ったのでしょうか?

小川:私自身、もともと様々な状況の子どもたちを描いた作品やドキュメンタリーに関心を持っていたので、自然とそういう設定になりました。役者としては『まんぷく』を始め、これまで“当たり前”とされてきた“普通”の家族の一員を演じることが多く、それはそれで素晴らしいのですが、自分が作品をつくるときは、それだけじゃない家族や人とのつながりのあり方を描けたら、という思いがあったんです。

――人のつながりの多様性を表現したかったと。

小川:作品を観ていただいた方、それぞれに伝わるものがあればいいと思います。私としては、施設の話を書きたいというよりは、あるひとりの女の子が自分の人生を歩みだす瞬間を描きたい思いが一番にあったんです。金魚って、海では生きていけない生き物ですよね。このタイトルの矛盾についても、観る方にいろいろと想像を膨らませてもらえたらと思います。

――『海辺の金魚』の主演は小川未祐さんが務めましたが、これから監督兼主演で映画を作ってみたいという気持ちはありますか?

小川:学生時代は監督をしながら主演をすることもありましたが、監督と役者で視点が違うので、現場と編集でとても混乱してしまうんです。だから今は、監督の時は監督で集中したいですし、お芝居に関しては誰かにゆだねるほうが面白いものができると思っています。

映画サークルの新歓合宿でカルチャーショック!

――『海辺の金魚』は、ストーリーもさることながら、その映像美にも心を奪われました。映像作家・小川紗良の映画の原体験を教えてください。

小川:子供の頃はジブリ作品をたくさん観てました。『となりのトトロ』(1988)なんてVHSのテープがちぎれるくらい観ましたね(笑)。ジブリ作品は子ども目線の話が多いので、今作を撮るときもいろいろ見返してみたんですが、芸術的なのにみんなに伝わる普遍性を持つ素晴らしい作品だと改めて感じました。特に『海がきこえる』(1993)は、回想の入り方や抜け方が独特で。一見すると淡々とした話なんですけど、すごくセンチメンタルで優しいところが好きです。

――ジブリの他に、一番好きな映画、監督は?

小川:一番を決めなきゃいけないというのは難しい質問ですね(笑)。最近、新宿にある「K’s cinema」という名画座で台湾のホウ・シャオシェン(侯 孝賢)監督の特集がやっていたので観に行きました。

 ホウ監督の作品は、映像がキレイで時間がゆったりと流れている感じとか、日常的なのにそこから社会性をにじませるような描き方がいいなと思っています。もともと台湾映画は好きなのですが、特にホウ監督の『冬冬の夏休み』(1984)や、エドワード・ヤン(楊 德昌)監督の『ヤンヤン 夏の思い出』(2000)などは大好きです。

――映画好きの小川監督にとって、名画座はやはり特別な場所なんですね。

小川:家だと集中できないので、映画は基本的にスクリーンで観たい派なんです。名画座に行けば古い映画でも大きなスクリーンで観ることができるので、好きな監督の特集が開催されている時は、できるだけ足を運ぶようにしてます。

――名画座の思い出は?

小川:池袋の「新・文芸坐」にはよく行くのですが、大学生の時にトビー・フーパー監督の特集をオールナイトでやっていて、映画サークルの友達と観に行ったのはいい思い出です。『悪魔のいけにえ』(1974)などのスプラッター映画を朝までみんなで観るという体験自体が刺激的でした。

――大学の映画サークル仲間の存在は、小川監督にとって大きいものだったんですね。

小川:そうですね。自分が映画好きとはいえないくらい、みんな私の全然知らない映画をいっぱい観ていて、そこから得た刺激は本当に大きかった。当時から私は芸能活動をしていましたが、誰も私のことを特別扱いしなかったのも嬉しかったですね。雑に扱われるくらいが気楽でした(笑)。

 大学生になって初めての新歓合宿でグループに分かれて映画のシーンを再現してみるという課題があって、私たちのグループは相米慎二監督の『台風クラブ』(1985)で男の子が女の子を追いかけ回すシーンを再現することになったんです。すごくハードで、新入生の私にはカルチャーショックでした。いまだに同作を観ると当時を思い出します。

――サークル仲間のような、いわゆる「映画オタク」に囲まれていた方が居心地いいのですか?

小川:高校生までずっと文化部だったので、大学では体を動かすこともしてみたいと思い、ためしにフラダンスサークルにも入ってみたんです。でもやっぱり体を動かすのは向いてないし、フラサークルにいる人はみんなキラキラな人たちばかり。結局、2回くらい行って辞めてしまいました。映画サークルは、教室にあんまり居場所のない人の寄せ集めみたいなところだったんですが、私たちには私たちの青春があって、やっぱり一番居心地がよかったですね。

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