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もともと添乗員は男性だった! 修学旅行ほか「団体旅行」の知られざる歴史と進化

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(写真/Getty Images)

 明治時代の修学旅行では軍事教練や身体訓練が行われ、昭和30年代(1955~1964年)まで団体旅行の添乗員といえば女性ではなく男性だった。

 ほとんど誰もが経験したことはあるが、いつどうやってその仕組みができ、どのように今の形に変化していったのかは知らない「団体旅行」。その歴史をまとめた労作『団体旅行の文化史 旅の大衆化とその系譜』(創元社)が刊行された。

 本書を著した民俗学者の山本志乃氏(神奈川大学国際日本学部歴史民俗学科教授)によれば、旅が稀少な体験だった時代には記録がたくさん残されているのに対して、戦後に入って旅の大衆化・一般化が進むほどにむしろ記録は少なくなり、史資料をもとに変化をたどることが難しくなっていったという。旅行業に携わってきた経験者などへの多数の取材をもとに明かされた、知られざる団体旅行の近世~現代の流れとは? 山本氏に訊いた。

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山本志乃著『団体旅行の文化史 旅の大衆化とその系譜』(創元社)

江戸時代に特別に容認された伊勢参り

──山本先生は日本人の団体旅行のルーツのひとつに伊勢神宮への参詣である「伊勢参り」をあげていますが、意外に思う人も多いのでは?

山本 お参りの旅は、日本人の旅の原点です。古い時代には巡礼を目的に、ほとんど金銭も食べ物も持たずに旅に出て、行く先々で物をもらったり泊まるところを提供してもらったりしながら、物や情報を行き交わせてきました。そうした中から来訪者を神々の化身ととらえる考えが生まれ、遠来の賓客を大事にもてなすという文化ができ、このことが日本人のホスピタリティを育んでいったとも考えられています。

──旅が今のように楽しいものになっていったのは、いつ頃からでしょう?

山本 街道、宿場、茶店といったインフラや寝食の設備が整い、安全に旅ができるようになったのは江戸時代です。江戸時代には制度上、庶民が居住地を離れて遠方に行くことに制約がありましたが、関所を通る手形の交付理由としていくつか許される条件があって、そのひとつがお参りでした。豊作や健康、国の安泰を願う素朴な信心を禁止する権限は誰にもなかった。お参りは旅の正当な理由として機能していたんです。なかでも伊勢神宮は日本全体の総氏神のような存在ですから、旅の大義名分として通用するものでした。もっと言うと、伊勢参りの場合は「抜け参り」という形で物もお金も、関所を通る手形すらなくても特別に容認されていました。

 伊勢に近い近畿地方周辺では、村の若者グループで伊勢参りに行くことが通過儀礼になる場合もありました。関東や東北などの遠方からはお金もたくさんかかりますから、「講(こう)」集団を組んでお金を出しあい、その中の代表者が参拝するという「代参(だいさん)」が主流でしたが。

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