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【国交省発表】大打撃を受けた航空業界の実情数字であらわ 座席利用率回復傾向も70%を下回る

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 各種統計がまとまり、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大による影響が明らかになってきた。そこで、旅行関連、飲食関連と並んで、特に大きな影響を受けた交通関係の航空分野の状況をまとめた。

 まず国土交通省が6月30日に発表した「航空輸送統計年報」によると、2020年の国内定期航空輸送の旅客数は4674万人で、前年比56.2%減少した。景気拡大と政府による観光政策を背景に旅客数は順調に拡大を続け、17年には1億人を超え、19年には1億677万人にのぼった。

 座席利用率は、17年以降は70%以上で推移していたが、20年には旅客数が56%以上も減少したにも関わらず、51.2%にまで低下した。

 新千歳、東京(羽田)、東京(成田)、大阪、関西、福岡、沖縄(那覇)の各空港を相互に結ぶ路線である幹線は、旅客数で2023万人と前年比54.7%減少し、座席利用率も前年の78.3%から55.3%まで低下した。

 幹線以外のローカル線の旅客数は前年に6211万人と初めて6000万人を突破したが、20年には2651万人と同57.3%減少し、座席利用率も前年の70.2%から47.8%まで低下した。

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 新型コロナの影響は、人の動きにばかり注目が集まるが、実は経済活動の停滞により、物の動き(貨物輸送)にも大きな影響を与えている。2020年の国内航空貨物の輸送量は50万721トンと前年比36.8%減少した。ただ、航空貨物の輸送量は直近では2017年の91万6663トンから減少が続いており、減少に拍車がかかった状況だ。

 幹線の輸送量は同35.2%減少の37万6762トン、ローカル線は同41.0%減少とローカル線による減少が際立っている。

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 20年の国内航空旅客数を月別で見ると、20年1月に831万人(前年同月比3%増)だった旅客数は、政府の緊急事態宣言を受け、5月には60万人(同93%減)にまで減少した。幹線旅客数が31万人(同92%減)、ローカル線が28万人(同95%減)となった。

 20年の5月をボトムに徐々に回復してきたものの、11月に520万人(同44%減)まで回復した後は、再び、緊急事態宣言の影響で減少に転じている。21年3月には増加に転じたものの、現在、4回目の緊急事態宣言が出されており、“余談は許さない”状況だ。

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 座席利用率も大幅に減便されているにも関わらず、20年4月には全体で19.3%、幹線で22.0%、ローカル線で17.3%にまで減少、人を乗せずに旅客機を飛ばしているような状態となった。座席利用率は回復傾向にあるものの、その後も70%を下回る状況が続いている。

 国内よりも大きな影響を受けたのが、国際線旅客数だ。20年の国内の航空会社の国際線旅客数は436万人(前年比81.4%減)にまで、大きく落ち込んだ。政府の観光客誘致と東京オリンピック開催を背景に、16年に2000万人を突破した国際線旅客数は、19年に2345万人にまで拡大したが、20年には約5分の1にまで縮小した。70%を超えていた座席利用率も、20年には47.4%にまで低下した。

 これに対して、国際線貨物輸送量は128万2000トン(前年比11.2%減)と旅客数に比べて小幅な減少にとどまった。食料自給率の低い日本にとって、輸入材が人々の生活を支えている姿が鮮明になった。

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 国際線の月別の動きを見ると、旅客数は2020年以降、前年同月比で90%以上の減少が続いているものの、貨物輸送は2020年4月から11月は前年同月比を下回ったものの、12月以降は前年同月を上回っている。

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 新型コロナの感染拡大が経済に大きな影響を与え、雇用が悪化する中で、航空会社の社員が家電量販店など他業種に派遣されて仕事をすることが大きな話題となった。国内線、国際線の旅客数の状態を見る限り、こうした措置で雇用を守るのは仕方のない策だったように思える。

 問題は、東京オリンピックで期待されていた外国人観光客、国内観光客が無観客開催により、まったく期待できなくなったこともあり、今後の旅客数の回復のメドが立たないことだろう。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2021/07/21 21:00
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